3 【私のマリル】
一ヶ月後――
僕の目の前にはどこかの城の門のような巨大な校門がある。
流石は首都ホーリーヘルズの中で最も実績のある学校だ。
真っ白な城のような校舎は、かなり古いようだ。その悠然とした佇まいは一国の王が住んでいてもおかしくなく見える。校門から始まる学園の外周には巨大な結界が張られているようだ。
関係者以外が立ち入れないようにするためだろう。万全のセキュリティーだ。
マリルと僕の横をたくさんの人が通りすぎて行く。恐らく僕らと同じ入学試験の受験者だ。
「やっぱり人多いね……合格できるかなぁ?」
いや、マリルは合格できるだろ。――というか合格は確実だ。
問題は僕だ。たった一ヶ月の特訓で大丈夫なのか心配になる。
「マリルなら大丈夫だ。僕の方が――」
その時、後ろからドドドと大きな足音が迫っていた。
「マーリールー!!」
マリルの知り合いだろうか。同い年くらいの少女がいた。緩く巻いた白銀の髪に紺青の瞳。彼女も受験者だろう。
「マリル久し振り!もう、驚いたわ。貴女まで学園の推薦を受けるだなんて。――って貴方誰よ!!」
貴方って僕のことか?確かに初対面の男が知り合いと一緒にいたら驚くだろうが、何か誤解していないか?
「何か誤解しているようだが、僕はただの居候だ。何も怪しいものでは――」
「いっ、居候ですって?!まさか1つ屋根の下で暮らしているって言うの?信じられない!私のマリルと?!」
私のマリルとは?何もお前のものではないだろう。
「イリナ!ゼインは悪い人じゃないの!この前私の家の前で倒れて――」
「マリルは黙ってて!!貴方、私と勝負をしなさい」
ふむ。何故そうなる?何もお前からマリルを奪おうとしているわけではないだろうに。
「勝負も何も、お前と戦っても意味がない」
「意味がないですって?!私とじゃ勝負にならないって言うの?」
「そういう意味ではない。お前は此処に何をしに来た?僕との勝負か?違うだろう。入学前から問題を起こしては仕方がない」
彼女――イリナは不服そうな顔をしながらも、首を縦にふった。思ったより素直ではないか。
見たところイリナもマリルと同等かそれ以上の戦闘力をもっているようだ。
「ごめんね、ゼイン」
マリルが申し訳なさそうに僕に頭を下げる。
「いや、いいのだが彼女とはどのような関係なんだ?随分と仲が良さそうだったが」
かなり古い関係なのだろう。
「妬いてるの?」
「断じて違う」
マリルは頬を膨らませる。
何かしたか?
「そう簡単に否定しなくても……、まあいいや。イリナと私はね、幼なじみなの」
――幼なじみか。それなら悪いことをしたな。イリナという少女も「久し振り」と言っていた。会うのは数年ぶりなのだろう。
確かに数年ぶりの再会で見知らぬ男といたら心配になるのも無理はない。
ならば――
「イリナ」
「なっ、何よ!」
「久し振りの再会のところ邪魔をしてすまなかった」
「――!違うわ!たっ、ただマリルが心配になっただけなんだからー!」
イリナはそう言い捨てて走り去っていった。
「ふむ、そうは見えなかったのだが...... 。僕が何かしたのだろうか」
マリルは首を縦に振った。
「今のはゼインが悪いよ」
「何故だ?」
「人がたくさんいるところで、隠しておきたいこと突いたから」
「お前もそれをいうか?」
「...... 」
なるほど。難しいことを要求するな。
これからはこういう常識も学ばなくてはいけないのかもしれないな。
空気の読めない記憶喪失の魔王__
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