第2章 8話
#side フォールティア
「なんで今私が文句を言っているかわかる?」
神をも黙らせそうな顔をして詰問してくるオラリエムイことオーリ
「心の底からわかっていると思います」
「そう言い切れるのはなぜ?」
「自分でも問題だと自覚をしているからです」
「何が、どう問題だったのかわかる?」
「試験監督の教師をフルボッコにしたのがいけなかったのかと」
「それも要因の一つだわね」
「要因の一つ?」
「解らないの?」
「はい」
「貴方が学園に入る理由を思い出してください」
「帝族や貴族との人脈作り」
「貴方の行動を知って知り合いたいと思う人がどれだけいるでしょうか?」
「皇帝になるならばそれぐらいしないといけないのでは?」
「だとしても貴方がしたことが悪かったということは変わりありません」
責めるような口調で問い詰めてくる彼女の話を半分以上聞き流しながら思う。確かさっき皇帝陛下がお忍びでくるとか言っていたのはどうなったのだ、と。
「これから皇帝陛下に合うのですからもっと節度を持った行動をしてほしいものです」
「それは大丈夫だよ(ニコッ)」
「は〜。安心できません」
それは僕も思ってることだよ。大丈夫と言ってみたものの実際のところ全然大丈夫ではない。むしろ、危機的状況だとすら言える。主に精神的に、だが。
「それで、どこに行けばいいの?」
「今、教主様は用事で仲介ができないので、応接室にて話します」
控えていた近衛兵のライヒさんが答えてくれる。マジ有能。一家に一台ライヒさん。どこかの聖女とは違うね〜。
「今、何か考えたましたか?」
「何かは考えました」
「何を考えたんですか?」
「黙秘権を行使します」
「今の貴方には人権がありません」
「なぜっ‼︎⁉︎ 奴隷にも人権はあるというのに」
「人でなしには人権はないからです」
「僕は生物学上人類ですが」
「それを証明してください」
「それよりも僕が人類ではないことを証明してください」
「言ったこともちゃんとできない人だからです」
「今人って言いましたよね‼︎」
「聞き間違いでは?」
「僕の耳は腐ってない‼︎」
「誰もそこまで言ってませんが」
「僕は騙されないぞ‼︎」
「そろそろ時間です」
横槍を入れるようにしてライヒさんが口を挟んできた。マジ有能。一家に一台ライヒさん。どこかの聖女とは違うね〜。これ重要。
「は〜、それでは行きましょう」
「もっと早く行動したほうがいいでしょうに(小声)」
「はい?」
「なんですか?」
「これ以上無駄話をしないでください」
横槍を入れるようにしてライヒさんが口を挟んできた。マジ有能。一家に一台ライヒさん。
「そうだぞ。行こうよ」
「は〜。ついてきてください」
疲れたような顔をして歩き出したオーリについていく。何かあったのだろうか? えっ、お前が原因だろうって? なんとのことかな〜。
「早くついてきなさいよ‼︎」
怒られたので部屋を出てついていく。後ろにはライヒさんがついてくる。そういえば皇帝陛下ってどういう風体をしてるんだろう?
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応接室についた。気分は最悪最低。この気持ちをオーリと一緒に共有したいものだ。そうしたら僕への当たりも緩和するのではないのだろうか。いや、それは夢のまた夢か。
「くれぐれも失礼のないようにしてくださいよ」
「心配のしすぎです」
「心配はしすぎるくらいで十分なんですよ」
「いつもそれでは精神に負担がかかると思いますよ」
「切り替えをしているので大丈夫です」
さすがはライヒさん。僕に釘をさすことを忘れない。マジ有能。僕がふざけたことを考えている間にオーリが応接間の扉を叩く。
「オラリエムイです」
「うむ。入るが良い」
部屋の中からそう言われたのを確認し、オーリは扉を開ける。部屋は前の時、案内された時と同じだ。椅子に人が座っており、後ろに3名の近衛騎士と思われる男女が控えている、ということ以外は、だが。
「オラリエムイは……久しぶりじゃな。そちらの、新しい勇者は初めましてじゃな」
「お久しぶりです」
「お初にお目にかかります」
オーリと僕が返答する。
「それでは、早速だが本題に入らせてもらうぞ」
「はい」
「とは言っても、君に会いに来ただけなのだがね」
皇帝陛下がこちらを見る。
「それはどういうことですか?」
「なに、私の息子と娘……双子なんじゃが少しやんちゃでの、お主には高くなったその鼻っ柱を折って欲しいのじゃよ」
「僕にですか?」
「そうじゃ。”聖”勇者フォールティア・ナータリウヌに皇帝ではない個人としてお願いをしているのじゃ」
「……承りました」
「そうか、それは良かった。これで一つ不安がなくなった。よろしく頼むぞ」
皇帝陛下、そんな軽い感じでいいんですか? 僕は頭によぎった一抹の不安を押し殺し会話を続ける。
「もちろんです」
会話が途切れ、沈黙が生まれる。
「それ以外には?」
沈黙に耐えかねたのかオーリが話を促すようにする。
「いや、今ので終わりじゃよ」
「お話はこれだけと」
「ただの顔合わせじゃからな」
「そうですか」
表向きはそうなっているのだそうだ。本来の目的がどうあれ、僕には関係ないことだが。そうして、僕と皇帝陛下の顔合わせとやらは終わった。唯一問題があるとすれば、僕に変なことを頼まないで欲しかったというものがあるが引き受けてしまったものは仕方がない。最低限努力しようと心に決める。果たしてこんなんで学園生活を僕は楽しめるだろうか、そんな考えから目を思いっきり逸らし、部屋から出たら昼寝をすることに決めた。
= = = = = =
サケリウス帝国の帝城で二人の男が話していた。
「あれをどう思った?」
「強いですね。あれは普通ではありませんね」
「予想通りではあるが……勝てるか?」
「無理ですね。うちの団員の精鋭でも傷をどれだけつけられるか」
「そうか、あの歳でか」
「あれには喧嘩を売ってはいけないですね」
第3者の声が会話に入る。
「どのような勇者であっても喧嘩は売ってはいけないのだがな」
溜息をつくようにして皇帝陛下ーーヒーライルが零す。
「おっと、うっかりしていました」
「「ふははは」」
二人で笑いあう皇帝ヒーライルと宰相ミシリイウィ。
「かの勇者については今の所不干渉を貫こう。ライオンの尻尾は踏みたくないのでね」
「そうですな。これからどう成長するにしても、弱くなるということはあまりないですからな」
「あったとしても、彼の”聖者”にも匹敵する回復魔法は使える。生活に困ることはないだろう」
「そこまで考える必要が?」
「保険だよ、保険」
彼らの雑談はその後も続いた。
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#side ナタイ
ナタイが借りることになった部屋は薄暗い。魔道具はついてないため光がなく、窓から降り注ぐ星々の光が四角い星影の形を作る。パッと音がしたように錯覚する。ナタイの後ろに彼を案内した使用人が魔道具をつけたようだ。部屋が明るくなったことでいろいろなものが見えるようになった。室内温度を調節するための魔道具が赤く光っている。彼は水を飲みたくなったのか、水を出せる魔道具の横に置いてある水飲みを片手に取り、魔道具を起動する。水飲みに魔道具から出た水が入る。水飲みが魔道具から出た水で満杯になったからだろう、彼は魔道具を止めた。
彼は水飲みから水を飲む。ゴクゴクと音がする。
「何か食べますか?」
「いや、いいよ僕はもう寝るから」
「それではそのように」
そう言って、使用人は部屋から出て行った。
「シィいるんだろ」
「ファークに監視するように言われたからね」
「……監視?」
「おっと、ストーカーだった」
「もっと悪くなったよ」
「気のせいだよ」
「どこが?」
「それが解らないようじゃナタイもまだまだだね」
「僕より背の低い人が何か言っている」
「あ"っ」
「何かあった?」
「あったわよこん畜生‼︎」
「女の人が畜生とか言っちゃいけないんじゃないの?」
「スラム街に住んでいるからいいんだよ」
「ダメでしょ」
「私がいいと言ったら良いの‼︎」
「そう、シィが良いと言うなら良いんだろうね」
ナタイが哀れみの目をシィに向ける。
「その目はなんなの‼︎」
「心当たりはないの?」
「あったら聞かないよ」
「そう、ならまず深呼吸をして」
「ふ〜」
言われた通り深呼吸をするシィ。
「胸に手を当てて」
心臓のあるところに手を当てるシィ。
「今から言うことを復唱して、言うよ。『私は』」
「私は」
「『スラム街に住んだことから』」
「スラム街に住んだことから」
「『常識を何処かへ落としてきてしまいました』」
「常識を何処かへ落としてきて……って、落としてない‼︎」
「間違えた、常識じゃなくて恥かな?」
「恥も落としてない‼︎」
「大声出すと見つかるよ」
「声は漏れないようにしてるわよ」
「言ってみただけだよ」
「そんな誰も引っかからないようなことをなんで言ったの?」
「それを今壊したからだよ」
「はい⁉︎」
「いや〜。これ以上邪魔されたら寝る時間がなくなると思って。(テヘッ)」
「そこで笑うな‼︎ けどしょうがないからもう行くわよ」
「じゃあね」
シィが去るとナタイは布団に潜って寝ることにした。
次話は1月29日(予定)です。




