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ユリカ界  作者: 碾貽 恆晟
第1部 2つの勇者の物語
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第2章 15話





 #side フォールティア


 学園の僕がいる中等科は中等実技科闘技大会ということで盛り上がっている。もちろん中等実技科の2〜3年のことであって、今年入ってきた僕を含む1年生は見ることしかしないが。というか、学園に入学してまだ一カ月経っていないのだ。大抵の人はまだ闘技大会の予選に出てくる人の足元にも及ばないだろう。


 僕はって? 勇者が学園の遊びに出るかって? 実際問題、僕が出たら多分というかきっと試合にならないだろう。少し考えてもみて欲しい、片や実践経験のある勇者、対して相手方は実践経験なしに加えて加護もない。それに、僕はあの理不尽を体現したような人たちの修行を受けたのだ。これで負けたら顔向けできない。というか腑抜けているとか言われて扱かれそうだ。そう、それはギタンギタンに伸してくれることだろう。実践訓練という名の虐めで僕が勝てたのは彼・彼女らが全力を出さなかったからだ。もちろん本気で戦ってくれはしただろうが全力ではない。これは大きな差だ。全力で戦ったら果たして僕は生き延びられるだろうか……。


 思考がそれたが、どっちにしろ僕はこの学園の闘技大会には出ないつもりだ。それに、初日の授業は余裕綽々だったが、歴史の授業は最近はどんどん授業の内容は細かいところまで掘りさげられており、復習をしなければと思い至ったのだ。ということで僕は学園の図書室(?)の前に来ている。図書室なんて言ったが建物まるまる一つを惜しみなく使っているのだ。さすがに国立重要図書管理館には劣るものの、図書は勉強をする上で必要なものと思えるものは全部揃っている。さすがは4階建ての建物を使ってるだけあって、神話、歴史、地図、武術、魔法、魔物、調理などなど分野は多岐に渡っている。


 歴史の本が置いてあるのは2階。ここには神話や歴史などの本が置いてある階だ。ここの中から歴史を復習するのに相応しい本を選ぶと思うと胃が痛くなってくる。教科書を使えばいいと思うかもしれないがそれだけでは知りたいことを全て知ることはできない。なので教科書を主体として必要な時本を探すということをしなければいけないのだ。


 だが、今の所授業で習ったのはこのユラマ星の大陸全てと、魔王が初めて現れた時のこと位しかやっていない。なので本を見つけること自体は簡単だ。


 まず、世界地図を取り出す。この星には全部で七つの大陸が存在する。地軸となるところに二つ、地球の南極大陸のように大陸がある。一つ違うのは北極に位置するところが氷だけではなくちゃんとした大陸があるということだ。世界地図で上に位置することが多いいのが『極寒大陸パゴーノ』漁業が盛んであり、いろいろな種族が混在している。もう一つが『氷地大陸グラキース』。こちらは大地が氷で覆われていることから南極大陸と言われて納得しそうになるかもしれないが、南極大陸ほど氷は厚くないし山脈もない。共通していることはとても寒いということ、これに尽きる。


 そして、逆にとても暖かいというか暑いのが『火山大陸フローギウス』だ。名前の通り火山が多く、場所によっては火山がまるで山脈のように連なっているところもある。怖いのはこの火山大陸において活火山以外の火山はないと言っても過言ではないことだろう。なのでここでは温泉は有名だし鍛冶が盛んだ。そしてなにより全大陸において2番目の大きさを誇る。


 そして1番大きい大陸は『火山大陸フローギウス』の隣にあり、今僕がいるこの大陸、名前を『創造大陸クレアトライ・ディミオルゴ』と言う。幾つもの国があり、人類の種類が一番多いいと言われているのは誇張ではない。比較的に温暖であり、雨季と乾季に分かれている場所が多いい。ただ、雪が降る場所もあるため一概には言えない。


 そして、更に隣に行くと『プランテスナ大陸』に着く。ここはいわゆる四季というものがあり、色々な天気を知ることができる。そして、一番他の大陸と違う所は台風や雷などの自然現象が多く起きやすい季節があることだろう。そして、山脈や火山が一つとしてない唯一の大陸だ。


 山脈が一番あると言われているのはその『プランテスナ大陸』の隣に位置する『岩石大陸エダフィミネ』だ。平地がないと言っても過言ではないほどであり、まさに山脈だけの大陸。故に『岩石大陸エダフィミネ』に住む人々は山脈の中に家を作る。そんなこともあり、ドワーフ族が一番多いいと言われる大陸だ。


 そして最後に、これを大陸と呼んでいいのか疑問な所だが、学園でも習うので紹介しよう、『天空大陸カエシャル』。その名の通り空に浮かぶ大陸だ。どこかの某結晶石の力で浮いている古代文明の遺産などとは及びもつかないほどの大きさだが、大陸の中では一番小さい。常に海上にいるというか、他の大陸の上を通過するのを忌避しているのかどちらか知らないが、とにかくこの大陸に上がるには海を行かなければいけないというデメリットがあるため鎖国ならぬ鎖大陸といった所になっている。


 因みにだが、大陸の大きさを大きい順に並べると『創造大陸クレアトライ・ディミオルゴ』『火山大陸フローギウス』『氷地大陸グラキース』『プランテスナ大陸』『極寒大陸パゴーノ』『岩石大陸エダフィミネ』『天空大陸カエシャル』の順番だ。


 そして、今習っているのは最初に現れた魔王のことだ。魔王の名前はクリュスタッロス。『極寒大陸パゴーノ』にいる正真正銘の化け物。本体でないとはいえ『極寒大陸パゴーノ』に住まう龍神パゴスと張り合えるのだ、これを化け物と言わずして何を化け物と言おうという存在だ。


 2番目に現れた魔王イフェスティオは人類に対しての被害は一番大きいと言える。未だに『火山大陸フローギウス』にて、顔を利かせている。数ある『火山大陸フローギウス』の大国相手に引くことなく戦い続けていられのは賞賛に値するべきか、未だに『火山大陸フローギウス』を完全支配出来ていないことを馬鹿にするか判断に迷うところだ。だが、この魔王イフェスティオと『火山大陸フローギウス』の大国との戦いは有名で、今年で第732次シリア森林大戦と名付けられている。シリア森林とは名の通り、『火山大陸フローギウス』の数少ない森林の一つで、ここの国境は戦いの度に変動する。ほぼ毎年行われるこの戦いはここ数年はもはや恒例行事と化しており、『火山大陸フローギウス』の大国の演習程度の認識とすら言われている。


 嬉しいことに第732次シリア森林大戦の全ての戦績を覚えたりしなくていいので僕の心は晴れやかだ。『火山大陸フローギウス』の軍人に志願する人は戦績だけではなく戦略なども覚えないといけないのだろうが僕には関係ない。それに、魔王や幹部はこの戦いに一切参戦していないと聞いた。ようはこの戦い名前は御大層なのに小競り合い程度で、それが戦略戦術でどうにかなる理由だろう。


 恒星ランヴォの斜光が僕の顔を照らす。そろそろ帰らなければライヒさんが小言を言いだしそうなので教科書をカバンに仕舞いや本を本棚に戻す。僕は急いで図書室を出て行った。



_____________________________________




 #side ナタイ


 二人はパーゴジウム王国の首都の後背にある山脈に足を踏み入れようとしていた。山に近くなればなるほど吹雪は強くなり、視界は雪で埋まっていく。それなのに、二人が歩けるのは偏に彼・彼女らの使っているフード付きコートが高性能であるからだ。雪の遮断、風の遮断、そして防寒。もちろんコートを着ているため風は遮断されるが息を吸うときの酸素がなくなることはない。また、吹雪の中でも周りの障害物などが見えるようにできている。これを高性能と言わずして何を高性能というのかという言いたくなるような代物だ。


「ついにここまで来てしまいましたね」


「来たというか来させられたというべきだろう」


「来させられた〜〜」


「私の努力と比べてどの口がそんなことを言えるんですか?」


「この口だが?」


「いいでしょう、今ここで雌雄を決するときです」


「くだらないことを言っていないで”過去視”を続けろ」


「もっと私の努力に報いるような言葉をかけられないんですか?」


「お前の努力によって結果が出れば考えないでもない」


「それは結局しないということでは?」


「お前が結果を出せば考えると言った」


「確約をしないんですか」


「確約をして欲しいのか?」


「……あぁ、もういいですよ‼︎ わかりました。もう期待しませんから」


 そう言って女性ーーシシリアは山道に入り、歩き出す。それに男性ーーアバディが付いていく。山道は岩でできており、険しく傾斜が大きい。魔法で舗装されているとはいえ、今は雪が降っている。足元の岩場は見えず、窪みや出っ張った部分が確認できない。しかし、そこはアバディの地獄と称されている特訓を受けたシシリア、難無く……とまでは言えないものの危なげなく雪で埋もれた山道を歩く。そしてアバディ、こちらはまさに難無くシシリアの後をついていく。特別捜査衛兵の隊長を務めているだけある。


 それから山脈の一つの山の中腹まで来た。本来であれば山肌を吹き下ろす吹雪に逆らうようにして歩くことは至難の技というのにスピードを落とすことなく歩き続けるこの頭のおかしい衛兵を格好の獲物と見たのか白い毛を持つ熊の魔物が雪の窪みからその巨体を見せた。冬眠を妨げられたのか、熱り立っている熊型の魔物は迷うことなく走りだす。そして、それを見たアバディは手をその熊型の魔物に翳し無唱法絵で魔法を放つ。そして空間が歪み熊型の魔物の首が刎ねられた。血が切り取られた熊型の魔物から吹き上げる。しかし、その血は今の気温によって血の勢いが止まると凍結していく。その時間わずか5秒。


「今のはどうかと思いますよ」


「なにがだ」


「あぁ、慈悲というのが欠落していたのを忘れていました」


「衛兵が仕事をするときには慈悲がなくとも大丈夫だ」


 その言葉に反論しようとしたシシリアの口が止まった。視線を彷徨わす。


「どうした」


「獣道に入ります」


「そうか」


 そうして、彼らは山道を離れ、道無き道を歩き出した。獣道はなだらかな傾斜を描いているものの少しでも足を滑らせれば傍には断崖絶壁がある。雪に足を取られれて周りを見るのを(シシリアが)疎かにすると痛い目というか地獄の特訓の再来になることだろう。それをわかっているのかシシリアは集中して歩く。彼女は今、この一歩を滑らそうものならアバディが助けてはくれるだろうがそれよりも怖い小言と特訓をさせられると心に言い聞かせていることだろう。


 獣道を登り下りをし10回ほど繰り返した頃シシリアが立ち止まった。


「着きました」


 そこは谷だった。山脈の中で最も深い谷であり『赤の谷』とまで人々に言わしめられている場所だ。文字通り『赤』という言葉に相応しく、奥深くには溶岩が煌々と赤く照っている。この『極寒大陸パゴーノ』で唯一溶岩が地上に現れている場所である。冷えて固まることなく、輝く地下の溶岩があるため立ち上る煙の範囲以外には暖かさを求めて多種多様な生物がここに集まる。そしてその谷の半ばに穴があった。大きく、人一人入れるほどの穴。


「あの穴か」


「はい、あそこに人が入って行きました」


「そうか」


「短距離転移で行くか」


「……入るんですか?」


「ここまで来たんだぞ」


「情報を持って帰ったりは」


「そうだな、一報連絡を入れてから入るか」


 そう言ってアバディはコートの懐から魔道通信機を取り出す。副隊長に連絡を入れているのだろう。魔道通信機から戻ってきてくださいだとか、今行きますからそこで待っていてくださいとか言っているようだがアバディはそれらを無視し、魔道通信機の音量を無音に設定し、一言。


「よし、それじゃ行くぞ」


 これからどのようなことが待ち構えているかはまだ彼・彼女らは知らない。不安そうなシシリアの方に手を置き彼らは『赤の谷』の半ばにある穴の中に立っていた。谷の底から立ち上る煙は穴の中には入らず遮断されている。シシリアは安心して息を吸い込みもう先に進んでいるアバディの背を追った。



次話は2月19日(予定)です。

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