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ユリカ界  作者: 碾貽 恆晟
第1部 2つの勇者の物語
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第1章 2つのプロローグ

誤字報告お願いします。

出来るだけ直します。


 バーゴジウム王国、王都の郊外。裕福層の住む一角街の家で一人の赤ん坊が生まれた。赤ん坊は、この小さい体からどうしてこんなに大きい声が出るのかと思うほど大きな声で泣いた。肌色は赤色だが、白人だというのはわかる。赤ん坊は数分もすれば泣き疲れたのかスゥスゥと寝息を立て始めた。


「今回は難産んでしたねぇ」


 と産婆が言う。


「そうなんですか?」


 答えたのはその赤ん坊を腕に抱えている母親。金色の髪にバーゴジウム王国を含む氷の大陸では余り見られない茶色の瞳。背は高く、ほっそりとした体つき。今は子供を産んだばかりなのか汚れのないきれいな服を纏っている。歳は20歳に届くかといった頃。どことなく落ち着きのないように見える。


「あぁ、次があったらわかるよ。今回よりは産むのに時間はかからないから」


「つぎっ⁉︎」


「ん?別に不思議じゃないだろう」


「そうですけど。まだ一人目の子が生まれたばっかなのでそういうことはまだ考えていないというかなんというか」


「そう。けど生まれるときは生まれるんだから一応頭の片隅にでも置いておいたほうがいいよ」


「うぅ」


 奇声(?)と呼べなくもない呻き声を発しながら顔を赤く染めたり、ふと何かにきずいたのかはっと顔を上げて数秒経てば俯いて顔を手で覆うなどしている彼女を微笑ましそうに産婆は見て「また明日見に来ます」と言い残して部屋をでた。それに入れ替わるようにして二人の男が入ってきた。


「カミラ、赤ちゃんは?」


 最初に部屋に入ってきたのはカミラの夫。黒髪に黒目、フムス帝国によく見られる容姿。背は高くもなく低くもない。体は肉付きが良く引き締っている。着ている服は家で着る用の服なのかあまり高くなさそうではない。彼もカミラと年の頃は変わらないように見える。


「見て。この子よ」


「赤子は最初肌が赤いと聞くが本当に赤いのだな」


「あら、お兄様来ていたんですか?」


「おいユズキと一緒に入っていたぞ」


 カミラに『お兄様』と呼ばれた男性はカミラと同じ色の金髪に右手をかけ処置無しとでも言いたいのか遠い目をし肩をすくめる。目の色は青く背はカミラより低く、ヒョロっとしているというのがしっくりくるだろう。黒い服に黒いズボンいかにも仕事服という感じの服で、長年使っているのだろうすこしよれていた。


「まぁ。お兄様は置いておいて、すごい鳴き声が聞こえたんだが」


「そう、この子すごい大きな声でなくって産婆のサーシャさんも言ってたの」


「おーい」


「元気な子ってことだよな?」


「どこの世界に病気でもないのに大声で泣く子が元気じゃないっていうの」


「そうだよな」


「おーい」


「なんですかお兄様?」


「いや、二人の世界に入ってしまった妹を援けださんと声をかけていたのだよ」


「必要ないので帰ってもらっていいですよ」


「いやでも」


「帰ってもらっていいですよ」


「あ。はい」


 泣き崩れる『お兄様』。


「だいたいお兄様、仕事はどうしたのですか?またハジリに怒られますよ。父の後を継いでからはましになると思っていましたが変わるどころか暴走気味だったのが暴走にまで格上げしてしまって」


「うぅ。なんで、年々僕の扱いが雑になっててる」


 『お兄様』は哀愁漂う背中姿で部屋をでて行く。


「あれ大丈夫なの?」


「いいのです。ここらでテコ入れでもしないといつまでも調子に乗ってしまいますから」


「ふーん。大丈夫ならいいんだけど」


「何か気になることでも?」


「あとで何倍にもなって返ってこないよね?」


「………」


「その沈黙は何?」


「黙秘権を執行します」


「いいよ。もうそれだけでわかったから」


「それよりも、この子の名前を決めないといけませんね」


「話をそらそうとしてない?」


「決まってるんですか? この子の名前」


「あぁ決まっているさ」


 カミラの夫は、赤ん坊を愛おしげな目で見つめ言う。


「名前はナタイ。ナタイ・カータルだよ」


「安直な理由で決めたわけではありませんよね?」


「もちろん、ちゃんとした理由はある。ナタイという名前はーー」


 二人の声が部屋に温かみをもたらしている。




 ユリカ界歴237億7468万3429年もしくはユラマ星歴1000万26年5月52日、生まれた子はユリカ界に波乱をもたらすことになる。そのことを知る者はまだいない。この世界で神と謳われる存在でさえ……。




_____________________________________




 今、見上げている空は黒が支配しているように見えた。所々に瞬く星が見えるがそれだけで、圧倒的に黒に塗り潰されている。明かりが少ない場所に行けば違うのかもしれないがあいにくここは都会といっても差し支えのない場所で、周りを見ても山一つない。勿論ビルなどの遮蔽物があるせいなのだが。少し視線を東へと向けると月が見える。数時間経てば真上にくるだろう。その月は上弦の月で満月になるまであと数日といったところに思えた。雲が薄く月の周りにある。だからだろうか月の光が雲にあたり幻想的な風景に見える。


 長い間空を見上げていたので首が凝ったので視線を空から建物立ち並ぶ地上へ下ろす。街灯や建物から漏れ出る光は空を見ていた僕の目には眩しく目を瞬く。何気なくでた溜め息は夜の静寂によく響いた。吐いた息は蛍光灯の光にあたり白く見える。ふと寒さを覚え手を擦り合わせる。


 肩掛け鞄からスマホを取り出す。LINEをひらくと『塾が終わったら返事ちょうだい。ご飯作るから』と母親から来ていた。『塾終わったよ』と返す。数秒待っていると『それじゃあ作って待ってる』と返事が来た。首を左右に振ったり、ゆっくり回すと『コキッ コキッ』と鳴った。


「う~ぃ ひっく」


 後ろを向くと、酔ったサラリーマンが椅子に寄りかかるようにして座って眠りこけている。今は10時……10分前といったところか。こんな時間にここまで酔っているのは普通なのだろうか?しかも駅の椅子で眠りこけているのはすごいと思うがあまり褒められたことでは…あまりではないか。褒められたことではないのは明々白々だ。こんな大人にはならないと心に決めようなどと考えながら電車のくる方を見るもちろん来ていないのは線路の周りの暗さからして間違いないし家などから漏れ出る光以外線路を照らすものはない。もちろん線路は200m先でカーブを描いているので確実なことは言えないが。


 数分経った頃アナウンスが流れた


『まもなく1番線にーー・ーー方面がまいります。危ないですから黄色い線の内側までお下がりください』


 どうやらやっと電車が来るようだカーブを描いている方から光が見えてきた。


「お~、来たか」


 酔っ払いのサラリーマンも起きたみたいだ。


 ふと放課後の美紅(ミク)が何か言おうとしていたのを思い出した。あの時は塾で話している時間がなかったから謝って切上げたんだけど罪悪感がある。LINEをもう一度開いて『今日の放課後何か言おうとしていたけど何だったの?』と打って送信する。


 「あぶねぇなぁ、この窪み。よっと……あぁ⁉︎」


 視界が()れた。何が起こったのか解らなかった。前屈みに倒れている。後ろにいたあの酔っ払いのサラリーマンに背中が押されたということが理解できた。無意識に右足を前に踏み出した。それでも倒れる勢いをころすことはできなかった。左足が前に出てしまった。足が絡んでプラットホームから落ちた。浮遊感が体を包んだように思えた。線路が目前まで迫っている。頭に強烈な痛みが走った。けれどその痛みは一瞬で熱いと感じた。血が流れ出ている。感覚がなくなっていくのがわかる。混濁してきた思考を必死に働かせ体に力をいれる。


 顔を上げると電車が目の前に迫っていた。『あっ』と思っているうちに俺は轢かれ、意識は闇の中に沈んだ。



_____________________________________



 意識は水中から水面に出るように浮上した。それと同時に違和感を覚えた。目を開いていないのに前が見える。そこには白い世界が広がっていた。唯々どこまでも白い世界が。上下左右、前後ろを見渡しても何一つとして物がない。違和感の正体に気づいた。それは、体の感覚が一切なく手や足が認識できないのに視界が動くということだった。しかも、俺はどこにも立ってはいない。なぜなら地面がなく、白い世界が広がっている。まるで周りが全て白色の宇宙にでも放り出された気分だった。


 俺がどんな状態かは理解できたが何故いるのかは解らない。可能性はいくらかある。


 1つ目、夢を見ている


 これなら別段あわてる必要はないが、夢ならベッドの上の俺はさぞうなされていることだろう。というかこんな夢を見るとは、俺の深層心理はどうなってるんだ?まぁそれより、これ以外だったら……これ以外だと大変なことになる。真面まともで喜べるような状況が思いつかない。落ち着け俺まだ大丈夫だ考えていればより良い考えが浮かぶはずだ。次行こう。


 2つ目、病院に肉体はあって、俺は夢を見ている


 夢オチパターン第2弾で絶対大怪我をしている。前より悪くなった。だが考えようによってはあの事故でまだ生きているということを喜ぶべきかもしれない。生きていればだが……。考えるな、次行こう。


 3つ目、死後の世界


 酷い。死後の世界がこんな殺風景で面白みの欠片もないだなんて。なんでこの場所白いんだよ、障害物が何一つないんだよ?何時までここにいればいいのさ。まぁこれの場合は何を考えたって仕方がない。保留。


 4つ目、無し


 4つ目にしてネタが尽きた。思いつかない。遂に考えるのが面倒になったのでこの議題は放棄することにした。



 = = = = = =



 かれこれ何分過ぎたのか、纏まらない思考に身(?)を任せただいたずらに時を過ごした。とは言ってもそんなに長い時間は経ってないと思うが時計なんて便利なものもないし、普段だったら感じるであろう脈すらないときた。このような状況であれば発狂してもおかしくないだろう。しかし俺は叫び出すことも周りに八つ当たりすることもできない。というか、肉体というものがない時点でどうすればいいのか考え物だが。そして、何故こんな現実逃避じみたことを考えているというとだ。今、目の前に天使(仮)みたいなのが現れたからだ。そう、天使。白い世界に黒い奈落へ続いていそうな穴が開き、その天使(仮)が現れたのだ。『もっと神々しい登場の仕方はないのか?』と突っ込みたくなったが生憎あいにく現在俺はこのよく解らない体で声を圧する方法を知らないので行動に移すことはできないし、例え声を発することができたとしても自重しただろう。それくらいの分別は持っている。なんていうかヤクザに面と向かって喧嘩を売れるのは馬鹿か同じヤクザもしくはそのヤクザでも太刀打ちできないようなやばいやつぐらいだろう。えっ?天使なんだから怖くないだろうって?そんなことないそこにいるだけで溢れ出す存在感が半端ではないのだ。そうまるで心臓でも握られているような気分になるほどの存在感というか圧倒的な気配。


 さて、そんな俺が思わず突っ込みたくなったり圧倒的な気配で気後れするような天使(仮)についてだが……容姿は後光のせいでよく見えない。だが容姿以外の姿はわかる。鳥みたいな羽が2対に頭に光輪、服は……服というより衣みたいなの、もちろん僧尼のきているようなやつじゃなくて一枚の布を縫い合わせたようなもので、何故か透けて見えそうで見えないようなやつ。男(天使)のネグリジェ姿を見て男(人間)が喜ぶわけもなく。誰得なのかよくわからない。天使の正装なのだろうか?いや、奈落みたいなところから出てきたから悪魔か?


「私という存在は天使とも悪魔とも違う。強いて言うならば神の使いといったところだろう」


 神様の使いときた。へ~天使って神様の使いじゃなかったんだ。初めて知った。まぁ俺はユダヤ教やキリスト教、イスラム教とかギリシャ神話についての知識は最近のゲームやアニメで出てくるような有名なものしか知らないので、当然天使についての知識なんて名前を知っている数名(?)いる程度だが。


それにしても天使か……、天使に会うということは珍しいというか少なくとも生者では普通できないだろうから嬉しくもなんともない、面倒ごとの匂いがプンプンする。しかもこちらの表面意識を読んでいる。夢であればいいのにとでも祈っておこうか。神様に。彼らの上司なら助けてくれるかもしれないから。


「残念ながらお前の祈りは成就しない。お前はこれから他の世界に転生してもらうことになるのだから」


 転生きたー。死亡確定しました。まぁ電車に轢かれて生きていたら逆にすごいと思うけど、それくらい願ってもいいでしょ?


「願うのは構わないがお前が地球で死んだことには変わりはないし、これから転生するのも変わらない」


 なんでそんなに念押しするするのかな?


「一番重要なことだからだ」


 はいそうですかわかりましたよ。なんで俺が選ばれてんだよ。


「それについては説明させてもらう。まず大前提として転生できるのは自分の死をしっかりと認識しているものであり、次に重要視されるのが正常な判断を下せるものだ。さらに、特殊な空間で精神的負担を起こさないようにする必要がある。肉体に魂が宿っている時より魂がむき出しになっている時は最新の注意をしなければいけないからな」


 俺って大変な状況って事か?


「案ずる事はない、力の量・制御、共にこの世界では上から数えたほうが速い私が行っているのだぞ、失敗をするほうが難しい」


 なにやら自慢をされた気がするが今は、安心できる回答を得られた事を喜ぶとしよう。


「それでは話を続けるぞ、お前には神々の諸事情により異世界ーーお前が行くのはユリカ界だな。そこへ転生してもらう事になる。案ずる事はない、お前が転生する事によって本来生まれるはずだった赤子が死ぬ事もなければ、母体が死ぬ事もーーまぁ、相当運が悪くなければない」


 そのユリカ界に転生して俺に何かしてもらいたいということなのだろうか。


 「話が早くて助かる。先も行ったように諸事情というのがあってな、全てを話す事はできないが必要最低限の事は話してやろう。とは言っても向こうに行けばいやでも知る事だ。ーーだが、心構えを作るくらいの事はできるだろう。ユリカ界、この世界はここの世界と違い魔素というのが存在する。簡単に言えば魔法を行使するための燃料だと思えばいい。さて、その魔素があるのでその世界には神や魔物が多く存在する。そして魔王という存在もある。お前に託されているのはその魔王の討伐、大雑把に言ってしまえば殺害をして欲しいのだよ」


 その世界大丈夫ですか?滅亡寸前なんてことじゃないでしょうね?


 「安心しろその世界は滅亡しない」


 引っかかる言い方だな。


「お前が転生されることになっている星が無くなることはあるかもしれないが」


 おい⁉︎だいたい何で俺なの。


 「さっきも言ったが精神が安定していること、冷静な判断ができる。これ以外のことで言えば、お前がその世界の神の加護に魂が耐えられるからということだろう。ちなみにだが世界によって魂が強くなるには方法があるが、この世界では善行を積むことだ。因みにこの善行というのは他人に感謝されて初めて善行として世界が認定する。正確に言えば世界がとは違うがこれについて説明していては長くなるので省略するが」


 じゃあ俺は善業を積んだってことか?


「いや、ただ若い魂は消耗していないというだけだ。長年生きていれば悪行をするものが多くなる。よって魂は消耗していきボロボロになるというわけだ。もちろん死んで魂の休息の場へ行けば簡単に治るが。」


 身も蓋もねぇ。そんな理由で魔王を殺害の任を受ける羽目になったのか。


「端的に言えばそういうことになるな」


 いや待て、加護ってなんだ。


「加護とは神が魂を持つ存在に送る祝福と取ってもらって構わない。お前がもらう祝福は勇者になるが、勇者も魔王も同じ神が与えた祝福を持つ存在だ。だが魔王はある特定の神に与えられた祝福のことだ」


 魔王も祝福を受けた存在ってことね。神様がそんな祝福を与えてどのような神様がそんな祝福を受けるんだ?


 神の使徒は何か考え込むような行動をしてから答えた。


「向こうの世界では常識なのでいいだろう。『破神』、破壊を司る神二柱が与える加護で、復讐を望むものなどへの祝福が一番多いい。他にもまだ他の神々に祝福を得ていない存在で強くなったものなどに与えられこともあるが。頻度で言えば10年に一体かーーいや、これでは復讐を望むもの限定だが、まぁそれぐらいの数だと思えばいいであろう。」


 多いだろ⁉︎なに?そんなぽんぽん魔王生まれてるの?


「勇者も多いから大丈夫だろう。それに勇者は魔王と違い力を強めるだけではなくそれ以外の何らかの力を授かる。そう簡単に負けない」


 因みに俺がもらう力ってなんなの?


「全ての勇者は”運命干渉不可”と”成長限界突破”だ。それ以外にその加護を与える神の特有の力を与える」


 どんな力かは選べないってわけか。


「……少しぐらいならば口添えをしてやらなくもないぞ」


 ……口添えをしてやらないこともないってことは大雑把なイメージを伝えれば後はやってくれるのだろうか?


「……まぁいいだろう」


 力、悪いイメージを持たれている神様の加護は少し遠慮したい。なので、正義を体現したような神様の加護だったら嬉しい。ただ、高望みするならば融通の効かない神様だったら尚いい。


「ふ〜、聖属性を司る神に口添えをしておこう」


 ふっ、越後屋、お主も悪よの〜。すると、まるで希少種の生物でも見つけたような顔をして天使(仮)がこちらを見てくる。


「さてと必要事項はこれで全部だな。それでは転生を始める。尚、生まれてすぐに記憶を持っている状態なので取り乱さないように」


 えっ⁉︎もうなの早くない⁉︎


「では、よりよい人生を」


 えっ、ちょ待っ……




_____________________________________




「いきましたか」


 白い世界に残った天使はひとり独白する。だが、それを聞き咎める者がいた。


「あれでよかったの?」


 と天使に聞く、その存在は一言で言うとすればは『何者でもない存在』だろう。天使と同じ見る人によって姿形を変える何かだった。ただ違うの天使ですら霞んでしまうような圧倒的な圧を感じる点だろう。天使と同じような存在でありながら一線を画す存在がそこにはあった。


「向こうからお願いされたことはやりました。強いて言えば聖サケル神へ口添えをするぐらいでしょうか」


「そうだけど」


「だいたい、これ以上私になにをやれと?」


「さぁ?」


「そうなるでしょう?」


「まぁ、君がいいならいいんだけど」


「他の世界に私たちが首をつっこむことなんてできませんよ」


「末端社員だもんね」


「貴方は私に喧嘩を売っているのですか?」


「まぁ、売っても勝てるしね」


「はぁ~。ではその末端社員に何用ですか?」


「もちろん揶揄からかいにだよ。それにしても彼、随分落ち着いていたね」


「落ち着くようにしたから当たり前じゃないんですか」


「いやそれでも落ち着いている方さ。あぁ、君は転生を担当するのは初めてだったよね」


「そうですが」


「見ていて思ったんだよ君みたいだってね」


「殴りますよ」


「末端社員が上司を殴っちゃいけないでしょ」


「今なら馘にされようと貴方を殴る勇気が湧きだしていますよ」



 二人の観客のいない漫才はこの後、同僚の邪魔が入るまで続いた。




_____________________________________




 そこは黒い世界だった。全て黒に塗り潰された世界。その世界に《ソレ》はいた。


 ”蘇ったか”


 ”この力の波動はあやつの者だ”


 ”遂に我が弟の恨みを晴らすことができる”


 《ソレ》は歓喜した。あの者の魂があの世界に新たな生を受けたことを。


 ”そのためには我が弟ーー彼奴を復活させなければな”


 ”あの者には絶望という者を教えてやろう。どうせならあの世界を壊してもいいかもな”


この作品『ユリカ界』を気に入っていただけたら嬉しいです。

評価、感想、レビューをしてくれると作者のやる気が上がる……かもしれません。

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