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第四章 バス停のてんのう

「学生でいる時間なんてあっという間に過ぎちゃうぜ」

テレビのコメンテーターが大きな声で発言している。


「若い頃の貴重な時間を、目的もなくダラダラ過ごしてどうするんだよ」


中高生に人気のバラエティ番組で、出演した高校生が

「とりあえず大学入って彼女欲しいです」

と答えたのが気に入らなかったのか、

「とりあえずってなんだよ、とりあえずって」

ねちねちと、絡んでいる。


「折角大学行ったら勉強なり運動なりに打ち込まないとさ、勿体ないよ」

他人の人生なのにまるで自分のことのように熱く語っている。


はいはい、そうですね、私達なんてとりあえず大学入ってとりあえずもう二回生の春ですからね、とあおいは冷めた目で画面を見つめる。


「なんか俺らに言われてるようやな」

テレビを見ながらぽりぽりと柿の種をつまんでいたとっつぁんがのんびりと言う。

「運動にも勉強にも大して励んでないダラダラ大学生の集まりや」


「いや待て待て」

台所の丸椅子に座って参考書を読んでいたキリオ君が口を挟む。


「俺は勉強してんで。励んでるって。お前らと一緒にすんなよ。」


「えーでもな、私ダラダラしてるのが悪いとばかりも思わんけどな」

みとさんが画面の中のコメンテーターに反論する。


「人生でこんなにダラダラできるの、きっと今だけなのに。というかダラダラの定義って何?サークルとかバイトに励んでたらダラダラしてないってこと?」


「いやそもそも大学生なんだし、勉学に励むべきでは…」とあおいは口に出してみる。


「いやだから俺は励んでるって」

「そんなら俺も明日はチャイ語(麻雀大会)の勉強会や」

「麻雀ってほんまに中国語の勉強になるん?」

「いやなるわけないやろ」

「え、じゃあ結局勉強してないやん」


わぁ、予想通り大混乱。あおいは諦めて口を噤んで、助けを求めてさゆりさんを振り返る。


「まぁ、何に価値を見出すかは人それぞれだし」

さゆりさんが静かに言う。


「今は自分がやりたいようにやればいいんじゃないかな。少なくとも私は、十年後に振り返って今の過ごし方を後悔するとは思わないよ」


少ししんみりした空気が流れる。でもその空気は長くは続かなかった。

ケンザキが珍しく玄関の方から転がり込んできたかと思うと、

「おい!そこのバス停にてんのう座ってんぞ!」

肩で息をしながら叫んだからだ。


ケンザキは普段素面な時には斜に構えて、はしゃぐあおいたちを「お前らほんまにガキやなぁ」とでも言いたげに煙草を吸いながら気だるそうに眺めているのが常だったが、たまに何かの拍子に、子供のように張り切ることがあった。


「アイツのやる気と俺らのやる気は打ち消し合うようにできとんねん」

キリオ君は常々言っていた。


「俺はな、アイツが張り切れば張り切る程な、なんかすーっと冷静になるわ」

分かる、分かる、とみんなが頷いた。


キリオ君が読んでいた参考書から目も上げずに注意する。

「ケンザキ、ご近所に迷惑やからドア閉めて」


みとさんが、オレンジ色の果物を差し出す。


「とりあえず八朔でも食べて落ち着けば?」


ふんわりと柑橘のいい香りが漂う。みとさん達の実家は、有名なミカンの産地にあり、時期によって様々な種類のミカンが段ボールで送られてくるのだった。あおいたちはそれを力を合わせてキリオ君の部屋に運び、テレビを見ながら、ゲームをしながら、もぐもぐと消費する。みとさんの手の平はミカンの食べ過ぎで黄色くなっていた。ミカンの食べ過ぎで人の手が黄色くなるなんて知らなかった。この人たちと一緒にいると妙な知識ばかり身に着いていく、とあおいは思う。


キリオ君はすっかり辟易した様子で、「俺はもうオレンジ色の物体は見たくない。なんやねん君らは、ミカンの国の王女様か」とぶつぶつ言っていたけれど、だからといって「もう持ってくんな」と言わない辺り、実はやっぱりミカンがすきなんじゃないか、とあおいは思っていた。


「てんのうってなんやねん、道の駅?」

とっつぁんが手探りの質問をする。


「牛頭天王のことじゃない?」

さゆりさんが、

「浄瑠璃の教主十二の大願ををこし 牛頭天皇とあとをたれ給ふ・・・」

と諳んじて見せる。


皆がぎょっとしたようにさゆりさんを振り返る。


「祇園牛頭天王御縁起、知らない?」

さゆりさんが恥ずかしそうに首をすくめた。


ケンザキは呆れたように首を振ると、みとさんの差し出した八朔には目もくれず、じれったそうに地団太を踏んだ。


「お前らなにぼーっとしとんねん。てんのうっていったらあのてんのうやろが!行くぞ!」


毎度のことにせよ、こいつは何を言っているのだ、という空気が立ち込める。ここまで来てようやく、皆の頭の中に「天皇」の漢字が浮かぶ。


「いやお前、皇居は東京やん。京都に来るなんてニュースやってなかったぜ」


しかしこうなったケンザキには最早何を言っても無駄であることもあおいたちは知っていた。とっつぁんが伸びをしてため息交じりに

「へいへい。ほな行きますか」

と立ち上がる。


「天皇見るついでにラーメン食いに行こうぜ。腹減って来たわ。」

「畏れ多いね、天皇のついでにラーメン」

と言ったさゆりさんに、

「いや、ラーメンのついでに天皇ちゃう?」

とみとさんが混ぜ返す。

「たまには天一(天下一品)以外がいい」

とキリオ君が控えめに主張する。


あおいたちは結局ケンザキに言われるがままに、各々靴を履いて外に出た。

めっきり春らしくなったとはいえ、真夜中の京都はまだまだ肌寒く、キリオ君が羽織ったシャツの前を掻きあわせて、「今晩も冷えますなぁ」とつぶやく。あおいたち以外に道を歩く人はおらず、ほの暗い闇の中を、車が走る音だけが響いている。目的のバス停まで、早足で歩いた。


「すっかり夜に出歩くのが癖になっちゃって」

さゆりさんが、やれやれ、と首を振りながら言う。


「健全な生活とはとても言い難いよね」

「ダラダラ大学生の上に、不健全って、もう救いようがないな」

とっつぁんが他人事のように断じる。


東大路通りに面したそのバス停のベンチは、白い蛍光灯に照らされてぼんやりと発光しているようだった。既に最終のバスが行ってしまったその暗い空間の中で、ベンチだけが舞台の上のような存在感を放っている。そこに、その人は座っていた。


白いざんばら髪に真っ白いワンピース。バス停の横をゆっくり通り過ぎながらちらりと見ると、かなり年配の痩せた女性だというのが見て取れた。背筋を伸ばして膝の上で手を組み、まっすぐに前を向いたままぶつぶつと独り言を言っている。


立ち止まって観察するわけにもいかず、そのまま通り過ぎてその先のコンビニの前で歩を止め、みとさんが至極真っ当な意見を口にした。


「おばあちゃんやん。天皇ちゃうやん。」


真夜中のバス停に白づくめの老婆が一人。


確かに珍しい光景ではあるが、それは面白がって見に行くよりはそっと目を逸らして気づかぬふりをするべき光景のように思えた。蛍光灯の真っ白い光に照らされたお馴染みの元田中のコンビニの前で、みんなは首を傾げる。コンビニの前には高校生らしき二人組がたむろしていて、こちらを訝し気に眺めていた。漫画に出てくるチンピラのような二人で、原付バイクを停めた隣にしゃがんでタバコを吸っている。高校生は早く家に帰って寝たほうがいいんじゃないかと思うけど、結局は他人の人生なのであおいはすぐに興味を失う。


他人の生き様を見て「ダラダラしてたらもったいない」などと熱血なコメントが言えるのは無責任なテレビのコメンテーターくらいだ。


「まぁ待てって。もうちょいやねん。」

ケンザキが言う。


何がもうちょっとなんだろうか。コンビニの中の時計をちらりと覗くと、そろそろ0時になろうかというところだった。


「おいそろそろ…」

ととっつぁんが言いかけたところで、老婆が動いた。


スルリ、とベンチから立ち上がり、ゆらり、ゆらり、と左右に揺れながら歩いていく。あおいたちは、引き寄せられるようにその後をついて歩いた。暗闇の中をゆらり、ゆらり、と歩く真っ白い人影は危うげで、不可思議で、みんなは夢の中を歩くように、そっとその後を追いかけた。


右に、左に、くねくねと道を曲がってその人影は歩く。京都の夜の中を歩く。

春の夜の闇は若干の湿気を含んでいつもよりも一際濃く、ねっとりとまとわりつく。近くにある養豚場の、生臭い臭いが空気中に漂っている。気づけばあおいたちは、歩いたこともないような道を辿っている。道の両側にはぽつりぽつりと、古びた木造の家が建っている。先を歩く老婆の後ろ姿は、真っ暗闇の筈なのになぜかくっきりとその輪郭を浮かび上がらせて、見失う気がしない。


遠くから犬の鳴き声が聞こえる。足音を立てないようにただそっとその後をつける。自分たちの息遣いだけが、ひそかに闇に響く。


「これ、帰れなくなったりしないよね」とみとさんが不安そうに囁く。

「最近こういう感じで異次元の世界に迷い込んだ人たちの小説読んだばっかりなんやけど」


そんな馬鹿な、と鼻で嗤おうとするけれど、あおい自身も不穏な雰囲気に抗えない。

さゆりさんも、落ち着いていながらも警戒心を漂わせている。


「こんなにくねくね歩いたら、元に戻れなくなりそう。下ってるのかな、上ってるのかな」さゆりさんが呟くのを聞いて、みとさんが「そういえばさ」と思いついたように小声で言う。


「場所の名前に「上ル」とか「下ル」とか、「西入ル」とか「東入ル」って入るの、京都に独特よね」


「北に行くことが上る、南に行くことが下る、でしょ。で、北を上にして、「東入ル」は右へ、「西入ル」は左へ。慣れちゃえば分かりやすいけど、これって碁盤の目の街並みだから成り立つことよね」


「そうすると、キリオ君の部屋はさしずめ百万遍上ル東入ル、やね」

自分たちを鼓舞するように、小声で他愛のない話を続ける。


恐る恐る後をつけること十五分、最終的に老婆が行きついたのは、今にも崩れ落ちそうなトタン張りのアパートだった。暗闇の中に不気味にそびえ立つその建物の壁は錆びて茶色く変色し、窓は、ところどころひびが入ってガムテープで補強がしてある。全体的に傾いて廃墟と呼ぶほうが相応しいその建物のドアの隣に、人の背丈ほどもあろうかというよく磨かれた照りのある看板が立てかけてある。


そこには流れるような毛筆で

「第 百 四 十 七 代 天 皇 ノ 家」

と書かれていた。


ドアがかちゃりと開いて、老婆は振り返ることもなくドアの向こうの更なる暗闇に吸い込まれていく。その後ろで、ドアがパタリ、と閉まる。

辺りに静寂が落ちる。


あおいたちはしばらく呆けたようにその場に立ち尽くしていた。これが夢なのか現なのか、どうも自信が持てない。目の前に立つその建物は、老婆を飲み込んだまま、窓に灯り一つともすことなく、ただそこに佇んでいる。


「な?天皇やったやろ?」

というケンザキの得意げな声が聞こえて、はっと我にかえる。


ケンザキはいつの間に買ったのか、お茶やインスタント食品が大量に入ったコンビニの袋を手にぶら下げていて、ドアに近づくとそれをひょいと地面に置いた。

そのまま踵を返して

「ラーメン行こうぜ」

とさっさと引き上げてしまう。


すっかり毒気を抜かれた他のメンバーは

「まぁ、うん」

「そうね」

などと適当な返事をしながらケンザキに続いて大通りがあるであろう方角へと踵を返す。


なんやったんやろうな、とでもいう風にとっつぁんが首をひねっている。

「一四七代目って、今いつの時代やねん」

とキリオ君が誰にともなく問いかけるが、勿論返事はない。


皆、キツネにつままれたような表情のまま、ふらふらと元来た道を辿る。

先頭に立って歩くケンザキを見ながら考え込んでいたみとさんが、ふと小声でささやく。


「そういえば、あおいには言ってなかったかもしれないけど、ケンザキ君小さい頃に両親が離婚して、お父さんとおばあちゃんに育てられたんだよね」


さゆりさんが後を続ける。

「お父さん、地元では結構有名な会社の社長さんですごく忙しくて、ケンザキ君ほとんどおばあちゃんに面倒見てもらってたよね」


決して模範的な生徒とは言えなかったケンザキを心配したおばあさんは、学校の面談などにやってくる度に、いつも周りの友達に、「この子を宜しくお願いします」と、頭を下げていたらしい。

「本当に優しくていい子なんですけど、口下手で。」

と説明するお祖母さんに、周りの友達は

「おばあちゃん、そいつは優しいかどうかは別にして決して口下手ではないですよ。むしろ饒舌すぎてウザイですよ」

と思っただろうが、それを口に出さない思いやりはあったらしい。


そういう時ケンザキは、照れるでもなくニヤニヤと笑いながら

「おう、さすが俺のばあちゃんや、分かってんな」

とおばあさんの肩に腕を回すのだった。


「ケンザキ君のここ、ね」とさゆりさんが自分の右眉のあたりを指してみせる。

「ちょっと傷があるでしょう?あれ、ケンザキ君のおばあちゃんがたちの悪い高校生に絡まれてた時にね、ケンザキ君がその高校生たちに自転車で突っ込んで行っておばあちゃんを助けた時の傷なんよ」


まだ中学生だったケンザキは三人いたその高校生たちに自転車で突っ込み、自分も派手に転倒して右眉の辺りを何針か縫う大怪我をしたのだそうだ。「おばあちゃんのこと、本当に大事にしてたからねぇ」みとさんが当時を思い出したのか、切なそうにつぶやいた。


しかし、ケンザキを常に心配して事ある毎に姿を見せるおばあさんとは対照的に、ケンザキの父親が友達の前に姿を見せることは無かった。そういえば、いつかケンザキが自分の父親のことを、

「アイツ金の亡者やからな」

と苦々しく口にしていたことを思い出す。


「でも、おばあちゃん、ケンザキ君が高二の時にぼけてしまって、夜中に徘徊してて段差で転んで、そのまま寝たきりになって亡くなったんよね」

あおいたちは顔を見合わせる。


いつも飄々としてるケンザキの横顔を思い浮かべた。表面からだけでは分からないこともあるのだ。そんな当たり前のことに思いを馳せる。と同時に、閃いた。


そういえば、最近この辺りで高齢者を狙った暴行事件が頻発していると、ニュースでやっていなかったか?二人乗りのバイクで近づき後ろから棒のようなもので足を掬うらしい。先週もそれで転倒してけがをした老人がいたはずだ。テレビのローカルニュースでは、高齢者の一人歩きにはご注意下さいと呼び掛けていた。おりしも元田中のコンビニの前に差し掛かった時だった。さっきからたむろしていた高校生二人組が、聞こえよがしに「あーあー、俺らの獲物やったのになぁ」とぼやくのが聞こえた。


(獲物?)


訝しく思うが、すぐに辻褄が合った。

彼らは、大人数で老婆の後をつけていたあおいたちのことを自分たちと同類だと思ったのだろう。つまり、高齢者を狙って暴力をふるい、うっぷんを晴らす不逞の輩と思われたわけだ。腹の底からむくむくと不愉快な思いが湧いてくる。


と、先頭を歩いていたケンザキがいきなり二人組に向かってダッシュすると、すごい音を立てて彼らの原付バイクを蹴飛ばした。

二人組が殺気立つ。

「なにすんねんこら」

とすごむ彼らにケンザキが

「ああ?お前ら俺を誰や思とんねん。ふざけた真似してるとお前ら狩るぞ」

と威嚇する。


とっつぁんとキリオ君が黙ってケンザキの後ろに立つ。さゆりさんは何かあった時に助けを求められるように、コンビニの入り口に近いところに陣取っている。みとさんとあおいは仕方なく、出来るだけ怖い顔をしてケンザキたちから少し離れて後方に立ってみた。

コンビニの中からタナカ君がモップを持って走り出してくる。


突然攻撃を仕掛けた来た目つきの悪い男とその一味に気味悪さを感じたのか、はたまたタナカ君のモップに恐れをなしたのか、高校生たちは舌打ちをし、

「死ねよばーか」

と捨て台詞を吐いてその場から立ち去った。


「ケンザキ君何してんの?うちの店の前でトラブルは困るよ。店長にどやされちゃうよ。この時間は僕が店のこと任されてるんだからさ」

タナカ君は眉毛を下げて苦言を呈する。すっかりコンビニの店員が板についた彼は、心なしか誇らしげに制服の胸を反らした。


「おう悪かったな。」

ケンザキはタナカ君の苦言などどこ吹く風で、ポケットに手を突っ込んで原チャリに乗って走り去る二人組を眺めていたが、やがてまた歩き出した。ポケットに両手を突っ込んで歩くその足取りは軽やかだ。


いつだったか、

「現実と折り合いがつかないんやったら、自分の周りのことからまず変えていくしかないやろうが」

とケンザキがさらりと言い放った台詞を頭の中で再生する。


少なくとも今日あのおばあさんが暴漢に襲われるなんてことは回避できた訳だ。


私たちはさしずめ孤独な老婆の護衛団って言うことか、とあおいは思う。全く、なんだってケンザキは素直に「ちょっと危なっかしいばあさんがいるから家に着くまで守ってやろうぜ」と言わないんだろう。そこまで考えて、あおいはやれやれ、と首を振る。なんでってそりゃあ、ケンザキがケンザキだからだ。シンプルなことをややこしくして周りを煙に巻いてばかりいる。これであおいが、おばあさんを守りたかったんでしょう?なんて問おうものなら、「おう流石お前、俺の高潔な人柄が分かってんな。俺は高齢者の味方やからな」とかなんとか、ニヤニヤしながら答えるに決まっている。考えただけでげんなりだ。


それにしても、とあおいは更に考える。


認めたくはないが、ケンザキと自分には共通点があるらしい。それはおそらく「孤独」を知っていることだ。

でも、あおいが周りと距離を取ることで「孤独」と共存しようとしているのに対して、ケンザキは周りと敢えて関わることで「孤独」を打破しようとしているのかもしれない。

なるほどな。と改めて思う。


だとしたら、もう少し勇気を出して周りと関われば、私もあんな風に軽やかに歩けるだろうか。


ねぇ、ケンザキのおばあちゃん、と心の中で呼びかける。おばあちゃんのお孫さんは、そりゃあ、おばあちゃんが亡くなった時は寂しかったと思いますけど、今や否応なしに周りを巻き込む立派な台風の目に成長していますよ。そして身の周りの現実を少しずつ、でも確実に変えていっていますよ。心の中で会ったこともないおばあちゃんの顔を想像する。心の中に描いたその顔は、すいませんねぇ、ご迷惑をかけて、とほほ笑んでいるように見えた。


物思いにふけるあおいの前を歩くケンザキは、もう天皇のことなどすっかり忘れたかのように、どこのラーメン屋に行くかでキリオ君と言い争っている。


「やっぱり、てんのうのついでにラーメンやね」

とさゆりさんが笑みを含んだ声で呟いた。



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