第2章 19話
#side フォールティア
学園の卒業式が行われた。今朝方のことだ。今はもう終わり、学園が催す宴会が開かれている。それを尻目に僕は、露台の手摺りに背を寄り掛かり会場の中を見る。風が僕の髪を撫でるように吹いていく。向こうに置いてあった様々な食べ物や飲み物の中から取ってきたものを露台の上の机に置いて寛ぐ。思い出したのはこれまでの学園生活だった。
長いようで短い学園生活、僕は中等実技科の1組(成績の上位優秀者のみの組)から落ちることなく今日を迎えた。この3年間色々あった。2〜3年生からの選択授業は魔法理論 Ⅱ 〜 Ⅲ を選んだが難易度が笑えないぐらい難しくなっていた。魔法を発動した時の魔素に込められた情報量とその情報量によって発動した魔法によって得られるエネルギー量について、魔法を発動する時の魔素の損失について、肉体と魔素の関係、などなどこれでもと難しいことを習わされた。一つ文句を言うとすれば、魔法理論で数式を使うか⁉︎ ということだ。魔素に込められた情報量と発動後のエネルギー量の比例の式や、魔素に込められた情報量と発動後のエネルギーに変わる時の変換率 etc...
とまぁそんな感じで魔法理論の授業を受けているのに数式での計算をやらされることも多々あったというわけだ。
他にも僕は魔法だけではなく武技も使うため、『剣術科』という授業も受けた。印象に残ったのは、授業の先生が耳にタコができるほど口を酸っぱくしていた言葉、『武技も魔法の一形態だ。だから武技を使える奴は魔法を使えるし魔法を使える奴は武技を使える。だから両方を同時に使うこともできるのだ……』ウンタラカンタラとまぁこんな感じの熱血教師だった。
そして、選択もあれば必修科目もあるというわけで科目名を『実技戦闘科』という。字面からわかる通り戦闘を教えることを目的として出来ている科目だ。授業内容はひたすら戦うこと。戦う時の心構え、戦う時の状況判断、数名で戦うの時の立ち位置などなど……、数えるのがうんざりするようなことばかり。
分かったことといえばこの世界もしくは国の技術が発展していることぐらいだ。まぁ理由は分かっているが……。その理由は『歴史 Ⅰ (世界)』の時に習った。但し、話自体は多く広まっており童話として書かれていたりもする。要約して記すとすればーーーー
かつて、ユラマ星ではないどこかの星で、人々がまだ知恵を持っておらず、人とすら言えない時代。そして、まだ人族の祖と言える存在しかいなかった時。
その人族の祖とも呼べるべき存在達は互いに醜い争いを続け、正義も志もなくただ生きることのみに、何万・何億という命を散らしていった。
しかし、時代は進み、人族の祖はついに人と呼べるべき存在になった。
それから、幾人もの人々が魔法の深淵を覗こうと尽力した、幾人もの人々が新たな技術を作ろうと邁進した、幾人もの人々が壮大な夢を見、それに向かって足掻いていった。
そうした中に我々人族の一大な躍進となったものがあった。
一言で言えば、宇宙への進出だ。
宇宙空間を移動する手段を確立させ、人族に最も必要な水のない星に住む方法を編み出し、銀河の全惑星に進出をするまでになった。
更には、人族は他の銀河・銀河団にまで移動し、定住するようになった。
そして、そのうちの一つの惑星にユラマ星があった。
惑星上の全人口は凡そ1000億を超え、物流の中継地点の一大拠点にまで発展していた。
その頃だ、神々が世界に顕現・降臨をするようになったのは。
それは”ある学者”が魔素が神界に移動する現象を突き止め、亜空間や神界という存在を確認したのだ。
魔素は亜空間のエベルギーだ。
現界でいう力学的エネルギーと同じように世界の一番根本に関わるエネルギーの一つと言っても過言ではない。
そして、神はそのエネルギーをまるで手足のように扱う。
その頃の人間にとって道具によって魔素のエネルギーを扱う方法は確立されていたが、人族が魔素を使う方法はそれこそ天賦の才がなければ魔法を発動することすら難しかった。
その神という存在に接触することを”ある学者”は次の目標に定め、実験を始めた。
数十年後その実験は実を結び、初めて神に会い、神の魔素の影響(祝福)を受け、新たな人種が生まれるに至った。
種族名を後に”滅人族”と言う。
”ある学者”が会った神の名は《滅精霊神カースス》。
滅びを司る神であり、同じ滅びを司る《滅龍神プトスィ》の対として語られる存在である。
これが人と神とが交わる最初のことだった。
そしてその後、幾つもの人種が生まれていく。
《創精霊神クレアトライ・創龍神ディミオルゴ》の魔素の影響を受け獣人族が、《存精霊神エースス・存龍神ヒパーヒ》の魔素の影響を受け人族が魔法を扱える種に、《虚精霊神ヴァニタス・虚龍神ゲンノース》の魔素の影響を受けて吸血鬼が、《生精霊神ウィータ・生龍神ゾイ》の魔素の影響を受けて亜人族ーーゴブリンやオークなどが、《死精霊神モルス・死龍神サーナトス》の魔素の影響を受けて死人族が、《聖精霊神サケル》の魔素の影響を受けて天使族が、《魔龍神カッコ》の魔素の影響を受けて悪魔族が、《時精霊神テンプル・時龍神クロノス》の魔素の影響を受けて時の番人が、《空精霊神カエルム・空龍神ウラノス》の魔素の影響を受けて空人族が、《幻精霊神ファートム・幻龍神ファンタズマ》の魔素の影響を受けて妖精族が、《光精霊神ルーメン・光龍神フォス》の魔素の影響を受けて光人族が、《闇精霊神テネブラエ・闇龍神スコターディ》の魔素の影響を受けて闇人族が、《炎精霊神フラガ・炎龍神フォティア》の魔素の影響を受けて炎人族が、《水精霊神アクウァ・水龍神ヒュドール》の魔素の影響を受けて水人族が、《氷精霊神グラキエース・氷龍神パーゴス》の魔素の影響を受けて氷人族が、《雷精霊神トニトルス・雷龍神ブロンテーナ》の魔素の影響を受けて雷人族が、《地精霊神フムス・地龍神エダフォス》の魔素の影響を受けて地人族(のちにドワーフと呼ばれる種族のこと)が、《風精霊神ヴァントゥス・風龍神アネモス》の魔素の影響を受けて風人族(のちにエルフと呼ばれる種族のこと)が。
そのようにして、基本属性と言われる”創” ”滅” ”在” ”虚” ”生” ”死” ”聖” ”魔” ”時” ”空” ”幻” ”光” ”闇” ”炎” ”水” ”氷” ”雷” ”地” ”風”の全19属性から人類の種が一ずつ生まれていった。
そうして、神と人との関係性が深まっていく中、起こるべきして起きたと言っても良い悲劇が生まれた。
何が引き金だったのか?
それはわからない。
ただわかているのは基本属性ではない単一属性ーー”破”属性を司る二柱の神、《破精霊神デーストルークティオー・破龍神ディアプトラ 》が”生”属性を司る神《生龍神ゾイ 》と敵対し、争いが起きた。
そして、その戦いは神々全体の争いに広がり、【原初の神々】と【破神】の対決になった。
【破神】は自らの本体をユリカ界ではない亜空間に隔離することで滅びを克服する。
しかし、 最後には《破精霊神デーストルークティオー・破龍神ディアプトラ 》を滅せないならと、神々は封印をする、という手段を実行し、この争いは幕を閉じた。
そして、その封印をする場所になったのがユラマ星だ。
創造神の定めた神は本体を現界に顕現させてはならないという規則に基づき、神は本来の力を現界で振るうことはなかった。それでも、最後の争いの場となったユラマ星は破壊し尽くされ、人が住めるような環境にならなかった。
そして、生き残った数少ない人類を神がお詫びにと星を人が住めるように再び修復をしたのだ。しかし、他の星々に住むものがユラマ星に戻ることはなかった。そうして、他の星々との交流が絶え、現在に至る。
ーーーーこれがユラマ星に伝わる『ユラマ星記』物語の前半部分だ。この言葉からわかる通り、後半部分は国々の始まりやら、魔王の登場などなどが記されている。
最初に聞いた時はなんと壮大な話だと驚いたものだ。それによくこんな話が一般に流布していると疑問に思った。けれどまぁ情報の取り扱いは前世の世界の比ではないほどに発達しているのだと思い流したが……。
こんなことを思い出したのは卒業式の学長の「私たち人類はこれまでいろんな困難に打つかってきた。だからこそ〜〜(ウンタラカンタラ)」という言葉のせいだ。
これからの人生何があるかわからないが頑張っていこう。そう思った。
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#side ナタイ
空が白み始め恒星ランヴォが顔を見せ始める。シシリアが肉体を引き裂かれた『サタナス・ゴニビオ』を”時間停止”の空間に閉じ込めてまだ1分も経っていない頃、遠くから幾人もの人々が雪を踏み締める音がしてきた。アバディは魔素を多く使ったためシシリアが木の幹に横たえており、未だに目を覚ます気配はない。だからこそ、シシリアは音に気づくとすぐに構えて音が聞こえてきた方に目をやる。そしてそこには特別捜査衛兵の副隊長が先頭に立ち、後ろに特別捜査衛兵とその他の部署の衛兵が走ってきていた。
「シシリアさん!」
副隊長が声を上げる。
「副隊長!」
それに答えるシシリア。
「何があったんですか⁉︎」
「それは話せば長くなるというか……」
さっきとは打って変わって尻窄みの声を出すシシリアを見た副隊長は呆れたようにため息を吐いて一言いう。
「今は詰問しませんが後で聞くので心しておくように」
「はっ、はい‼︎」
「それで、これはなんですか?」
「これは、『サタナス・ゴニビオ』という名前なのはわかっていますが……」
「はぁ〜」
「それよりも、この魔法が解けたらまた復活すると思うんですがどうすればいいんでしょう」
「どれくらい強いんですか?」
「英雄ぐらいの強さの人を連れて来れば……」
ここで言う英雄というのは一般的に民間仕事斡旋所の戦闘部門の階級の上から数えて二つまでのことを指す。民間仕事斡旋所は簡単な清掃依頼から知識を必要とする薬草採取、ある特定の学問を修めていなければ出来ないような治療薬や魔道具の作成、困難な魔物の討伐など多岐にわたる。そして、その中でも戦闘部門は命を危険にさらすようなものが多い為、高額な依頼費を貰える。そして、魔物の脅威度を分け、受けられる依頼を力量に合わせて振り分けているのだ。国が軍人を使って魔物を倒すことはあるが、四六時中魔物を倒す為に向ける人員には限りがある。その為に生まれたのがこの民間仕事斡旋所だ。歴史は古くユラマ星が神々によって修復された後すぐの頃から生まれた団体が元となっているという。
そして、英雄という神々の加護は存在するが、それを手にするには神々に認知されるほどの偉業を為さねばならないということがある為一般的には前者のことを指すことが多くなったという訳である。
「封印はどれくらい持つ」
「あと数分ぐらいですが……」
「……おい。どんなに急いだって間に合わんぞ」
「あははは、どうにかなりませんかね?」
「無理だ」
「……」
「無理だと言ったぞ」
「はぁ〜。じゃあどうするんですかこれ。めっちゃ強いんですよ」
「仕方がない。勇者殿を呼んで対処してもらう。それまで持たせろ」
「それこそ無理です‼︎」
「無理でもやるんだ‼︎」
そう言って副隊長は懐から通信魔道具を取り出し緊急時連絡スイッチを押して連絡を取り始める。しかし、一向に相手側が出ないのか悪態をつき始める。
「おいくそ、緊急時連絡なのになんで出ないんだ」
ふと、気になりシシリアは首都近辺の空を見上げる。空には雪雲が動く気配もなく掛かっていた。特に何かこれといったことがないので副隊長の方を振り向こうとしたその時ーー紫色の閃光が空から降り注ぎ、シシリアの周りが視界を埋め尽くすほどの光で包み込まれた。
どうしても割り込めなかった設定
魔法理論 Ⅱ
魔素のできるまで
1. 魔素の核である魔核はこの現界に現れた時、とても高い密度を持っている。神界のエネルギーが現界の物質に変化するのには大量のエネルギーを使わないといけないため、現界に現れた時、とても高い密度で、エネルギー量もとても高い水準になる。
2. その後、魔核は現れた付近にある原子を大量に吸い寄せる。そして、現界に出た後あぶれたエネルギーが原子を魔殻へと変質させることによって魔素が生まれる。
*あぶれたエネルギーが無くなるまで周りの原子を吸い寄せ変質するを繰り返すため、最初は魔素にもエネルギー量の大小がある。
続きは次話(3月4日の予定)で!!




