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国守の戦女神は癒しの時間が欲しい  作者: 書文
一章 運命と皇帝
3/6

3.息が詰まる



こんな凄い侍従に囲まれている私といえばただの市井育ちの一般人でして取り柄といえば屋台の串焼きで当たりを引くのが、得意だったり、掃除が得意だったり、まぁ、私は小物です。

因みに私の魔法武器は防御型で見えない防壁、シールドを発動できるものだ。形状は腕輪型になっており、1つでは心もとないので右左の両手首、両足首、後は軍服で見えないようにはなっているが、実は首にも付いている。

最初は私も戦おうとしたんだけど、銃は的から外れるし、剣は手からすっぽ抜けた。幸いに4人以外には見られておらず、これを期にただ、突っ立っておいてくださいと念を押された。私はそれで本当にいいの?と聞くと私が突っ立ているだけで勝利するので大丈夫とのこと。実は私ってすごい人だったのとその時は思ったけど、後々よく考えてみたら、それただのお守りとか神像とかの感覚じゃないだろうか。うん、きっとそうだね。


そういうこともあり、私は戦場の中、今日も生存しています。帰らせてもらっていいですか?。はい、ダメですよね…。そんな考えに陥っている間に小さな咳払いで意識を現実に戻された。クリス・ディ・アストガリアは既に向かいの席に座ってこちらの様子を笑みを浮かべて見ていた。。



「コホン、改めまして帝国第一騎士団団長であり、アストガリア帝国、第二皇子クリス・ディ・アストガリアと申します。どうぞ、クリスと愛称でお呼びください、フォルトゥナ嬢。」


「嬢とはまた…。クリス・ディ・アストガリア様はこの砦の主である総指揮官を侮辱しているのでしょうか」


「いえいえ、他意はないのです、アルバート伯爵令嬢。ご不快な思いをさせてしまったのなら、お詫び申し上げます。」


なんか私が第一声って大事だよねとか考えている間にすでに火花が飛び散っているのは私だけが見えていのかな。もう、この二人でやればいいじゃん、きっと二人とも気が合うよ、だから帰らせて。というか相変わらずの貴族スマイルの割にはルメリさん怒ってませんか?、礼儀作法を教えている時よりも気配が怖いんですが。

それといつ私この砦の主になったの?。私の上司は一応まだまだ、現役のおじいちゃんだけどさ、たまに砦内歩いて会ったら、お菓子くれるんだよね。後、給仕とか砦の掃除とか積極的にやっているご老人だぞ。苦言を申すとすれば、私はメアリーではない、メアリーって誰なの?。


「ルメリ。今は会談中だ。お前がでしゃばる時じゃないぞ」


「…そうね、申し訳ございません、どうぞ、フォルトゥナ様」


「ああ」


ルメリとクリス・ディ・アストガリアの睨み合いを止めたのはルギエだ。本来ならルギエよくやったと褒める時なのだろうが、今はルメリが進行していれば少しは考える余裕があると計算していたんだ。というか咄嗟に出た言葉が「ああ」ってなんなの。でもこの二文字は肯定とも取れるし、謙遜ともとれるからいいよね、ルメリ。後、レイア。後ろで隠れて笑っているのは不問にするから今すぐやめて、恥ずかしいから。


お茶を含みつつ、その揺れる波紋を眺めて休憩する。やっぱ私こういうのは向いてない気がするよ。ルメリとかレイアの方がお話も円滑に進みそうだから今からでも変わらない?


ん?そういえば視線を目の前から感じる。目線をお茶に合わせていたから気付かなかったけど、そんな―。私が目線を上げるとクリス・ディ・アストガリアがこっち見てたわ…。

ひえぇ、見てるぅ、こっちにその笑顔向けないで、目が合ってるからなおさら怖いからぁ。そんな思いは通じず、クリス・ディ・アストガリアは話しかけてくる。


「そうですね、テュケー嬢では先ほどと変わりませんし…。ではフォルトゥナとお呼びしても?」


「いきなり呼び捨てとはいい度胸ですわね、クリス・ディ・アストガリア」


「先ほどから聞いてみれば、無礼ではないのか、貴様ら。」


「貴様らに貴様ら呼ばわりされる筋合いはないぞ」


「小娘が口が達者じゃの。」


「あら、その小娘たちに会談を持ち掛けてきたのは何処の誰だったかしら?」


私が硬直している間になんか火種が飛び散ってるんですけど。いつからここは戦場になりかけてるんですか。

あの妙齢のおじいちゃんって第一騎士団の元団長で現副団長じゃなかったけ。何でそんな猛者と喧嘩売ってるの、特にルギエは。もしかして挑発して戦おうしてない?、やめてください、特に私が危ないからやめて。あなたの騎士道精神は何処へ消えたのよ。

はぁ、唯一の癒しは暇だからといって私の髪を弄っているシャウラだけだよ。堂々としすぎじゃない?、その鋼の心を私にも分けて。


というか話を変えないと、ひどくなる一方だしなぁ。



「会談中だけの呼び名だ。好きにして構わない。」


「…!。ありがとうございます、ではフォルトゥナ殿と呼ばせて頂くことにします。」


「「…」」


取り敢えずは静まったはいいものの多少、剣呑な雰囲気は今だ漂っている。

今の発言は良かったのだろうか。

不敬だったのか分からない、後、その笑顔はなんなんだ。後で処するっていう顔ですか、皇子様。

退職したら必ず謝罪するので命までは許してください、あの時はこうするほかなかったんです。



「いやはや、私の部下たちに力量も負けず劣らずのフォルトゥナ殿の部下はあなたのことを大層お慕いしていらっしゃるご様子。あなたの人徳の為すところでしょう。」


「そんなことはない。」


「ご謙遜を。」


はい、そんなことはないです、謙遜でもありませんー。私がそんな人徳を持っていたのであれば、彼女たちに毎日、扱かれながら働くこともないし、さらに私が今、ここから抜け出すぐらいの算段はとうの昔にできていることでしょう。さながら、私は四人家族の家庭に飼われているリード付き犬というのが、正しいのかもしれないな。



「ふふふ、やはり惜しい御人ですね」


「?」


なんか少し含み笑いをしながら、クリス・ディ・アストガリアが小声で口ずさんでいたが、私には何ていっていたのか聞こえないし、分からない。帝国の騎士団の方々はギョッとした顔でクリス・ディ・アストガリアを見ていたけど…。



「ではあまりお時間を取っても、悪いようなので要件をさっさと済ませましょう。我々は貴国と和平を結ぶために今回、会談を貴国に設けて頂きました。」


「そうですか、因みに和議の条件とは。」


すかさず、ルメリがその和平の内容を問い質す。


「セイ、書状を。」


クリス・ディ・アストガリアが後ろにいる部下の一人、蒼の紋章が付いた黒鎧を着た人物、セイと呼ばれた人物に持参してきたであろう書状を読み上げるように指示を出した。



現在、聞いている限りで内容を要約すると、帝国側は王国と和議を結いたいという内容。長い間の睨み合いの仲を解消したいとのこと。和議の条件には帝国での商業権に関税の譲歩など、かなり王国には有利な条件がそろっていた。


私も、あれ?、これは私にとっても、とてもいい案件なのではないのか?、戦いから解放される絶好のチャンスだぞ、これ。王国も潤って国民も安心で私も万歳平和だ!。誰も後悔しないよと喜んでいた。最後の条件を聞くまでは。


それを聞いた途端、背筋が凍った。後、私の後ろで何が起こっているのかは想像したくないが、稚拙な言葉で表現するので聞いてほしい。

取り敢えずヤバい。何がヤバいかというと急に強烈な圧が出たかと思えば、濃厚な怒りが発生し、さらに淀んだ嫌悪が現れ、最後に静かな殺気が残った。

外で待機している者たちが随分と騒がしくなっている。やたらと鳥の鳴き声が耳に響く。あの中には王国側の騎士と帝国側の騎士もいたはずだが。

それにしても、クリス・ディ・アストガリアと後ろの方々はよく平気な顔でいられますね、私は足が小鹿でガクガクです。お茶をソーサーに戻す手が震えないだけ頑張ったと褒めてもらいたい。


彼女たちがこうも感情を剥き出しにした和議の最後の条件が、私が一体何をしたんだという内容だった。


『レノール王国 第八騎士団団長並びにフォートン砦総指揮官 フォルトゥナ・テュケー殿の帝国への身柄受け渡しを要求するものとする。』と。


なるほど、私の役職名ってそんな感じなんだ~。とか現実逃避していたが、肩をポンポンと叩かれるように現実は見逃しくれなかった。

ごめん、これでも乙女だからこういうのは言わない方がいいんだろうけど、吐きそうだ。

お手洗い行っていい?


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