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国守の戦女神は癒しの時間が欲しい  作者: 書文
一章 運命と皇帝
6/6

6.迷子2人と1匹


僕はジセル。今日はお母さんとお父さんと久しぶりにお家に戻ってこれたから、お出かけしてたんだ。外を歩いていて、お母さんとお父さんに街並みは離れていた時と変わってないねってお話をしたら、この街にはここを守ってくれている女神さまがいるんだって話していた。顔は見たことがないっていうけど。


うーん、本当に女神さまっているのかなぁ。


お母さんとお父さんが旅芸人が来ているから観に行くことになった。芸人さんは皆凄いことをしていてビックリしたけど観ていて楽しかった。一番ビックリしたのは僕と同じぐらいの子が舞台に出て芸人さんと同じことをやっていたことだった。凄いなぁ、僕には出来そうにないよ。


お母さんとお父さんと逸れた。急に猛獣が暴れて、沢山の人が急に動き出して手をつないでいたんだけどいつの間にか離れちゃった。何処にいるのか分からないけど早く2人を見つけないと。


「お母さーん…、お父さーん。」


声を出して2人を呼んでみるけど、何処にもいなかった。もしかしたら、部屋の中に隠れてるのかもしれないと思って、色々部屋を開けていると物音が近くから聞こえた。


「…誰?。お父さん、お母さん?。」


徐々に影が伸びていって、そこから姿が見えた姿はお父さんでもお母さんでもなかった。ギラギラとした化け物だった。


僕は必死に奥の方に逃げた。食べられると思って怖くなって逃げた。でも僕がどんなに走っても全然引き離せなかった。後ろを振り向いてみると何だか笑っているように見えて必死に逃げた。


遂に行き止まりでまで追い詰められた。化け物はもう十分逃げた僕に襲い掛かるようにきたので、咄嗟に避けた。そのまま化け物は壁に激突したことで壁が壊れていた。


僕は化け物が怯んでいるうちになんとかその壊れた先に進んでみて、逃げ場を探したが、扉が重すぎて僕では動かなかった。そうこうしているうちに化け物は僕を今度は逃がさないように隅へと追い込んだ。


「うう。誰か、神様、助けて。」


今にも化け物が僕に大きく口を開きかけたとき、重厚な音を響かせながら先ほど、奥の暗闇から女神さまが現れて、こちらの方を見ていた。



====================



扉はノックしてから入る。偶にこれを忘れてしまうと驚かれたり、やけに静かになる。


緊急事態で忘れていたけどそりゃあ怒るよね。シュトゥラもよく見れば泣いている少年もこちらの顔をじっと見るわけだよ。やれやれだ。


「グルルゥ」


ひえっ…ごめん、そんなわけないよね、ついつい目の前の現実から背けてしまっただけなんです。


壁を背にしている少年の反対側はどうやら表の通路と繋がっているみたいだからシュトゥラに襲われた少年は建物の裏側に逃げてきたということになる。そして、絶体絶命なところに私が現れて、現在に至ると。


また考え込んでいると少年と目が合う。助けに来た物語の英雄みたいな視線を受けているのだが、そんなことはなく、ただ新しい餌が迷い込んだだけなんです。だからそんな過度の期待をしないでください、少年よ。


シュトゥラはこちらが動かないのを判別したのか、再び、少年に顔を向け、その顎を大胆に開いた。


「…助けてっ。」


少年の怯える声と共に心地良く喰らおうとし、その牙を少年に突き立てようとしたが、ガキンッとした音と共に弾かれた。


何が起こったのかわからないまま何度も噛みついていたが、何度やっても喰えないシュトゥラはようやく少年の目の前に先ほどまでなかった半透明の薄い板が少年と自分を隔てているように存在しているのに気が付いた。


足で叩いてもびくともせず、ならば板がない空間から噛みついていやろうと考えたが、移動するように板が阻んでくる。苛立って何度も噛みついたりしたが、同じことの繰り返しだった。


何故と思考に浮かんで右にいる女を見る。


「…ふっ、ばれたな。」


「グラァァァァ」


猛獣が怒声をあげて、今度はこちらに襲い掛かってきたので、同じように2つ目の半透明の盾を出現させ、私自身は横に飛び去り、猛獣を盾ごと壁に激突させた。猛獣は壁一枚向こう側に再び突っ込んでいったので、その間に少年を抱いて急いで通路の方へ逃げ去った。


うわぁ、絶対ばれたわ。さっきまで空気みたいに扱われて良かったのに。後ろを少し振り返ったら、こっち側の道に戻ってきて、後ろから追いかけながらめっちゃこっち見てるもん。


私のこの魔法武器というか魔法具は頑丈な盾を張れるのはいいんだけど私の目の届く範囲しか張れないし、張れる大きさには限度がある。それに半透明だから姿丸見えなんですよね。だから、盾を張ろうとしたときは戦場でも「あいつだ!」ってすぐばれるんだよ。しかも、こっちを血眼で見てきたときの目って以外に心臓に悪いんだよね、ハハハ。


さて、しばらく、追いかけっこしたわけだけど舞台中央まで走ってやってきたようだ。どうしようか、もう、体力が無くてこれ以上抱えては走れないし、距離も縮まってしまった。


「…少年、ここからは1人で行くんだ。」


「でもおねえちゃんは?」


「私は取り敢えず、大丈夫だ。…いや、出来ればもし私と同じ服装をした人を見かければ私のことを伝えてくれると助かる。」


「危ないよ。」


「心配はすることはない。自分の命を最優先に考えるんだ、いいな。」


「…わかった!。はやく呼んでくるね。」


そう言うと少年は入り口の方へ走っていった。結構、素直だね。最近の少年は。


私の弟のあの頃はまったく以って反抗期な可愛くない子供だったよ。姿が見えなくなった頃、逆にもう1匹の方が追いつき姿を現した。相当鼻息が粗く、あからさまに邪魔をされてお冠なようだ。


うううぅ、怖いし、逃げたいんですけど。でもここで止めとかないと被害出るからなぁ。はぁ、普通に責任感に重責がのしかかるんで頑張ります…。


「グラァッ」


「(ひえぇ)」


「ガアァァ」


「(うぅ)」


どれくらい時間が経ったのか、いや、実はそれほど経っていないのかもしれない。それでも猛獣は噛みついたり、爪を振ったりして攻撃してくるが、すべて盾が防いでくれている。


物理的損傷はなくて安全なのはいいけどガリガリと摩擦の音が鳴ったり、吠えたりするので私は精神をガリガリと削られて精神的損傷を受け始めている。


うわぁ、鋭い牙がズラリ。


早く…、早く、助けに来てぇぇ。ルギエぇぇ、シャウラぁぁ。




====================



シュトゥラは焦っていた。いくらやっても攻撃は女に当たりやしない。邪魔な壁が全てを防いでしまう。しかもそこには威風堂々と立ち尽くしてこちらを何とも思わない目で見ている獲物がいるだけ。


いい加減、倒せない奴より先ほどのように自分を恐れているような奴の方が良い。そうしようと判断したシュトゥラは目の前の獲物からさっさと先ほどの人間を追おうと行動したとき、獲物の向こう側からそれまでに感じなかった濃密な気配が混ざったようなものが近づいてくるのに気が付いた。


「おーい、どこにいるんだ!。早く出てこーい。」


「フォルー。」


目の前には2人組の先ほどの奴と同じぐらいの奴と小さい奴が何かを発しながら、ゆっくりとこちらに気づかずに近づいてきた。ようやく、腹が満たされると思い、餌が向こうからやってきたことに歓喜した。まずは簡単に小さい方から喰らってしまおうと考え、襲い掛かった。


「ガアァァ」


「あ、フォル見つけた―、ん?。邪魔しないで。」


「…ァァ、グゴォォガァ!?。―グベッ。」


少女と呼べるほどの自分と比べると倍以上の体格があるはずの襲った猛獣は抵抗もする間もなく横腹に衝撃が走り、吹っ飛んだ。そして、そのまま音を立てて観客席に落下した。


席付近を破壊し、粉塵が舞う中、地べたを舐めることになった猛獣は一体何が起こったのか見当がつかなかったが、先ほどまでいた場所に目を向けると小さいのが持ち上げた足を降ろしているのが見えた。


まさか、あれが蹴り飛ばしたとでも言うのだろうか、あの小さいのが。


「あいつは…。気配が随分と違うが、あれか、暴れていた猛獣か?」


「そうなの?。」


「はぁ、シャウラは興味がないことはすぐ忘れるな。おそらく間違いない、さっきまで火の輪をくぐっていた猛獣だ。何故か気配は違うが。」


「つまり、邪魔者。せっかくの至福を邪魔した奴は消す。」


「まぁ、少し待て。シャウラはさっき舞台で活躍しただろう。今度は私の活躍の場を設けてもいいと思うんだがな。だから今回は譲ってくれ。」


「…ん、仕方がない。じゃあ、先にフォルところに行ってる。」


「ああ。私もすぐに行く。」


2人は何かを言い合った後、小さい方は走って行った。早く離れなければ、これ以上、摂取しなければ、この体ではこれ以上は持たない。少しばかり、ダメージを負ったが幸いなことに小さい方は攻撃したことを気にしている素振りはなく、離れてくれた。ならば、早く外へ出なければ。


「おい。何処へ行くんだ。まだ終わっていないぞ。」


大きい方が何かを言っているが、一刻も早くここから離れなければ。そう思っているのに体は一切そこから離れられない。まるで自分の重さが倍以上になったような気分だった。というより圧のようなものが大きい方から感じられた。


「獣に何か言っても言葉は分からないだろうからこれから言うことは特に気にするな。…私とて褒められたいものなのだ。偶には活躍を見てもらいたいものなのだ。まぁ、我ながら個人的な感情で恥ずかしい限りだ。」


大きい方はこちらに歩く速さでゆっくりと近づいてい来る。その目から離すことが出来ないでいる。離せば自分がどうなるのかが分からない。


「…さて、お前は1つ罪を犯した。お前はあろうことにもあいつを脅かした。お前ごときが触れてよいものじゃないということだ、獣。私からは以上だ。何か言い残すことはあるか?。時間は掛けられんのでな手早く―」


「グガァァァッ」


「ふむ、そうか。少しは感じる部分があるかと思ったが…、やはり何を言っているのかさっぱり分からんな。」


なんとか動けるようになった自分は全力で襲い掛かった。だが、何故だろうか。この大きいといっても自分の体格と比べたら小さいはずなのだが、それよりもこいつを見下ろすには随分と遠いような。それに何故、見下ろしている先に自分のからだ、が―。



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