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90通目

みなさま


いつもチェルニをお読みいただきありがとうございます。


〈連載版〉第四部も終盤に差し掛かっています。

そのような中、「往復書簡」につきましても、本日の投稿にて、しばらくお休みさせていただきたいと思っています。


再開は、〈連載版〉第五部のスタートに併せたいと思っていますが、詳細な日程は現時点で未定ですので、ブックマークしていただき、また、活動報告や須尾見連公式Twitterをフォローしていただけますとうれしく思います。


チェルニ書籍版第2巻や、フェオファーン聖譚曲リニューアル版の作業もあり、しばらくお時間をいただきたいと思っていますが、再開されましたらまた、よろしくお願いいたします。


〈連載版〉も、どうぞよろしくお願いいたします。

レフ・ティルグ・ネイラ様


 ……宛名を書いたところで、しばらくの間、硬直してしまいました。何を書いたらいいのか、何を書いていいのか、あんまりわかっていなくて、戸惑う気持ちばっかりが大きくなっています。ぐるぐるぐるぐる、まるでこんがらがった毛糸玉みたいです、わたし。

 人って、あまりにもうれしくて、信じられないことが起こると、喜ぶだけの余裕もなくなるんでしょうか? わたし、チェルニ・カペラは、今まで生きてきた中で、最高に混乱しているのかもしれません。


 今朝、スイシャク様とアマツ様の温もりを感じながら、目を覚ましたとき、わたしは、ものすごく幸せな気持ちでした。理由もわからないまま、楽しくて、うれしくて、幸せ過ぎて笑いそうになったところで、ようやく気づきました。わたしってば、びっくりするくらい厚かましい夢を見たんだなって。

 夢の中のわたしは、ネイラ様と並んで、巨大な満月を見上げる月船つきふねに乗っていました。そして、自分でも信じられないことに、ネイラ様に、こっ、告白してしまって、それを聞いたネイラ様は、わたしに、きっ、求婚してくれて……。

 こうして書いていても、転げ回って叫びたいくらい、図々しくて厚かましい夢ですよね。それなのに、あまりの恥ずかしさに、一気に目を覚ましたわたしに、お母さんたちがいったんです。ネイラ様からの求婚のお使者が、家に来られたよって。


 月の銀橋で、ネイラ様と会ったとき、わたしは、魂魄こんぱくだけだったんですよね? だから、いつもよりも素直で、嘘をついたりごまかしたりすることができなくて、正直な気持ちを打ち明けてしまいました。わたしは、ネイラ様のことが、好きになっちゃったんだって、告白してしまったんです。

 魂魄が身体に戻って、普段のわたしになると、自分のしでかしたことに、青くなる思いでした。十四歳の少女として、男の人に告白するだけでも一大事なのに、その相手が、〈神威しんいげき〉で、侯爵家の後継者で、王国騎士団長のネイラ様だなんて! 一年前の自分に教えたら、つまらない冗談だって、お腹を抱えて笑い出しちゃうと思います。


 でも、わたしは、本当にネイラ様に告白していて、ネイラ様……レフ様は、わたしの気持ちを受け止めて、求婚してくれました。戸惑いは大きいし、とても現実とは思えない気持ちもありますが、本当にうれしいです。これまでの生活の中で味わってきた幸せとは、まったく違う色合いで、とてもとても幸せです。


 わたしが、現実なんだって実感できるように、レフ様が書いてくれた手紙は、一生の宝物です。〈わたしの大切なチェルニちゃん〉なんて書いてもらって、恥ずかしいのにうれしくて、ベッドの上でごろごろと転げ回ってしまいました。(もう少しで、スイシャク様とアマツ様を下敷きにしちゃうところだったので、ちょっと怒られました。えへへ)

 平静を保てるようになったら、わたしも〈わたしの大切なレフ様〉とか、書いてみたいと思います。心理的にものすごく高い壁があるので、いつになるのかわかりませんが、案外すぐな気もしています。


 今日、ヴェル様に教えてもらった予定では、王立学院の入学式までに、レフ様たちが来てくれて、正式に婚約が決まるんですよね? こうして書いていても、本当に不思議で、信じられない気持ちでいっぱいです。

 レフ様に会えたときに、わたしが泣き出したりしても、心配しないでください。もう会えないんじゃないかって、無意識に諦めかけていたレフ様に、ついに生身なまみで会ったりしたら、喜びと緊張のあまり、平静を保てないかもしれないので。十四歳の少女は、わりと繊細なのです。


 では、また。最後に、王城の塔の上から飛び降りるくらいの気持ちで、一言だけ。わたしは、レフ様が大好きです!



     レフ様からもらった宝物の手紙は、すでに丸暗記してしまった、チェルニ・カペラより



追伸/

 この手紙は、どうやら、わたしが初めて書いたラブレターのようです。




        ←→




何ものにも代え難く大切なチェルニちゃんへ

 

 きみの手紙、とてもうれしく読ませてもらいました。きみが、わたしからの求婚を受け入れてくれたことは、わかっていましたが、きみ自身の言葉でつづられた手紙は、より大きな喜びを与えてくれるものですね。

 わたしを好きになってくれて、どうもありがとう。わたしの求婚を受け入れてくれて、本当にありがとう。きみの言動に浮き立つのも、きみからの返答を待ちびるのも、きみの心を推測おしはかって不安を感じるのも、得難い経験でした。〈神威の覡〉として生まれ、心を揺り動かされることの少ないわたしにとって、それがどれ程の感動であるのか、きみに伝えられたらと思います。


 平和なキュレルの街で、素晴らしいご両親と姉君に囲まれ、幸福な生活を送ってきたきみにとって、わたしと共に生きる未来は、必ずしも幸せばかりではないのかもしれません。また、可憐な十四歳の少女であるきみに、今から将来を決めてほしいと望むのは、分別のある大人のやり方とはいえないでしょう。

 それでも、わたしは、きみを望みました。きみにも、わたしを望んでほしいと願っていました。迷いなく覚悟を決めてくれたきみに、深い感謝と共に、わたしの心を捧げます。本当にありがとう、チェルニちゃん。


 求婚の使者を受け入れてもらいましたので、次は、両親や伯父、仲立ちのコンラッド猊下げいかと共に、きみのご自宅に伺います。その場で、正式に婚約の書類を交わし、王城への届出を終えれば、わたしたちは、正式な婚約者となります。

 わたしは、自分が婚姻を結ぶ可能性があるとは、まったく考えていませんでしたので、とても不思議な気持ちです。初めてきみに出会った、あの夏の日、一目できみにきつけられ、強いえにしを感じましたけれど、まさかこんな形での結縁けちえんになるとは。人と人との結びつきとは、誠に得難いものですね。


 では、また。正式に婚約が整い、発表されるときまで、今しばらくは、このままで。



     前回の手紙から、誰かに見せるのをやめることにした、レフ・ティルグ・ネイラ

(※前書きと同内容です)


みなさま


いつもチェルニをお読みいただきありがとうございます。


〈連載版〉第四部も終盤に差し掛かっています。

そのような中、「往復書簡」につきましても、本日の投稿にて、しばらくお休みさせていただきたいと思っています。


再開は、〈連載版〉第五部のスタートに併せたいと思っていますが、詳細な日程は現時点で未定ですので、ブックマークしていただき、また、活動報告や須尾見連公式Twitterをフォローしていただけますとうれしく思います。


チェルニ書籍版第2巻や、フェオファーン聖譚曲リニューアル版の作業もあり、しばらくお時間をいただきたいと思っていますが、再開されましたらまた、よろしくお願いいたします。


〈連載版〉も、どうぞよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] まてまてまてこの内容を前々回まで読ませていただと…?? なんという惚気攻撃 副官さん達にまじでボーナス差し上げて 私から胃薬も差し入れます(何名義でだ) 再開を心待ちにしております!
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