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ユリカ界  作者: 碾貽 恆晟
第1部 2つの勇者の物語
11/64

第1章 9話

誤字報告お願いします。

出来るだけ直します。



 #side フォールティア


 洗礼式、それは5歳になる子供を1月最後の廻日に街の一箇所はある教会に集めて行う。これによって神々に祝福や加護を受けているかどうかがわかる。祝福は受けている人にその才能があることを示す。例えば武器、生産などの祝福がある。加護は神の試練と言い換えてもいいものが多いい。偉業を成し遂げた後に加護を受けるものもいるが子供でそれは少ない。よって5歳で受ける加護は試練として人々は受け取る。加護は勇者や聖女、賢者、英雄などがある。もちろん他にもいろいろあるが有名どころは今あげたのがそうだろう。


 今日それがサケリウス帝国でも行われる。僕がいるのはサケリウス帝国でも有数の都市のひとつ、オマラリ。首都イルリアに最も近い都市のひとつで、他国からの道は全て一度はここを経由する。それは首都イルリアが広大な森に囲まれているからだ。魔物が大量に蔓延る森は道ひとつ切り開くだけでも長い時間を必要とした。なぜそのような歪な立地になっているのはその森に妖精族がいるのが最大の理由だろう。妖精族が魔物が首都イルリアに押し寄せないように日々守り、国は妖精族のため森を切り開かないよう国が起こった時に締結された。そのような理由で首都と他の都市の道が経由するオマラリが発展しないはずもなく。オマラリ都市は首都より大きい都市なのだ。なので人口は多くそれだけ洗礼式を受ける子供が多いいということだ。だいたい何人いるのかというとだ、100名は下らない。この教会はオマラリ都市一のを誇る大きさをしている。だから、いるのは上層階級の貴族、僕みたいな豪商の家などの子供がほとんど。なので服が高そうなものを着ている人が多いい。香水やらなんやらの匂いがすごい。そう、一言で言えば「くっ、鼻が……捥げる」といったところだろうか。香水をつけている人が多いから匂いが混ざってとてもじゃないけどいい匂いとはいえない。理由はあれだ。付き添いの親のつけている香水のせいだ。たしか、ウチの商会も香水を売っているらしい。僕が行ったのは町人の人たち用の店しかないから多分香水はあまり売ってなかったと思うけど、香水とはこれだけあるのかと下らないことを考えていた。


 「何遠い目をして空を見てるの」


 シャー姉が僕に聞いてくる。今日は学園が休日なのでシャー姉は僕に付いてきたのだ。保護者的な立ち位置だろうか。双子の方は見なくてもいいのだろうか。


 「香水の匂いに辟易してしまったからですよ」


 「そう、早い内に慣れた方がいいわよ」


 「慣れなくてもいい仕事に就職したいですね」


 「……その実力で?」


 「どの実力ですか?」


 「サケリウス帝国最強の魔導師と鬼剣に鍛えられた実力よ」


 「なに言ってるんですか。まだ勝ててないんですよ」


 「その歳であの人たちと戦えるんだから大丈夫よ」


 「そうですか?」


 「そうよ。それと、そろそろ洗礼式始まるから列に並んだら?」


 「最後がいいです」


 「普通は最初がいいと思うんだけど」


 「楽しみは最後まで取っておくのがいいんですよ」


 「ならいいんだけど」


 教会の祭司らしき人が出てきた。


 「それではこれから洗礼式を始めます。並んでお待ちください」


 祭司さんの声かけとともに子供達は並んだ。もちろん僕もシャー姉に目配せをしてから最後尾に並ぶ。祭司の人が列の子供達を教会の門を開けて中に案内する。ふと思った。他の子供達は前後で話したりしているのに僕には一言も話しかけてこない。最後尾だからか?けどさっきも話しかける機会はあっただろうに。こんな可愛らしい容姿をしているのになぜ無視するのだろう。などと考えている内に教会の中に入っていた。扉が『ゴン』と音を立てて閉まった。そして付き添いの人たちも入っていた。教会の中は長椅子が何列もあり、聖精霊神サケルの偶像の数歩前まで置いてあった。壁は石でできており神聖で静謐な光景だった。祭司の人が一つの薄いカードのようなものを出した。それに子供が魔力を注ぐのが見えた。カードについている小さい玉が光った。事前に聞いた話ではあのカードは魂観こんかんと言い、あの玉が光ると本人登録が出来たということらしい。そして魂観はそのまま本人のものとなる。


 祭司の人が一人一人の子供に手渡しで魂観を渡している。順調に進んでいった。最後に僕の番になった。


 「ここに魔力を注いでください」


 無言で言われた通りに魂観に魔力を注いだ。他の子と同じように玉が光って登録が完了したみたいだ。魂観にはこう書いてあった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 《名前》フォールティア・ナータリウヌ


 《歳》5歳


 《武技》サケリウス帝国流剣術


 《魔属性》単一属性 ”存” ”虚” ”聖” ”魔”

      混合属性 ”現世うつしよ” ”混沌”


 《加護・祝福》”聖”勇者


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 情報少な⁉︎なにこれ。なんか期待したのと違うというか。どうせならゲームのように体力、魔力とかないの?スキルはないのは前々から知っていたけど。魔力は測定する方法があるんだから付けとこうよ。とかなんとか思っていたら司祭の人が僕の魂観をみて固まっていた。よし、あれだもう無視して帰ろ。触らぬ神になんとやら。神じゃなくて司祭だけど神に祈っている人だから間接的に神に触れてるか?


 「また後日伺います」


 祭司の人が言った。


 「分かりました」


 そう答え、シャー姉のところへ戻った。


 「どうだった?」


 魂観を見せてあげた。


 「ご覧の通り」


 「加護のところに『勇者』って書いてあるんだけど」


 「そうだね」


 「現実逃避でもし始めた?」


 「そんなことはしないよ」


 「それなら良かったわ」


 「ただ……この世界を呪ってはいるよ」


 そういって「ふふふ」と笑う。


 「大丈夫ではなかったわね」


 「そんなことはないよ。さてと洗礼式も終わったし帰ろうよ」


 「そうね、教会も後日、使者か何かを寄越すだろうし」


 「……もういやだ」


 「フォーティ、あなたは勇者なのよ。今はなんもしてこないけど絶対、教会はあなたを引き渡すように言ってくるわよ」


 「僕は罪人か何か?」


 「はぁ〜」


 なぜかため息をついて帰ろうとするシャー姉。まぁ、帰るのには賛成だからいいけど。


 = = = = = =


 シャー姉は父にこのことを言ってくると家に着いた途端僕を放っておいて行ってしまった。今日は家庭教師もないので自室に戻ることにした。それにしても勇者ってのは本当だったんだなと魂観を眺めながら思う。覚悟はしていたけど、いざそのときになったら嫌な気分になる。こういう時は違うことを考えるんだ。魂観は魂に刻まれた記憶を観ると言われる。イーザ先生とか、イバリ先生の魂観ってどういうのなんだろう。そんなことをつらつらと考えているうちにご飯を食べる時間になった。使用人のターニャさんに呼ばれて食堂に行く。そこではいつもと違い、お通夜でもあったのかと思うほど、静かで重い空気が流れていた。これではとてもではないがご飯の味は判らないだろう。


 「フォーティ」


 父が口を開いた。


 「加護が勇者だったそうだな」


 「そうですね」


 「これからお前は教会の本部に行くことになるだろう」


 「イルリアですか?」


 「そうだ」


 「勇者だからですか?」


 「あぁ」


 「転移門を使って?」


 「いや、街道を通ってだ」


 「なぜです?」


 「そこで実際に戦わせて力を調べるためにだ」


 「教会ってのは意地悪なんですか?」


 「その時の評価で勇者としてどう扱われるかが決まる。首都から勇者が出たらまた違う対応だが」


 「結論はなんですか?」


 「まず、魂観を見せてくれ」


 言われたので近づいて手渡した。


 「聞いてはいたが、すごいな」


 「何がですか?」


 「混合属性はそう簡単に手に入らないのだが」


 「勇者の話では?」


 「もう、どうなるかは大体判っただろ」 


 「それなら、ご飯食べた後じゃダメなんですか?」


 「ふむ、それもその通りか」


 その後はこれといって変わったこともなくその日は終わった。いつも修行がなかったらいいのにと思ったが、陰日のとき修行をしないと腕が落ちる気がして特訓した。イバリ先生に毒されたかな?



 = = = = = =



 翌廻日、教会の人が来た。


 「どうも。私はイラミハと言います。知っていると思いますがオマラリの教会の監督をしています」


 「これはご丁寧に」


 と父が返答する。


 「知っているとは思いますが、そちらのお子さんが勇者の加護を得たということでこちらに引き取らしてもらいたいのですが」


 「そうですね。一応聞きますがどこに、いつ頃が良いでしょうか?」


 「もちろん教会本部ですよ。日にちは……こちらも一週間は準備にかかりますので、一週間後お向かいに上がります」


 「解りました」


 ということになったと父からその日聞いた。僕が勇者になることについてどう思っているかについて聞いてみたけど、別に転移門を使って会おうと思えば会えるのでそこまで深刻に考えてないそうだ。それにお前は理不尽の化身だろだとのたまった。大丈夫神でも倒せない限り理不尽の化身ではないと思うと返答したらため息を()かれた。こちらもため息を吐きたいのに、なんで転移門で行けるのにわざわざえっちらおっちら街道を通っていかないといけないのだろう。他にも言いたいことがある。ファー兄は魔王を倒したら偉業だぞと言い、ハー姉は頑張って下さいとまるであなたは死ぬことがないだろうから別にいいでしょうと言わんばかり、シャー姉に至ってはフォーティと戦う魔王は可哀想ねと言い出す始末。僕はちょっと修行をしたくらいの5歳児だというのに。何この仕打ち。


 斯くして、僕はサケリウス帝国首都イルリアに行くことになったのだった。



_____________________________________



 サケリウス帝国、首都イルリアの帝城。皇帝イギュリオウスは新たな勇者が発見されたという報を聞いていた。


 「3日前、勇者となった子の名前はフォールティア・ナータリウヌ。祭司が見た属性の種類は4つで、”存” ”虚” ”聖” ”魔”いずれも混合魔法まで習得しているそうです。さらには彼の師はサケリウス帝国最強の魔導師イーザと鬼剣のイバリです」


 「調べがついたのはそれくらいか」


 「はい、なにせナータリウヌ家の引きこもりと言われていたほどでして、あまり表に出てきていないので情報はどうしても表面的なことぐらいしか判りませんでした」


 「うむ、それでも強いということぐらいはわかるな。あの二人が一人の子を弟子にしたと聞いたときは驚いたが勇者だったとは……しかし、そのときは勇者とは知らなかった。ということはその子は弟子にするに値する性格をしていたということか」


 「そういうことではないかと」


 「これは今代の勇者は期待できそうだな」


 勇者。一言にいってもピンからキリまであると言っても過言ではない。しかもそれがもっとも出現頻度が多ければ顕著に判る。我が国に現れる勇者は”聖”勇者のみ。しかし、その能力が優れていると言われるのは”聖”の属性を持つ魔王が一人たりとも生まれたことがないからだ。ゆえに、すべての魔王に使える魔法がある”聖”属性の鎖。少しでも触れようものならあっという間に絡み取られる。これを破るには力ずくしかない。なぜならこれは同じ”聖”属性を持つものしか解けない。この制約があるため。他属性の魔法に対してとても強い力を発揮する。それは他属性の魔法は”聖”属性の鎖に一切の干渉ができないということだ。この力ゆえに”聖”属性の勇者は強くなくとも勇者と扱うに値する存在たりえた。それが最近では魔王は鳴りを潜め魔王と戦うということが少なくなった。破王フィーニスが動いているというのに。


 「これで、状況が少しでも好転すれば良いのだが」


 「難しいでしょう」


 「そうだな」


 破王フィーニスが魔王どもを今抑えているから何も起こっていない。逆に言えば、いつ破王フィーニスが魔王に進軍などを指示するのかもわからない。今、世界の国家すべてに対して宣戦布告をした破王フィーニスはいつでも戦争を始めることができる。フォスティオス国は宣戦布告から一週間後に攻め入られた。いや滅ぼされたと言うのが正しいか。逃げる機会はあったのだ、ただ誰も信んじていなかったのだ。破王フィーニスが未だに生きているなどと。我が国がいつそうなるかそれは破王フィーニスの気分次第。勇者が一番多い国でさえそうなのだ。破王フィーニスがまた動き出したと聞いたのは最近だ。勇者が一人増えたところで状況が変わるというのは少し高望みをしすぎであったか。


 「この話はこれで終わりか?」


 「最後に、勇者がこの首都イルリアに来るのはあと一週間ほどだそうです」


 「相分かった」


 うまくいかないものだ。我が代になって破王がうごきだすなど、若い頃は思いもしなかった。年寄りを労らんかと愚痴を言いたくなる。陰日の空に瞬く星々が心を少し落ち着かせてくれた。



_____________________________________




 #side ???


 パーゴジウム王国。建物がいくつも立ち並び日が当たらない路地裏で1人の子供が歩いていた。年の程は6歳(地球では9歳)に思われる頃。フードを被って見難(みにく)いが顔立ちが整っているのが判る。中性的だが表情は一般的な6歳児の子供の見せる顔とは乖離していた。その子供の表情は読み取れないのだ。笑顔でもなく、無垢でもない。冷徹な仮面を被り、感情をひた隠しにしているように見える。目は口ほどに物を言う、格言もこの子供の前では一蹴されてしまうだろう。背は同年代から見ると高い方だろう。大通りと路地裏が交わる手前に着いたその子は周りを見回し身を屈めるようにして人波に流されるように歩き出した。数十秒過ぎたあと人と人の合間を縫うようにして子供は歩みを速めた。再び路地裏に入り少し歩いたところで子供は大通りを振り返った。人がついて来ていないことを確認でもしたのか、また早足で子供は歩き出した。


 入り組んだ路地裏を歩いて着いたのはスラム街だった。子供が足を止めたのは、今にも崩れそうで、最低限雨宿りができるかどうかという周りの家と比べると明らかに大きく立派に見える共同住宅のような作りの家だった。子供の背丈では高いところにあるドアノッカーをその子供が叩いてから少しして扉のドアスコープから人の目が覗いた。


 「暗き場所に御座す我らの主は?」


 「未だ死を知らず」


 扉が開き、屈強で強面の男が姿を見せた。そして子供はその男に連れられてその家に入っていった。


 家の中は窓ひとつないため薄暗く、廊下が奥まで続いていた。廊下を男に案内されている子供が、幾つもの扉を横切っっていったことからこの家が共有住宅というよりホテルのように部屋が配置されていることが判る。男に連れられていくと廊下を折り返すようにして階段があった。ギシギシと足音を鳴らしながら歩く前の男についていきながら子供はいつもと変わらないなと考えながら、この先で待っている人物を思い出しながら少し眉をあげるのだった。


 階段を登りきると、またも折り返すように廊下があった。前の男は廊下を少し進んだところで子供を待っていた。来たのを確認した男は廊下を再び歩き出した。一度曲がり角を曲がったあと前方の突き当たりに扉があった。男はそこまで行くと扉を2回叩いた。


 「誰だ」


 扉の向こうから中年男性の声が聞こえた。


 「あっしです。坊ちゃんが来ました」


 「入れろ」


 「はい」


 男は扉を開け子供に入るように促した。子供は男をチラリと流し見て部屋に入った。男も続くようにして部屋に入り扉を閉めた。そして、いつでも扉を開け閉めできる位置に立った。それを確認したあと、部屋にいた人物は子供を見た。部屋は豪華絢爛で贅を尽くしたような部屋だった。けれど決して品の悪いような部屋ではなく調度品や芸術品はよくその部屋に調和していた。部屋にいた人物は立派なビューローに座っていた。しかし、そのビューローの上にはこれでもかと書類が束になって左右に積み上がっていた。部屋にいた人物ーー彼は今しがた買い終えたであろう書類を右よりも高く積み上がっている左の紙の束の塔に乗せて、子供に話し始めた。


 「今回の仕事はどうだった。ナタイ」


 「うまくいったよ」


 「そうか、それは良かったよ」


 「次の仕事は?」


 「今のところはない。また必要なら呼ぶ。今日はもう休んでいいぞ。あぁ、それとこないだ言っていたやつは部屋に置いておいた」


 「ありがと」


 「気にするな。下がっていいぞ」


 子供ーーナタイは扉の横で待っていた男が扉を開けると部屋をあとにした。彼が部屋から出ると男が同じように部屋から出てきて頭を下げて扉を閉じた。


 「それでは」


 男はナタイにそう声をかけ持ち場に戻っていった。


 彼は男と同じように元来た廊下を戻り2階の階段の一番近い扉の前で立ち止まった。扉にはN.Kと刻印されたプラカードがあった。その扉を開け、彼は部屋に入った。その部屋は質素だった。日常において使うであろう最低限のもの以外の私物は一切置いていないかと思えるほどだった。彼はフードを取り、上着を脱いでポールハンガーに掛けた。フードの下から見えた彼の髪と瞳の色は黒だった。彼はその黒髪を掻き揚げ、机の上に義父に頼んでおいたものが置いてあるのを見るとそれを片手で持ち部屋に光を灯し、じっくりと確認すると再び机の上に置いてベッドの上に横になった。数分もすると寝息が聞こえてくるようになった。



 = = = = = =



 彼ーーナタイと彼を案内した男が部屋から出て行った後、部屋の人物ーーナタイの義父であり叔父はバルコニーとこの部屋を隔てるガラス扉に引いてあったカーテンの傍にひっそりと立っていた歳老いた執事に言った。


 「それで、成果は?」


 「上々です」


 「それは良かった」


 そう言うと彼はビューローの上に置いてあったグラスに手を伸ばした。そのグラスには水を表したような彫刻が施されており、ステムは持ちやすいように工夫されていた。赤紫色のワインがグラスの水を表したような彫刻の凹凸で煌びやかに光を反射させていた。彼はそれを一口飲むとため息を吐いた。そのため息は感嘆のため息か、虚しさからくるどうしようもないため息か。


 「アレは立派に育った。私の思っていた方とは違う方向にだが……。ハジリ、私があの時間に合っていたらアレは変わっていたと思うか?」


 「言っても栓無きことでしょう。確かにあの時あの二人を助けることができたらまた違う未来があったのかもしれません。けれど過去は変えられません。変える方法もありますが、その代償は計り知れないとあなたも知っているでしょう。今では彼はこの組織においてなくてはならない人物になりつつあります。彼を助けられただけ良かったと考えるべきでしょう」


 「アレはあいつらの置き土産だ。そう簡単に割り切れん……」


 「割り切る必要はありません、あなたの父も言っていたでしょう。知る必要があるのです。事実を客観的に見つめ、知る必要が……」


 「……そうだな」


 「お解り頂けて嬉しいです。あなたがそのような性格だからこそ、皆が付いてきているのもまた事実です」


 「褒めているのか、貶しているのか、はっきりして欲しいものだ」


 「もちろん褒めているのですよ。斯くいう私もその1人なのですから」


 「ふっ、そうか」


 そして彼は笑みを浮かべてグラスを口につけて傾け一気にワインを飲み干した。



やばい書きためていた分が無くなってきている。

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