第1章 2話
誤字報告お願いします。
出来るだけ直します。
平和だ。だが、今日は雨。雨音が聞こえるし、なにより、日中であるのに窓から光が漏れているように感じない。けれどそれは家の外の話。ベビーベットの上で寝転がっている俺には何の関係もない。だから平和と言える。
最近は魔素を感知したり、手から魔素を出して暇をつぶしている。それなりに楽しいくやっている。今では魔素の感知能力は全方位全てを詳細に把握できるようになった。詳細といっても、自分の視界外のところが見えないように障害物があると把握できないが。
もちろん、それ以外の進歩もある。手から出す魔素の量は感覚的にだが、日に日に少しずつだが増しているなど。目覚ましい進歩があるわけではないが、それでも進歩は進歩。やる気は向上している。
なので、次の段階に挑戦しようと思っている。一つ目は体内の魔素を自由に動かすこと。俺はまだ手から魔力を出したり扱ったりしたことしかない。なので、手だけではなく腕、肩や足、膝など、部分部分に分けて魔素を操作すること。最終的には意識するだけで操作できるようになるのが望ましい。具体的には魔素を動かして結果が出るではなく、結果を思い浮かべたらすぐに魔素を意識するだけで操作できるようになる。要はどれだけスムーズに魔素を操作できるかということだ。それにできるようになったら、よくある転生系ファンタジーお決まりの身体強化ができないと考えたからだ。……できるかは知らないけど無駄にはならないはず。
二つ目は魔素を取り込む量を増やすということを始める。俺の魔素をだす修行(?)のスピードがあまりに遅いんじゃないかと思ったから。だって体外の魔素を取り込めるなら体内の魔素がなくなってきたら修行を中止して、魔素が増えるのを待つのは効率が悪い。体外の魔素を体内に取り入れることができるならわざわざ魔素が回復するのを待つ必要はない。
もっと早く気付けよと思うかもしれないが、俺は初めて手に入れた魔素にちょっとはしゃいでいたのかもしれない。あまり深く考えず行動してたし。まぁ、こんな生活できるのはいつまでかわかんないし楽しんでおこう。子供になったらどんなことをやらされるか解ったもんじゃないからな。
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いったい俺がなにをしたと言うのだろう。俺は今、抱っこされている、一番年下の姉に。多分俺が寝ている間に抱っこしているのだろう。だが姉よ、抱っこしながら歩かないでくれよ。怖いだろ。もはや起きている時は意識せずとも魔素を感知できるようになったことを呪う時が来ようとは。今の状況がわかるのでとても危険なことだと理解できる。
何が危険か挙げていこう。その1、姉は前ではなく俺を見て歩いている。その2、確かにただの森林と野原の中間に見えるがそれが子供ならば、木の根っこに足を打つけ転ぶかもしれない。地面に嵌った石に躓き倒れるかもしれない。さて、その時姉に抱えられている俺は一体どうなる?
ついさっきまで楽しんんでいましたことを認める。初めての外の光景に、馬車の内部に。目を覚ました時、自分の部屋ではない場所にいたことに喜んだのは間違いなく俺だ。
だが納得がいかない。ピクニックだということはわかる。もちろん行くことはいいことだ。太陽の光は体にいいともどこかで聞いたことがある。だが、姉(小)が俺を抱えていること。そして、それを兄(大)&姉(大)が眺め、父(多分)といつも俺に母乳を当てえてくれる母(多分)も一緒であるのにもかかわらず。
なんで姉(小)の行動を止めないんんだよ‼︎‼︎どう見たって危ないだろ‼︎それともアレか?俺と姉(小)の存在は頭から抜け落ちているのか⁉︎なんて可哀想な俺……。
「©˙¥†ˆ˙˜ø©ˆ˙∂®ø†´∂®˙øˆ˙¡™£¢∞§˙∂®ƒ©」
使用人と思わしき人物が姉(小)に何かを言った。どうせなら「危ないので私が代わりに持ちます」とか「ーー(俺の名前)を抱っこするのを交代しましょうか?」と言っていることを願う。目はよく見えないが開いているので精一杯うるうるとした保護欲を唆られるような目を使用人に向けてみた。効果があるかどうかは判らないが。
「¢£∞˜®˙ˆ†˜¥∂π∂†¥†¨∂ƒ©˜øπ˙≠-ºπ…‥©˚˜†∞¢´˜ƒ˙」
ふと考えるような仕草をした姉(小)はよく判らない言葉を言って抱きかかえていた俺を使用人に渡した。よくやった使用人。これで俺は安心して眠りにつくことができる。そうして俺は夢の国に旅立った……と考えてみたものの、残念なことにその時は夢が見れなかった。
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遂に、ついに ついに母乳から離乳食になった。俺はベビーチェアに座らされた。ベビーチェアのテーブルにはスープ(多分味薄め)が置いてある。ベビーベットの横には母(多分)その後ろには使用人が控えている。母(多分)はスープをスプーンで掬った。何をするのか見ていたら。俺の前にスプーンを出してそのままフリーズ。スープを掬ったスプーンは俺の前で止まっている。どうしたのだろう?
「∞¥ƒ˚˙∂øˆ˙g†¨©∂π©ƒ˙k£」
なにやら使用人が母(多分)に何かを言った。そうして母は恐る恐るスプーンを俺の下唇に軽くのせた。飲めということなのだろうか、スプーンが動かないので飲めということだろうと思い、上唇を使ってスプーンを口の中に入れる。母(多分)はホッとしたようにため息を吐き、スプーンを俺の口から引き抜いた。味は薄い、トロトロしている。これはスープと呼んでいいのだろうか?そういえばコーンスープとかあるし一応スープの範囲内か。と考えているうちに二口目が来た。同じようなことを繰り返しているうちに、お椀に入っていたスープがなくなった。そうして母は俺のいる部屋から出て行き使用人が俺をベビーチェアからベビーベッドに寝かせ、お椀とスプーンを片付けに部屋を出て行った。
なぁ母よ、3人も子供がいるのになんでスプーンを持つ手が少し震えているんだよ。だって乳母とかがスプーン震わせて赤ちゃんに離乳食をあげるわけないし、もし乳母なら教育係はなにやってんだと突っ込んでやる。ということであれは母(多分)ではなく母にすることにした。それにしてもあれか、兄&姉達の世話は使用人にすべて任せていたのか?それとも数年ぶりに子供に離乳食をやったからよく覚えていないのか?いくら考えたって解らないのでこの話題は無視することにした。
ということで俺の離乳食生活が始まった。普段は母が離乳食をくれるがたまに使用人がすることもある。使用人が俺に離乳食を食べさせてくれるとき母は一体なにをしているのかなどと考えたりする。唯もう一つ、夜にも食べるのは何故なのだろう。この二つのことはいくら考えたって解らないので放置することにした。
最近思っているんだが俺は無視or放置している話題多くね?そんなことはないと自分の心に言い聞かせてこの話題からも目を逸らして放置することにした。これでいいのか?いや大丈夫だ。そう思うことにした。
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不思議なことがある。目で物の色、形が見やすくなってきている。普通の赤ん坊の平均的な目の見えるようになる時期がどのくらいかは知らないが、俺の場合は早いように感じる。いや、普通なのかもしれないが俺には確かめるすべがない。確かに俺は一度同じことを経験しているが覚えていない。当たり前だ、生まれてどのくらいして目が見えるようになったのか知っている奴なんていないだろう。万一覚えている奴がいても断言できる、それは少数派だと。だが、目が良く見えるようになるのはいいことだ。それに目が良く見えるようになってから魔素の感知で色までわかるようになった。多分頭の中で修正でもしているのだろう。
久しぶりに色を見た感想は「やっぱ色があったほうがいい」ということだ。今はまだ前世より見えるようにはなっていないがそこは魔素を感知するなどしてある程度は補えている。だから、俺が寝ているベビーベッドの柵は焦茶の色で布団と毛布は白色だということを知った。天井には金色で装飾のあるシャンデリアが吊り下げてあり、天井の色は少し黄色を帯びた白色で統一されており壁と天井の接するところが下がり天井のように段差がある。しかし、外側に丸みが天井と壁に繋がる部分が装飾がされている。壁紙には花の絵があしらわれていた。さらに、机の脚と幕板に装飾があり、椅子も脚の部分に装飾が施されていた。これを見ている俺の感想といえば「俺の生まれた家は相当な金持ちだったんだな」と一瞬現実逃避をしかけた。部屋をただ見ただけだとどことなく質素な感じがするんだがひとつひとつをよく見ると手が込んでいることがわかる。もしかしたら魔法の力でどうにかなっているのかもしれないが、部屋にあったものを揃えるのは意外と大変なことだ。前世の母親が「これを買うのは部屋に合わないけど、必要なものだし」とうんうん唸りながらしていたのを見ていたのだから間違いない。
そんなこんなで俺の家がお金持ちだと判って数日後、順調に俺の視力は上がっている。だが待ってほしい。俺の魔素の量だって数日またなければ増えていることが実感できなかったのになんで視力が上がっているのはは日跨ぐだけで実感できるんだよ。不思議に思うがべつに困ることだはないので現実を受け入れることにする。
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窓からサンサンと日が入っているお昼頃、ベビーベットの上で仰向けに寝ている俺はハイハイの練習をするために寝返りを打ちうつ伏せになる。魔素を使って体を強化する。魔素で体を強化、肉体の補助ができるのに気付いたのは、つい前日(前回起きた夜の時)最近は起きている時間も増えてきている。なので暇な時間は有効に使わなければいけない。右腕を立てて力を入れる。次は左腕を立てて力を入れる。足を曲げて、四つん這いになる。右手と左足を前に出して前進する。同様に左手と右足を前に出す。数回繰り返すと、柵にぶつかりそうになる。あらためてこのベビーベットは大きいと思う。体重を下半身に掛けて腰を下ろして座る。これでどっこいしょなどと言ったら、歳をとったお爺さんかお婆さんのようだろうかとくだらない事を考えながら目に映った柵の一本を握ってみた。これで両手で柵を握りながら口を開けて騒いでいたら囚人にでも見えるのだろうかと思いながら柵を触って遊んでいると
「†©π©で遊んでƒ˙˚˜…かフォーティ様」
と使用人のターニャさん。多分「柵で遊んでいるのですかフォーティ様」と言っているのだろう。ここ最近は言っている事が判るようになってきた。子供向けの絵本とか話をしてくれるからだろう。これを喜ぶべき事と捉えるか、知らなくてもいい現実を知ってしまう事になっていくのかと嘆くかはその人(赤ちゃん)次第だろう。せっかくなので答えておく。
「うーん」
どうしてもちゃんと答える事はまだ難しいけど。
「それでは私はƒ˜√©…しますので」
『ƒ˜√©…』は確か『掃除』だっけ?確信が持てない。そんな感じでいつものように過ごしていたらいつの間にか眠っていた。もちろんご飯(離乳食)は食べた。
その後起きたのは夜、というか陰日。この世界というか星は大きいのか前世でいう昼と夜が長いので、昼の部分を陽日といい、夜の部分を陰日という。その陰日と陽日を合わせて廻日といい、一廻・二廻・三廻と数える。陰日より陽日の方がもちろん町人などは活動時間が長い。この前「陰日 なに?」と聞いたら教えてくれた。説明中も判らない単語ばかりで質問で話を折りまくったが……。
こういうふうに質問にちゃんと答えてくれるのでわかった事がいくつもある。この世界の名前がユリカ界というのはこの星……ユラマ星にいる人も知っていること、恒星が一つに前世でいうところの月のような地上から見える大きい衛星が三つほどある。そのうち二つは常にユラマ星を挟んでいて絶対にそれが変わらないように神が管理しているらしい。
なぜならその二つの衛星には『破神』が封印されているからだという。俺はこれを聞いたとき発狂しそうになった。だって魔王を生み出している存在が頭の上を陽日も陰日も両方いるってことだろ。なぜそんなことになったのかも童話で話してくれた。要約して言うとだーー
大昔、【初まりの神】たる【創造神】が世界を創った。今俺がいる【現界】と神の住まうための【神界】の二つを。【現界】は物質の影響が大きい。その後【現界】にはいくつもの星々・銀河や銀河団ができ、生物が生まれた。しかし【神界】と【現界】を繋ぐ【亜空間】に生まれた意志を持つ存在は常に生まれては消えを繰り返し、一向に定まった存在を確立する存在は生まれなかった。そしてそれに【創造神】は憂い、【現界】と【亜空間】が影響を与え合えるようにした。意思の力が強い【亜空間】にて、生物の安心や恐怖の心から神になり得る存在が生まれた。安心ーー生を与えるものから【精霊】が、恐怖ーー死を与えるものから【龍】が。そして最初に生まれた2体の【精霊】と【龍】。これらを【最古の神々】という。【精霊】と【龍】は全にして個であり個にして全であった。彼らは争い戦いを続けていたが、長い年月をかけりことにより分裂・多様化し別れていき独自の自我を持つようになった。そしてさらに長い時が経ち【精霊神】・【龍神】になったのである。そしてそれらは【原初の神々】と今では呼ばれ、精霊神十九柱、龍神十九柱、計三十八柱の神が存在することになった。
時は過ぎ原初の神々以外にも何柱もの神が生まれた。その中に『破神』と呼ばれる神二柱が生まれた。名前を破精霊神デーストルークティオーと破龍神ディアプトラという。その二柱の神々は自分達の世界を創った後、【原初の神々】に喧嘩を売ったのだそうだ。長い激闘の末、『破神』は封印されるに至ったと。なぜその二柱が殺されなかったのかというと、まず彼らの創った世界がどこにあるのか判らないのと、魂はその世界にあるため封印しないとその世界で復活してしまうので、何もできないように封印したというのだそうだ。こんな話を子供にするのは現在進行形で大変なことになっているからだろう。『破神』が復活する為に産み出した魔王という存在の所為で。しかも、最低で10年に一回は新たな魔王が誕生するのだと。
ーー俺の感想はこの一言に尽きる。嫌だこの世界。元の世界に戻りたいのだが、死んでしまってこの世界に来たのだから可能性はーーないとは言えないが長く、険しい道だと思う。これでは地獄のほうがいいのか迷うところだ。俺に選択権はなかったが……。
改めて俺は現状の確認をし現実から目をそらし眠りにつくことにした。
「お布団って最高」などと考えながら。
この作品を書いておいてなんですが、作者もこのような世界には転生したいとは思いません。
そこのところをはっきりと書いておかなければいけないと今真摯に思ったので書いておきます。