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5通目

5通目を投稿させていただきます。


次回は7月20日月曜日に投稿させていただきたいと考えており、以降は毎週月曜日に更新させていただきたいと思っていますので、引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。


なお、『神霊術少女チェルニ 〈連載版〉』は、毎週金曜日に更新させていただいていますので、併せてよろしくお願いいたします。

レフ・ティルグ・ネイラ様


 チェルニ・カペラは、オーディル川を渡りましたよ、ネイラ様!(定型句の使い方、正しいでしょうか? 決定的な判断を下した、っていう意味のことを書きたかったんですけど。前に読んだ冒険小説に、〈遅い! おれはもう、オーディル川を渡ったんだ!〉っていう台詞があったので、一度使ってみたかったんです)

 

 前の手紙で、ネイラ様に大丈夫っていってもらったので、王立学院の入試を受けることに決めました。早速、校長先生に報告に行くと、またまた「ひゃっほい!」ですって。

 ちょっと予想していたので、今回も吹き出さずにすみましたが、校長先生はなかなかの危険人物だと思います。わたしが爆笑しちゃったら、やっぱりお母さんに叱られるのでしょうか?


 ネイラ様は、立場なんて関係ないっていってくれましたが、推薦していただいたわたしが、下位の成績だったりしたら、何かと問題だと思います。実力以上の結果は出せないとしても、今からでも準備して、精一杯頑張りますね。


 ここでひとつ、入試の内容について、質問させてください。受験科目の中の〈神霊術実技〉って、何をすればいいんでしょうか? 説明のところには、「あなたの得意な神霊術を、試験官の前で実際に行使してください」としか書かれていないんです。

 ネイラ様が受験したときも、同じ説明でしたか? あれ? 書いていて疑問に思いましたが、ネイラ様も受験されたんですか? 〈げき〉のネイラ様だったら、わたしなんて、比べ物にならないくらいの特待生でしたよね、きっと。

 もしも、ネイラ様が受験していて、差し支えがないんだったら、実技の内容を教えてください。よろしくお願いいたします。(この質問って、カンニングにはならないですよね?)


 王立学院の先生については、わたしが平民だから、扱いが良くなかったのかなって、ちょっと思っています。王立学院の生徒って、大半が王都の貴族なんですよね? そこへ、田舎街の平民の子が「特待生だけど、試験も受けさせろ」っていったから、生意気だと思われたんじゃないかなって。

 キュレルの街には、ご領主様とその関係者くらいしか、貴族の人がいないので、平民であることが当たり前なんですけど、王立学院は違うのかもしれませんね。

 あっ、こんなふうに書いたからといって、心配はいらないですよ? わたし、全然、まったく気にしていないので。王立学院に行くって決めたときから、ある程度は予測していました。

 

 ネイラ様は、普通だったら考えられないほどのチャンスを、わたしに与えてくださいました。わたしは、そのチャンスをつかみ取ると決めました。大切なのはそのことだけで、仮に小さな嫌がらせとかがあったとしても、何の問題もありません。しっかりと勉強して、黙らせるだけです。


 わたしの大好きなお母さんは、アリアナお姉ちゃんによく似た、〈儚げな美人〉っていう外見をしているのに、性格は肉食獣みたいです。「こっちがおびえて見せたら、敵の思う壺なのよ、わたしの可愛い子羊ちゃん。中途半端は怪我のもと。戦うべきときには、毅然として戦いなさい。人生、常在戦場じょうざいせんじょうの心意気よ」って、しょっちゅういってます。

 お母さんは、何と戦ってるのかな? とか。〈常在戦場〉の意味って、実は違うらしいよ、とか。そもそも子羊だったら、絶対に負けちゃうじゃない、とか。突っ込みどころは多いんですけど、お母さんの教育は身についていると思います。(このへんの事情は、そのうち書きますね。ネイラ様になら、いいと思うんですけど、一応お父さんに確認します)


 実はわたし、けっこう生意気に思われるみたいで、たくさんの男の子に意地悪をされてきたんです。(これって、内心はコンプレックスになってます。ネイラ様には、打ち明けちゃいますけど)

 そんなに大した意地悪じゃなくて、何だかんだとからかわれたり、髪の色を変だといわれたり、つまらないけんかを売られたりするくらいで、実害はないんですけど、嫌な気持ちになるのは事実です。それで、そういう男の子って、こっちがむきになって怒ると、余計に調子に乗るんですよね。

 お母さんのいうように、毅然とした態度で無視していると、そのうち何もいってこなくなるみたいです。もちろん、暴力を振るおうとしてきたりしたら、徹底的に叩き潰します。


 あれ? 王立学院の入試の話だったのに、何だか脱線してしまいました。しかも、けっこう長くなってるし。

 ともかく、わたしは元気いっぱいに、入試に向けて勉強していますので、ご安心ください。


 次回からは、楽しいことだけ書こうと思います。次のお手紙でお会いしましょう!



     生意気だと思われがちな、チェルニ・カペラより




        ←→




可愛い子羊の、チェルニ・カペラ様


 きみのお母上は、なかなか立派な騎士道精神をお持ちですね。王国騎士団の中でも、〈常在戦場〉の心意気を持つ者は、それほど多くはありません。そうであってほしいと、願ってはいるのですが。(〈常在戦場〉は、確かに別の意味もあります。きみは本当に、十四歳の少女とは思えないほど博識ですね)


 王立学院の入試は、わたしも受験しています。わたしは、内部からの進学でしたが、内部進学者も、外部入試と同じ試験を受ける決まりなのです。王都に住む貴族の子弟は、特待生には選ばれないのが、王立学院の内規でもあります。

 〈神霊術実技〉は、本当に得意の神霊術を見せるだけの試験です。勉強は得意ではないけれど、神霊術に素晴らしい才能を持っているという生徒を、学院が見逃すことがないように、実技が組まれているのです。

 

 実際には、受験生を百人ごとに組分けし、その組の全員が見ている前で、順番に神霊術を披露していきます。十四、五歳の子供たちにとっては、かなりの緊張を強いられることになるでしょうね。

 わたしは、試験官だけが見ていればいいと思うのですが、王立学院としては、別の思惑があって、公開試験にしているようです。


 ……。ここからは、少し書きにくい内容です。わたしが黙っていても、どこからか噂が耳に入る可能性もありますので、きみには正直に告白します。

 

 実は、この実技試験で、わたしは大きな失敗をしてしまいました。思い出すと、今でもため息をつきたくなるような失敗です。

 当時のわたしは、貴族社会のしがらみや人間関係が、何かと面倒でたまらず、嫌気がさしていました。入試にしても、無意味に注目されたり、便宜を図ろうとされたり、まとわりつかれたりするのが嫌で、少々気持ちが荒んでいたのです。

 実技の順番が回ってきたとき、わたしは苛々(いらいら)した気持ちを、そのまま神霊術としてぶつけてしまいました。炎の御神霊を召喚して、王立学院の校舎を丸ごと燃やしてしまったのです。


 現実の炎ではなく、幻の炎にするだけの正気は残っていましたので、実際の被害はありませんでした。ただ、御神霊の業火だっただけに、同級生となる生徒たちはもちろん、先生方にも怖がられてしまい、卒業するまで遠巻きにされたままでした。

 正直なところ、いろいろな人から距離を置かれたことで、わたしの学院生活は快適なものになりましたが、御神霊に憂さ晴らしを願ったことだけは、今でもとても恥ずかしいと思っています。


 実技の際、きみは何の神霊術を使うのでしょうか? 上の文と矛盾していることを承知でいうと、きみには思い切り、全力で術を使ってほしいと願っています。

 貴族の中には、身分にしか価値を見出せない愚か者も多く存在します。貴族が過半数を占める王立学院で、きみが自由に学んでいくには、最初に実力を見せつけた方が、手間が省けるのではないでしょうか。


 わたしの方も、回を重ねるごとに手紙が長くなっている気がします。まだまだ、いくらでも書きたいことがあるのに。とりあえず、今日はここまでにして、また次の手紙で会いましょうね。



     楽しくないことも書いてほしいと願っている、レフ・ティルグ・ネイラ



 追伸・きみに意地悪をした男の子たちのことは、この先もずっと無視しておけばいいと思います。きみは、まったく生意気などではありませんからね。

 王立学院に入学してからも、男子に意地悪をされることがあったりしたら、わたしに教えてください。さり気なく注意しておきますので。

前書きと同様の内容ですが、次回は7月20日月曜日に投稿させていただきたいと考えており、以降は毎週月曜日に更新させていただきたいと思っていますので、引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。


なお、『神霊術少女チェルニ 〈連載版〉』は、毎週金曜日に更新させていただいていますので、併せてよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] いつもありがとうございます。 ネイラ様、チェルニちゃんにデレデレじゃないですか!? でもわかります。文面からでもチェルニちゃんの可愛いところ素直なところお利口さんなところが伝わってきて、読ん…
[良い点] ははぁ、チェルニちゃん、実は、いえやっぱりモテモテですね? そして対面は1度しかないのに既にネイラ様、過保護発動してません?赤裸々な炎の鳥文通効果でしょうか。年の差ひゃっほい! [気になる…
[一言] 好きな子を構いたくていじめても好きになってはもらえない典型〜。 そして絶対さりげなくえげつない注意をなさるんだろうなと思ってますネイラ様( ˘ω˘ ) いやー試験が楽しみです!
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