表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユリカ界  作者: 碾貽 恆晟
第1部 2つの勇者の物語
13/64

こぼれ話

誤字報告お願いします。

出来るだけ直します。



 #side シャーメイル・ナータリウヌ


 弟のフォーティが”聖”勇者の加護を持っていた。私にとってとても衝撃的でまたとても納得した事だった。父に才能をかわれて2歳半から魔法と剣術の修行が始まった。かたやサケリウス帝国最強の魔導師のイーザ・マークレル。魔導師としての枠組みでは負けなしと言われている彼女に、鬼剣イバリ・スワリウス。彼は魔技魔術を合わせて使う事で自分で作れる魔剣を作り戦う剣士。彼らに物事を習う弟は当たり前のように高等な魔素の修行をし、剣を習った。5歳でも世界で上位を競えるほどの強さを持つ弟のフォーティは私にとって誇れる存在で、ちょっとお茶目な存在だった。


 この日々が永遠に続くと思っていた。形が変わっても永遠に……。けど、フォーティはこれから戦う事になる、戦場で、魔王を倒すために。いつか死ぬ事になるかもしれない。頑張って時間を作れば会えると解ってても、私が知らないところで死んじゃうんじゃないかって考えるの。


 フォーティの前ではそんな表情は見せられないから必死で取り繕ってる。笑って、行ってらっしゃいって言うの。心では微塵も思ってないのに。子供の頃のように、修行がない陰日の時のようになんでもない事を面白おかしく話して笑ってられたらどれだけ良かったかって。


 空には星が瞬いていた。最近はフォーティの事が頭から離れない。何かをしてないとすぐ頭に浮かぶののはフォーティの事ばかり。


 「星、見てるの?」


 横にはフォーティがいた。


 「そうとも言えるわね」


 「じゃあなんとも言えるの」


 「未来を見ていたの」


 「……哲学だね」


 沈黙がその場を支配した。私は前から思っていた事を聞いてみる事にした。


 「前、ファークイラと将来について話していたって行ってたわよね」


 「そうだね」


 「あなたはどんな将来が良かったの?」


 「どんな、じゃないね」


 「どういうこと?」


 「偉業を立てたかったんだ」


 「勇者になってもできると思う?」


 「もちろん」


 「どうやって?」


 「破王フィーニスを倒して」


 「できるの」


 「できるんじゃないよ、やるんだよ。よく言うだろ」


 「確かに、あなたにならできそうだわね」


 私が感じていた不安は消えていた。フォーティなら、なんでもなしてしまいそうだったから。今度こそはちゃんとした気持ちでフォーティを見送っていけるが気がした。



_____________________________________





 #side イーザ・マークレル


 その子供を見た時こいつは天才だと思った、努力をする天才だと。子供は、最初は面白くないとすぐ放り投げる。子供の頃が一番伸びる時期なのに。解っているさ、この時期の子供は種族関係無しに遊んで、楽しんでる。けど、本当に歴史に名を残すような奴になりたいなら、努力しないといけない。どんなことも一回で全部完璧にできるそんな奴はいないから。一つのことなら違うかもしれない。一つのことなら一回で完璧にできるものがあるかもしれない。けどそれは完璧ではあっても、最高ではない。完璧にできて初めて最高と呼べるものに挑戦できる。私は遅すぎた。今じゃ『サケリウス帝国最強の魔導師』なんて呼ばれているが、20歳を過ぎて初めて本気で努力した私じゃ遅すぎたんだ。けれど、あいつは違かった。楽しんでいた、努力することを。だから、最初から徹底的に難しいことから始めた。けど課した課題は全部その日のうちにはできるようになっていた。


 あいつが5歳になって勇者の加護を持っていると聞いて一瞬思ったよ、あれが出来たのも勇者の加護のおかげかと。けど、一回見たことのある勇者を思い出してその考えを否定した。あいつは頑張ったから出来たんだ。なーなーでやってた勇者と比べるまでもない。けれど、あいつが魔王と戦うだけ育ったかというと、それはないだろう。そんな不安を払拭するために最後の修行を行なうためにイバリに声をかけた。話をすれば返事は「良い」と返ってきた。早速日にちの調整をして蘇生結界を持ってこようとしたのだがイバリ曰く、この前実戦訓練で使ったことがあるやるが今も持ってるということでそれを使う流れとなった。


 結果は惨敗。傷一つ付けられず、魔力切れまで持って行けたもそれは最後の魔術を使ったから。あと一人いたら勝てたかもしれないが、たらればの話をしても仕方がない。負けたのは負けたのだから。それにしてもあいつは一体何になるつもりだ?あれで高笑いでもしながら戦っていたら魔王か何かだぞ。あれで実戦経験を積んだらどうなることやら。そう思いながら次戦う時は大人になっているだろうし、奥義でも使ってみるか?まだ一度も実戦で使っていないのだがなどと考えている私も私か。



_____________________________________



 #side クラリウス・ナータリウヌ


 私とナタリーシャことナターシャの次男が生まれた時ナターシャが言った言葉を思い出す。「この子はどんな未来を生きるんだろう。波瀾万丈な人生か、穏やかで順風満帆な人生なのかって」その言葉は商業に精魂費やしていた私にはひどく心に来た言葉だった。


 その日から私は考えてみた。私は子供の未来に何か残せるだろうかと。ファークイラは私の後を継ぐ気でいる。私もそれを否定する気はない、あいつが本当に心の底から望んでいる子だろうから。いや拠り所かもしれないが。ハーネイルはよく分からない。あの子はいつも澄まして過ごしている。言われたこと忠実にやり、文句一つ言わない。だがこういうタイプの人はこうと決めたら動かない嫌いがある。多分だが、我が子も例に漏れずそうだろう。なので、ハーネイルはやりたいといったことをやらせてやるのが唯一私が残せるものになるだろう。シャーメイル、彼女は勝気でこうと決めたら周りが見えなくなる。ある意味一番何かを残してやるのが難しいと言えるかもしれない。彼女もハーメイルのようにしたいことがあったら認めてやるのが良いだろう。


 そして、フォールティア。1歳で魔技の応用で結界のようなものを使い出し、現在勇者の加護があることが判明したのがついさっき、こんなことを考えるきっかけとなった二つ目の要因だろう。だが、サケリウス帝国最強の魔導師のイーザ・マークレルと鬼剣イバリ・スワリウスを家庭教師として招いたのが最大の残してやれるものであって欲しいと切に願う。無論これからも勇者になったのだから会う機会などたっぷりあるだろう。だが……。


 やめだやめ、そう思い考えるのを放棄した。結局その時になるまで何を残せたか、何を残してやれるのかは判らないのだから。



_____________________________________




 #side ハーネイル・ナータリウヌ


 フォールティア、私の弟であり、勇者の加護を得ていた人。我が家では一番の猫かぶりの人と言えるでしょう。まぁ、猫かぶりをしているのがもう意識下における条件反射で行える次元にまで達しているのは賞賛すべきです。私でも父には看破されているであろう心の裏をも超えているのですから。私がそのことに気づいたのは単なる偶然でした。


 それは、ある日のこと。フォーティは私の妹のシャーメと歩いていました。そんな光景を見ながら私がいつもいる木に背を預けていると、シャーメがフォーティにこれは自分が大切にしているものだと言って赤い玉を取り出しました。フォーティはそれをシャーメから受け取ると、シャーメをじっと見て空中を駆け出しました。そして2階の窓から自分の部屋に入ってしまったのです。それ自体は別に不思議ではありません。なにせ、ベビーベッドからその魔技を使って逃げ出していたそうですから。驚いたのは、彼が二階からシャーメを見下ろした時の笑顔でした。まるで悪魔のように冷酷で、残忍のように見えたのです。その時私は判ったのです。全ての人は心に闇を持っているということを。どんないい人だって心の中では何を考えているのか判らないのです。だから決して私は心を開かず壁一枚隔てた関係を貫くことを心に決めたのでした。今でもそれは私の心の指針です。



_____________________________________




 #side フォールティア・ナータリウヌ(2歳)


 最近シャー姉と演劇ごっこをしている。壮大な演劇もあと少しで終わる。勇者であり王女(シャー姉演じる)が遂に、守っていた赤玉を魔王であり勇者であり王女(シャー姉演じる)の弟で王子(フォーティ〔僕〕)に託すが僕(弟)が本当の魔王だった。勇者であり王女(シャー姉演じる)はその事に遅まきながらも気づくが後の祭り。勇者であり王女(シャー姉演じる)は周りの非難の声に何かあったのだろうというが、仲間の聖女や賢者は魔王であり勇者であり王女(シャー姉演じる)の弟で王子を倒しに黙って行ってしまった。勇者であり王女(シャー姉演じる)は仲間のあとを追うが、追いついたっときにはすでに、魔王であり勇者であり王女(シャー姉演じる)の弟で王子は虫の息だった。必死で傷を癒そうとする。そのとき魔王であり勇者であり王女(シャー姉演じる)の弟は操られていたのだと告白する。そのとき本物の魔王が現れしゃべってくれなくてもいい事をぺらぺら喋り、最後に勇者であり王女(シャー姉演じる)の弟はいい働きをしてくれたと話を締めくくった。これに怒った勇者であり王女(シャー姉演じる)は魔王と戦いこれに勝利した。最後にまだ息の残っていいた勇者であり王女(シャー姉演じる)の弟は遂には生き絶えた。という感じで終わる。そしていまは勇者であり王女(シャー姉演じる)が守っていた赤玉を魔王であり勇者であり王女(シャー姉演じる)の弟で王子(フォーティ〔僕〕)に託すシーンから始まる。さてと操られているんだからいい悪役を演じないとね。ニヤッ。



こぼれ話は幕間と違って本編には一切関係ないのでストーリーを理解する上では読まなくても問題ありません(作者的には読んでほしいです)。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ