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国守の戦女神は癒しの時間が欲しい  作者: 書文
一章 運命と皇帝
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4.勘違いは勘違いを生む



残念ながら、部屋の空気も重いままで会談は終わることなく、私の吐き気も続行中であります。


「帝国は一体何をお考えでこのような馬鹿げた内容を確認もせず、こちらにお出しになったのか。お伺いしてもよろしいでしょうか?、クリス・ディ・アストガリア殿。」


「侍従ごとぎが敬称をつけないとは躾がなっていないな。」


「野蛮な帝国の山賊崩れに言われてもねぇ。」


「何だと、もう一度言ってみろ、女。」


「まぁ、怖いわぁ。ふふ。」


「静まれ、セイ。どうもこちらのものが失礼した。先の質問であるが、こちら側の最大の譲歩だと思ってもらえると。何かお気に召さないことでも?」


「ええ、何故、負け越している侵略者ごときにこちら側から人質を出さねばならないのですか。それも王国の守護神であるフォルトゥナ様を。」


え、私の王国の見方ってそうだったの?。みんな騙されてるよ。本来の私はただ突っ立ってるだけの案山子で守護神ではないんだよ。精々、畑を守るぐらいしか能がないんだよ。後、めっちゃ、悪口言うね、みんな。さっきから敵意剥き出しなんだけど。


それにしても、王国の防人もどきから帝国の人質になるとか、私の人生の変わりようが激しいよ…。王国の技術を奪われないように帝国の進行を防いできたのにね。人質ってもっと高貴な人がやるんじゃないの?、王族とかお偉い貴族のご令嬢とか。


たとえ、市井生まれの私を引き渡しても何もあげれるものはございません。畑とか家とかは親権で私のものではないし、いずれにしろ、それらは弟に引き続かれることだろう。砦の調度品は四人が揃えたものだし、私の給与はお小遣い制だから、手出しはできません。というか人質は普通に嫌です、他を当たってください。


このままではいけないと思い、私からもお断りの言葉を直接言おうとして、気が付いた。

そういえばさっきの惨劇に怖気づいて呼吸してなかったわ、私。

取り敢えず、内心で慌てていた私は何故かほとんど吐く息もないのに息を吸うのではなく、先に息を吐いてしまった。


「フッ…。」


「何かおかしなことでもありましたか、フォルトゥナ殿。」


なんか軽く息を吐いて吸って整えようとしただけなのに、この場にいる皆の注目が私に集合している。別にわざと笑ったわけじゃないんです。ちょっと、間違っただけなんです、何か言い訳を、ええい、儘よ。


「何がとは。私は人質としては利がない。」


「そうでしょうか?。フォルトゥナ殿のこれまでを拝見すれば、十分だと思いますが。」


「私が人質では条件に釣り合わないと言っている。」


「それは…。また豪胆なことですね。」


「何か間違っていますか、皇子殿」


私は率直に伝えた。私なんて市井生まれの価値のない人間なので考え直した方がいいですよと。差し障りのないように伝えたし、間違ってもいないはず。クリス・ディ・アストガリアは私の助言に少し口元に手を当てて考え込んでいたが、しばらくして考えが纏まったのか元の笑みを持ち直した。そして、こちらに再び向いて話し始めた。


「なるほど、確かにこれだけではフォルトゥナ殿も納得しないのも確かです。今回の和議の内容を、再度、練り直すことにします。ですので今回は今回話した和議を帝国は望んでいることと和議が結ばれないその間は停戦協定を結ぶということ、2点に留めることにします。これで如何でしょうか?。」


「別にこちらは戦っても良いぞ。」


「ルギエ。…皇子殿、それでよろしいかと存じます。」


どうやら、自分が如何に愚かなことを考えたのかを分かってくれたらしい。ようやく、納得してくれたらしい。それから、私は停戦協定の契約に署名をし、手渡した。もちろん、ルメリの確認ありきの署名だ。目を見た感じ、了解していたので何も変なことはなかったのだろう。


「…ではこれから用がありますので…。失礼致します。」


私は兎に角、外の新鮮な空気が吸いたかったので、用件を付けて出ることにした。特に何も言われなかったが、私が動くと後ろの四人も追従してきたので、速足でさっさと部屋の外に出た。




外に出てからやり切ったに等しい私は再び、その足で執務室まで戻ってきた。ここならば、誰にも見られずに素が出せる。疲れ切った私はそのまま近くのクッション付きの長椅子にダイブした。


「ようやく、会談が終わった。もう、疲れた…。」


「フォルトゥナ様、いくら我々以外が見ていないとはいえ、はしたないですよ。」


「今日はいいじゃない、ルメリ。」


そうだ、そうだ、もっと言ってやれ、レイア。グエッ!。


「フォルー、大丈夫?」


うぐぐっ、シャウラか。結構なスピードで突っ込んできたのね、乙女が出しちゃいけない声が出たんですけど。そういえば、私の作り口調も最近は日常ぐらいに使えるようになってはいるが、会談でも中々、上手く使えた気がする。あの時のルメリの扱きは怖かったなぁ。まぁ、他の人にこんな弱っちい性格を気づかれないに越したことはないしね。はぁ、疲れたときに抱くシャウラの大きさはピッタリだわぁ~。


「それにしても、あの帝国の奴らとやらは曲者だな。試しに殺気を当ててみたが、表情一つ変えなかったな。」


「ええ、それにあのクソおう…、あの皇子はフォルトゥナ様を要求してきた変態です。必ずや排除せねば。」


殺気当てるって何?、ルギエ。私が震えていた時に何してるのさ。なんか達人みたいな響きだけど、誰でもできるみたいな風にさらっと言わないでください。ルメリはルメリでクソはダメだよ、クソは。っていうか今、排除って言った?。


「まぁ、排除は兎も角としてあの皇子の弱みを探してはいるんだけど、どういうわけか物種になるものがないというか。ずばり、交渉材料がないのよね~。隊長が変なのに好かれて困っちゃうわ。」



私もレイアが集めた第二皇子クリス・ディ・アストガリアの情報は見た。アストガリア帝国の現帝の第二嫡子であり、現継承権第二位である。母親は側室として現帝に使えていたが、クリス・ディ・アストガリアが5歳を迎えた時に死去。死因は不明。母が亡くなった後は学問に剣術と深めた。後に騎士団へ入団。若くして戦場を駆けた黒い鎧を評して『死神』という異名で呼ばれるようになった。18のときその功績から騎士団長に就任しその後、前帝から現帝に王が変わったことで今まで隠していた皇子としての活動をし始めることになった。そして、その頃、私も苦労の日々が始まっていた。


「それにしても、なんで私なんかを選んだんだ?。」


みんなが言う通り、実はとち狂った変態っていう説は否定したいところだ。


「はぁ、フォルトゥナ様は自身の価値を分かっておられません。それにこの国の守護の象徴までになった御方が帝国に渡り、そのまま和議を破られでもしたら兵の指揮はがた落ちです。」



「フォルは渡さない、ムゥ…。」


そんなこと言われても、私が普段やってるの突っ立ってるだけなんですけど。目立つところにいるから射程とか関係なく、撃たれて怖い目にあってるだけなんですけど!。なんか、みんながやれやれと困った奴を見る目をしている。もう、癒しはシャウラだけだよー、ずっとこのままでいてね。


「まぁ、今日は疲れたし考えるのはやめよう。それにもう会うこともないだろうし。」


「何をおしゃっているんですか?」

「何を言ってるんだ?」

「何を言って…。まさかねぇ。」

「?」


「え、今回で終わりなはずだろう?。」


みんなと私で食い違っているみたいなんだけど、なんなの?。後、シャウラを除く、三人は何故、溜息を吐いているの?。


「てっきり、先延ばしの考えがあったのかと思いましたが、私の見当違いでした。いいですか、フォルトゥナ様、あの皇子は今回あなたを納得させる材料がなかっただけで引いたわけではないのですよ。しかも、王国の上層部に対しても働きかけている様子ですし、しばらくしたらまた来ますよ。」


「…。」


また、あの笑みを見なければならないのか。

この先の不安で吐きそうだ。



====================



帝国の駐屯地までの道のりを馬に乗った多数の騎士たちと一台の馬車が進んでいる。馬の蹄が土を蹴る音と車輪が輪る音が聞こえる中、馬車内で騎士が話しかけた。


「クリス様、あれは危険でしたね。いつ襲い掛かられるか、猛獣の檻にいるのかと思いましたよ。」


「少しは口を慎め、グリンガム。」


「分かってるつもりなんだけどなぁ。つい、ね。」


紅印の鎧を着た男、グリンガムに蒼印の鎧、セイが窘めた。


「まぁ、グリンガムの言いたいことも分かるからそう怒るな、セイ。」


「いえ、これぐらいが丁度いいと思われます、殿下。ほっておけば図に乗ります。」


「そりゃねぇぜ!」


そうあしらわれたグリンガムという男は不貞腐れたように手を頭に置いて上にそっぽ向いた。


「これからどうなさるのですか、殿下。」


今度は白印の鎧を着た女性が問いかける。


「そうだね、何とかして手に入れたいところだ。僕の夢を叶えるためにも。それに彼女はは王国には惜しい人材だ。」


「惜しい人材ですか?。確かにあの中で最も異彩な方でした。それに王国では守護神などという異名もありますが、国からそれなりに離れた砦に就任させるなど…。」


「そうだな、まだ僕たちの知らないことがあるのだろうな。」


これほどの宝石とも思える価値を国境に配置するなど。いや、それとも彼女自身がそのように導いたのか?。


僕は馬車の窓から空を垣間見る。空は曇っており、少しばかり暗い。もしかしたら雨が降るかもしれない。暫くした後、雨音がポツポツと次第に降り始め、馬車を濡らし、曇り空の向こう側から雷が鳴っている。その中を帝国の騎士団の一行はそんな悪天候の中、走り抜けていった。


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