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ユリカ界  作者: 碾貽 恆晟
第1部 2つの勇者の物語
15/64

第1章 12話

誤字報告お願いします。

出来るだけ直します。



 #side フォールティア


 空を覆わんばかりの空飛ぶ魔物がやってきていた。見張りをしている聖騎士団の人は地上に注意が向いていてあの魔物の大群には気づいてないみたいだ。なので聖騎士団の団員に声をかけてみた。


 「すみません」


 「なんですか?」


 「あれ、見えますか?」


 魔物の大群が飛んでいる方向を指をさして言う。


 「……見えました」


 「良かったです」


 「何処から現れたんでしょうか?」


 「そちらの方が詳しいんじゃないんですか?」


 「そうですけど」


 「ところで、副団長のガイラルさんに知らせなくていいんですか?」


 「……はっ、そうでした」


 「僕も付いて行きましょうか?」


 「そうして貰えるとありがたいです」


 「じゃあそうしましょうか」


 駆け足でガイラルさんのいるテントへ行く。テントの前で聖騎士団の団員が声を出す。


 「ギャディスです」


 「どうした?入れ」


 「はい」


 聖騎士団の団員がテントの中へ入るのに付いていくようにして僕もテントの中に入る。中にいたガイラルさんは僕を見て驚いた顔をして質問してきた。


 「これは勇者様も、何があったのですか?」


 「それについては私が説明します」


 「それで?」


 続きを促すようにガイラルさんが問う。


 「魔物の大群がこちらへ向かってきています」


 「なにっ⁉︎」


 その時小さくだが、遠くからいくつもの足音が聞こえてきた。よく耳を澄ませないと聞こえない程度だが。多分だが空を飛んでいる魔物が全てではなく地上にも魔物がいるのだろう。それが近くなってきたことで足音が聞こえるほどになったということだろう。


 「聞こえます?」


 「なにがだ?」


 「足音が」


 ガイラルさんと聖騎士団の団員のギャディスさんが訝しむようにしながらも聞き耳を立てた。段々と大きくなってくる魔物共の足音。ガイラルさんとギャディスさんも聞こえたようだ。目を見張り、ガイラルさんは鎧の上からコートを羽織った。


 「一緒に来い。勇者様も来ていただけると」


 「もちろんですよ」


 テントを出て足音と空を飛んでいる魔物の見える方向を向く。


 「この先にはムライ都市があるんですよね」


 「はい、冒険者の多いい都市でして、オマラリ都市と首都イルリアを結ぶ唯一の都市です」


 「そこが落ちると……?」


 「首都イルリアが孤立しますな」


 「大変ですね」


 「ひとまずは通信機で国に確認をとりますか」


 「ところで、こっちに来ている魔物、無視していいんですか?」


 「ギャディス。全員叩き起こしてテントを片付けていつでも出発できるようにしろ」


 「解りました」


 そう言ってガイラルさんは自分のテントへ通信機を使って国に連絡を取りに行き、ギャディスさんは聖騎士団の団員を起こしにいった。一人手持ち無沙汰な僕は魔物を見張ることにした。といってもまだ遠くにいるんだけど。そうしているうちに聖騎士団の団員達が行動し始めた。テントは折りたたまれ、馬車の荷台に積み込まれ、片付けが全て終わった頃ガイラルさんが聖騎士団の団員達全員と僕を集めた。


 「これからムライ都市へ行く」


 「陰日なのにですか?」


 「魔物は近くまで迫ってきている、国にはもう報告はした。ここは魔物の群れの進行方向にいる。留まっては危険だ」


 それを聞いた聖騎士団の団員達は馬や馬車に乗った。もちろん僕も馬車に乗った。馬車の速さは陽日のときとはくらべものにならないほど速かった。馬車の車輪の音で魔物の足音は聞こえにくくなってるけど、段々と距離が狭まってるのが判る。曲がり角のない直線を全速力で(多分)走っている馬車より速いとは恐れ入るしかない。いったいどんな魔物なのだろう。少なくともゴブリンとかオークとかじゃこの速さは出せない。空にいる魔物はなんとなく竜とか、翼竜のようなのが見える。


 「魔物にしては移動速度が速いですね」


 「そうですね」


 「追いつかれる前にムライ都市に着きますか?」


 「着かせます」


 ガイラルさんは自信満々に答える。それに『あなたの力じゃないでしょう』とか水を差すようなことは言わない。少し開けたところから高い建物が見えた。窓から光が出ていたので判りやすい。要塞のような外壁に立派な門も見えた。すぐ木々に隠れて見えなくなったけど。そのとき星々の光が遮られ一匹の竜が降りてきた。魔力を多く込めた”聖弾丸”を竜の眉間に打つが弾かれた。効かなかったので”混沌弾丸”をまた眉間に打ってみた。今度は頭を貫通した。それによって飛んでいた竜は馬車の後方の地に落ちた。ズンと大きな衝撃が走った。森を抜け後少しで都市ムライに着くかといったところまできたが魔物が追い付いてきた。近ずいてきた魔物が鬱陶しくて”混沌砲”をぶっ放すことにした。もちろん空に向かって横に一線して放った僕の魔術は何体もの魔物を見るも無残な姿へと変貌させた。


 「今のは勇者様がやったのですか?」


 ガイラルさんが聞いてきた。


 「えっ?あぁ近ずいてきたからこれだったら間引く量が多くなると思って」


 「今のは”聖”魔術なのですか?」


 「いえ、”混沌”魔術ですが」


 「今のが”混沌”属性の魔術」


 「それにしてもそれなりに間引いたと思ったんですが。あまり減ったようには見えませんね」


 「今のでですか」


 「まぁ、全力ではやっていませんし」


 「全力ではやらないんですか?」


 「地形が変わって怒られるのは嫌なんです」


 「そ…そうですか」


 話しているうちに魔物の現れてくる量は増えていく。森からまるで無限大に出てきそうだと思った。遂にムライ都市の門についたが開いていなかった。


 「入れてくれ」


 「まだ俺たちが入っていないぞ」


 「魔物が迫ってるんだぞ」


 門の前では10数名武器を装備した人たちがいた。多分、夜に活動している冒険者だろう。明らかに斥候職をしているような人もいる。


 「入れなさそうですね」


 馬車から下りながらガイラルさんに言う。


 「我々には緊急時に限り特別に開門を迫れるものを預かっているんですが」


 「無理そうですけど?」


 「そうですね……。この状況では」


 ガイラルさんと話していた時、外壁の上から色とりどりの魔術が魔物に向かって飛んで行った。


 「ガイラルさんは聖騎士団の副団長なんですよね?この魔物たち一掃できないんですか?」


 「無茶言わないでください。流石にこの量を団員を連れていたとしても無理です」


 「団長がいたらできるんですか?」


 「それでも多分無理でしょう」


 「それにしても、ゴブリンやオークがいますね。しかも無駄に足が速い。あれどう見ても標準じゃないですよね?」


 「私もあの速さで走るゴブリンやオークは見たことがありませんね」


 「門は開かないみたいですけど、これからどうします?」


 「戦う…と言うことですか」


 「それとも飛んで入りますか?」


 「どうやってですか?」


 「空歩で」


 「空歩であそこまで高く行くことができると?」


 「できないんですか?」


 「普通はできませんね」


 「まぁ上に登ったって戦うことになると思いますけど」


 今思ったんだけど、別に入る必要なくない?ようはあの魔物たちが倒れたら入れてくれると考えれば、あの魔物を全滅させたら入らせてくれるってことじゃないの?


 「そうですね」


 ガイラルさんが考え込んでいる。


 「あのいいですか?」


 「なんでしょう」


 「あの魔物たち倒したら入れてくれると思いますか?」


 「まぁ入れてくれるかもしれませんね」


 「そうですか。それじゃあ行きます」


 「……どこへ?」


 「確認したいんですが、地形って変えても怒らないでくれますよね?」


 「ちょっと⁉︎勝手に動かないでくださいよ⁉︎」


 僕はガイラルさんの言葉を無視して魔物の大群相手に戦うことにした。だって入れてくれないのは魔物が入ってくるのが怖いからだと思う。だったら魔物を一匹残らず倒したら入れてくれるし、街に被害は出ない。一石二鳥だろう。そう思って馬車を僕は出た。魔物の大群はムライ都市の魔法使いたちが抑えているけどいつまでも続かないだろうし、それなら打って出るのもひとつの手だと思いながら。そのとき僕の顔には笑みが浮かんでいたかもしれない。不謹慎かもしれないけどやっとちゃんとした戦いが出来る喜びで……。



_____________________________________



 #side ナタイ


 バーゴジウム王国の王城。国王ジャーマイル・ウルイ・ヤ・パーゴジウムは宰相ルイミナル・シャルウルイーラと密談をしていた。


 「我が国に神託が下されなくなって久しい。これを解消するには」


 「理由は”虚”勇者のことだということは解っていますが、これといってできることがないのが現状です。それにまだ”虚”勇者は発見されていませんし」


 「うむ、最後の神託が『”虚”勇者を見つけろ』と言ったきり一度も神託は下されていない」


 「最後の神託からそろそろ7年になります」


 「5歳の洗礼式の魂観で現れていないということは年の頃は12歳以上だと思うが未だに見つからない」


 「聖女も見たら判るそうですが、それは逆に言えば見なければ判らないということです。探しては貰っていますが難しいかと」


 「それでも見つけなければいけないのだがな」


 「”虚”勇者ですか。どのような力を持っているのかは不明ですから」


 「確か一般的な”虚”属性の魔法使いより多彩な魔術を使ったとは聞くな」


 「えぇ、どれもこれも理解が出来ないようなものだったそうです」


 「理解できなければ伝えることも出来ないか」


 「これに関してはまた新しい情報がありましたらお知らせします」


 「うむ」


 「それより、今この国で密かに動いているものたちです」


 「どんな情報があった」


 「オリラ国出身の者が多く見られます」


 「目的は?」


 「まだ、調べはついておりません」


 「……反旗を翻すと思うか?」


 「可能性は高いです」


 「それはそちらで対処しろ」


 「判りました」


 陰日、空は暗く星々が瞬いていた。二人の会話は未だ終わりの兆しを見せなかった。



 = = = = = =



 一年の内、雨は降らず、雪が降らない日はないとまで言われるバーゴジウム王国。魔道具のおかげで温まっている部屋。国王ジャーマイル・ウルイ・ヤ・パーゴジウムは宰相ルイミナル・シャルウルイーラと密談をしていた頃。王女クラミャール・ウルイ・ヤ・パーゴジウムは本を読んでいた。侍女は部屋の中の扉、傍で待機をしていた。紙を捲る音がする。少したってクラミャールは顔を上げた窓の方を見た。澄み切った空気に綺麗で、冷酷な冷たさを想わせる星々。茶色で温もりのある光のシャラーゼ、かつては遠く小さく見えたという黄色くどこか冷たさを醸し出すような光を放つクラミが一望できた。手元にあった紙で栞代わりとして挟み、立ち上がって窓へと近づいた。窓からは空だけではなく地上の家々が見えた。今いるのは王城の4階、最上階は7階だがそれでも高い。家々の窓から漏れ出る光を見て彼女は思った


 ーー雑多な世界。まるでこことは違うーー


 ーー私が行きたくてもいけない場所ーー


 ーー誰もがこの立ち位置に就きたいと思っているのに、私はそう思えないーー


 ーー雁字搦めに束縛されて、いつも王女様という仮面を被り続けないといけない私ーー


 ーー誰もが不謹慎な願いだというかもしれないけど願わずにはいれない。こんな立派におめかしして飾り付けて過ごすより。慎ましく、それなりに大変でも生き生きとした生活がしたいーー


 ーー幸せになりたいーー


 窓枠にかけていた手がいつの間にか握り締められ、赤く痕が付いていた。クラミャールの瞳には光がなく、その表情は凝り固まっていた。



 side ナタイ と宣っておきながら、ナタイが出てこないのはこれからもあるのでご甘受してください。


 因みにですが、side ナタイの場合はナタイ視点か3人称視点でやっていくつもりです。

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