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幕間書簡(1) アリアナ・カペラとナタリア・コルベ

今回からしばらくの間、『幕間書簡』をお届けします。


チェルニとネイラ様とのそれ以外の、お手紙のやりとりの様子を、覗いていただけましたらと思います。

幕間書簡(1)


アリアナ・カペラとナタリア・コルベ


〈アリオンに偽装することを隠して、心配させないように不在を知らせるアリアナと、アリアナの仲の良い友達で、近所で整骨院を営むナグル・コルベ氏の愛娘、ナタリアとの書簡〉



   ∞



親愛なるナタリアへ


 明日の早朝、急に出かけることになって、十日以上は帰ってこないかもしれないので、お知らせの手紙を出します。


 実は、うちの祖父母が、王都まで来ているそうなんです。祖父母は、夫婦で王国中を旅していて、めったに帰ってこないでしょう? この機会に会いに行って、フェルトさんとのことを、話してこようと思います。

 両親はお店があるし、チェルニは王立学院の入試を控えているし、今回は、わたしだけが王都に行きます。手紙では伝えているけど、やっぱり顔を見て報告したいから。


 女学校の先生方には、体調を崩した祖父のお見舞いのために、欠席するという連絡が行きます。他のお友達にも、先生からそう説明されると思います。ナタリアも、上手く話を合わせておいてね。(ナタリアは、うちの祖父母と仲が良いから、病気だなんて聞くと、心配してくれるでしょう? 本当は元気なので、大丈夫ですよ)


 じゃあ、また、十日後以降に会いましょう。何かお土産を買ってくるわね。



     アリアナ




        ←→




わが親友アリアナへ


 手紙をありがとう。十日間も王都に行くなんて、うらやましいわ。せっかくだから、思いっきり楽しんできてね。お祖父様とお祖母様にも、どうぞよろしく。旅先から送って下さるお菓子を、ナタリアが大感謝しているって、伝えておいてね。今年も、年末にはお帰りになるんでしょう? 楽しみにしていますって、一緒に伝えておいてね。


 それにしても、大事なアリアナが婚約するなんて、面と向かって宣言されたら、本当に病気になっちゃうんじゃないの、お祖父様? マルーク小父おじ様ほどじゃないけど、お祖父様だって、アリアナのことを溺愛しているものね。

 フェルトさんは、とっても素敵な男性みたいだし、とにかく真面目だし、街での評判もすごく良いから、アリアナとはお似合いだと思うわ。お祖父様も、フェルトさんに会ったら、きっと機嫌が直るんじゃないかな?


 わたしが素敵だと思う人は、全員、わたしを相手にしてくれなくて、好きになるわけにもいかないでしょう? だから、せめてアリアナには幸せになってほしいわ。アリアナの結婚式が、今から楽しみです。きっと、震えるくらい綺麗なんでしょうね。


 じゃあ、十日後にね。お土産は気にしなくて良いからね。



     ナタリア




        ←→




大好きなナタリアへ


 お知らせの手紙を出すだけのつもりだったけど、この機会に、前から思っていたことを書いておきたいと思います。


 あのね、〈わたしが素敵だと思う人は、全員、わたしを相手にしてくれなくて、好きになるわけにもいかない〉のは、当然だと思います。ナタリアったら、男の人の趣味が、少し特殊なんだって、そろそろ自覚してくださいね。


 ナタリアの初恋の相手で、今でも一番素敵だと思う人って、うちのお父さんでしょう? 二番目に素敵だと思うのは、女学校の教頭先生で、三番目が守備隊のシーラ総隊長さん。そりゃあ、三人とも素晴らしい男性だけど、十七歳の女の子が恋をするには、さすがに渋すぎるんじゃないかしら?

 うちのお父さんと同じく、娘を溺愛しているナグル小父様が聞いたら、泣いちゃうと思います。四番目に素敵だと思うのが、うちのお祖父様だなんて、気の毒で聞かせられないわよ、わたし。


 でも、ナタリアが、最低でもニ十歳以上は年上の人でないと、本当に恋愛対象にならなくて、その相手が独身だったら、全力で応援します。大切な親友の幸せを祈っているのは、わたしも同じよ? ナグル小父さんは……ナタリアが幸せなら、大丈夫よ……きっと。



     アリアナ




        ←→




心配性のアリアナへ


 大丈夫よ、アリアナ。最低でも二十歳以上年上の男性でないと、恋愛対象にならない……っていうことは、さすがにないと思うわ。多分。


 そもそも、マルーク小父さんが、素敵すぎるのがいけないと思います。忘れもしない七歳のとき、わたしの口の中に、いちご味の手作りキャラメルを入れてくれながら、〈アリアナと仲良くしてくれて、ありがとう、ナタリアちゃん〉っていってくれたマルーク小父さんの、かっこ良かったこと! 黙っていたら渋い男前が、フッて笑ったのよ。フッて!

 そりゃあ、七歳の女の子でも、恋に落ちるって。アリアナは知らないかもしれないけど、マルーク小父さんに憧れている子って、女学校にもけっこういるのよ? だから、わたしの男性の趣味が特殊だなんてことはないって、断固として反論します。


 まあ、あれよ。アリアナとフェルトさんの婚約パーティーを、今から楽しみにしておくわ。守備隊の人たちも、たくさん招待されるんでしょう? シーラ総隊長の部下の人なら、若くても素敵かもしれないものね。



     ナタリア

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― 新着の感想 ―
[一言] 骨の神霊術を使う人の娘が友人で更に男の趣味が特殊だった笑
[一言] お姉ちゃんの同年代との恋バナ楽しそうだな~ お友達は老け専なのかしら。家業の整骨院に来院するのも若者はいなそうだしな。年上に憧れるお年頃だろうし、頼り甲斐があって包容力にある男性がタイプなら…
[良い点] 本編も書簡もシリアスめな直後だっただけに、いい感じに意表をついてて楽しかったです(笑) ナタリア嬢ほどじゃなくても、この年頃の女の子は同世代よりは年上の方が頼り甲斐あってかっこよく見える…
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