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国守の戦女神は癒しの時間が欲しい  作者: 書文
一章 運命と皇帝
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1.退職したい


世界四大国を担う二国、西側に位置する王国レノール、対して東側に位置する帝国アストガリア、その両国は現在戦場にて睨み合いの硬直状態が継続している。その戦いは二国間の短距離直線の中心に位置する国境フォートンにて繰り広げられていた。だが、今現在は魔法武器や銃火器などの激しい攻防の音はなく、その王国側の砦に姿を現した者に目を奪われている。


王国には美の化身と謳われながら、戦場に舞い降りる戦女神がいると聞く。

髪は月光を浴びてなお、輝きを増す白銀色の髪、白磁の肌は眺めるだけで陶酔することだろう。さらに頬に淡い朱が挿すことで一層美しさを高める。その薄桃色の唇からはどのような声が響き渡るのか想像ができない。瞳は漆黒すら取り込まんとする黒曜石すら思わせる黒色、それは夜空の黒のようで白銀色の髪と相まって月の女神なのではないのかと幻想を抱く。それが帝国の兵たちを砦の上から無感情な目で見下ろす。


その者の名はフォルトゥナ・テュケー、天すら従える戦女神である。軍服を着たその者は従者であろう4名の配下に淡々と命令を下した。命令を下した張本人は配下が動き出してから動き出した戦場に再び、顔を向け、後はただ同じ無感情な目でそれを眺めていた。




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だるい、なんかめんどくさい、というか普通に一般家庭を充実したい。飲食業で給仕をやるもよし、書本屋で整理をしながら、売り子をするもよし。そして、いつかは一般男性と結婚して幸せを育み、猫かはたまた犬かそれとも小鳥かとりあえず日々を癒してくれる動物を飼うんだ。さらにさらに順風満帆な人生を送り、見送られながら老衰する、そんなすばらしい日常を目指したい。


憂鬱な考えを抱きながら、速足で執務室の扉を開ける。それはまさに「白」と体現する程の白色の壁や金調の彫刻が施された白いテーブルに椅子など一面中に白が広がっている。そんな白い執務室に入ってきたフォルトゥナは奥の中央に位置する清楚な白い椅子に座り込んだ。


後ろに視線を感じて、ゆっくりとこちらに刺さる視線の先の方に顔を向ようとすると、顔が半分ほど左回転したところで頭頂部に右手をのせられて首ごと動きを止められた。そのまま片目で右手の主を見ることになり、『余計なことはしないで』という思念を発せられたまま、強制的に顔の方向を元の定位置に戻されたので背筋を伸ばしてじっとする。


そして、その後すぐに目の前には赤色のお茶が入ったティーカップを静かに置かれた。しばらく、お茶に手を付けないでいると、靴の踵で床から音を鳴らし始めた。くっ、私に一体どうしろと言うんだ。反抗的な態度をとってもまた無言の圧がかかるだけなので背筋を正したまま音を立てずにお茶を含む。一つでも音を立てようものなら、結局、圧が飛んでくるので困ったものです。くっ、本当に一体、私が何をしたって言うんだ。



私は元々、市井育ちでそもそも、戦争とは縁もなく、武器なんて持たされることもなかった。持っていたとしても鉄製農具が精々、私が持った一番重いものだろう。戦いの心得なんてちんぷんかんぷんで、畑を耕すことしかない筋力と頭の持ち主である私が何故、お国様の最前線で総指揮官なんて役職に就き、戦場で指揮を執っているのだろうか…。



そもそも、私、軍事志望なんて一言も言ったこともないし、欠片とて願ったこともない、考えたこともなかった。

そもそも、両親が大金をはたいてまで私に学を学ばせようとしてくれたのが、始まりだった。

両親の思いを一身に受け、私は学院に入学し、両親のためにも必死に勉強した。

ちなみに両親が勝手に応募していたので学院名ぐらいしか知らなかったのだが、そこは王立アザール騎士学院という市井の者から貴族まで果てには王族も通うということで有名な騎士育成所なのだそうだ。しかし、騎士になれるのは一握りの話で一般的には市井の学の質を上昇させる目的があるのを後で初めて知った。


そこには格差社会などなく、皆等しく同じ学生という上っ面の規則があったが、あんなの嘘っぱちだ。

私が歩けば、貴族の方は皆、遠巻きに顔を逸らして聞こえないような声で話しているのだ。

さらにショックだったのはその影響が市井にまで出始めたことで、私が学業以外で目指していた同じ釜の飯を食う作戦は大いに破綻したというわけだ。


結局、私に話しかけてきてくれたのは四人だけで、今も私と同じ職場にいるのだが、会った当初はやさしかった印象があったのに今ではほとんど悩みの種である。


そして、卒業間近になり、帝国との年に一度の戦が始まった頃、最後の試験だと言われ、皆と付いていったのがそもそもの間違いだった。付いた途端、何が何だかわからないまま即戦場に放り出された。他のみんなは多少緊張しているようだが、武器の持ち方や使い方に手慣れていた。おそらく、毎日、練習していたのだろうというのに気づいた私はあれ?これ別のクラスじゃない?と思い、その場の指揮官に異議申し立てをしたが、戦場の爆発音と指揮官が早口で怒鳴っているせいで何言ってるのかわからず、ただ、却下された。その際に武器を渡されたが、これでいったい何をするのか言われることもなく、危険地帯に投げ込まれた。


あれから、4年、私は22歳になりました、お父さん、お母さん、弟よ。すでに私の結婚適齢期は過ぎ去りつつあります。というかもう過ぎています。行き遅れです。幸いにお金には取り敢えず、苦労することはありませんが、私の精神と体はズタボロのボロボロのストレスマックスです。

私は4年の間、正確には試験に1年、残りの3年については試験時に自分の身を第一に逃げ回っていただけなのに総司令官様から功績を頂き、ここで兵役に就くことになってました。

こんにちは戦場、さよなら平穏な生活。さらに砦でさらに何かしたらしく、下っ端兵卒から総指揮官にまで昇進致しました。

普通に素直に喜べません、辞退したい。


残念ながら、この手紙も親元に送られる前に検閲を頂き、手早く書き直されるのでこれは愚痴を吐いているだけ。


私がいるのは王国と帝国の中央に位置する国境、フォートン砦でなんだけど、何故か私がここに来てから年に一度の戦争が年に十回ぐらい増えた。

それは私のせいでは当然なく、皇帝が新たに変わったせいらしい。先代の皇帝様は慎重派の君主だったのだが、今の皇帝様はめちゃくちゃ過激派で、めちゃくちゃ攻めてくるんです。

なんで私の時に限って過激派なんですか?もう少し優しくしてください、お願いします。

フォートン砦は普段は街として機能しているが、戦時中は市民は別の領地に保護されている。

ここを離れられない私は常に戦線恐怖しているわけで、私も逃げたいのに賛同者は皆無の状態だ。


誰か、私をこの檻から攫ってください、王子様でも義賊でもいいので。え?、そんな者はおとぎ話でいない?砦の者に頼めばって?ハハハ、砦のみんなはただの狂化人間です、戦闘狂です、ただ、強いです。

だから無理です。


そもそも、なぜ、帝国が王国を執拗に攻めるのかというと、王国は別名魔法国家と言われているらしく、魔法道具の産業が最先端で、その作成方法は外門不出の機密情報として認定されている。

魔法道具は生活に営みをもたらすだけでなく、兵が使う武器にも活用されている。当然それだけならば、道具を持ち帰り分解すれば分かるわけで、私がもう少しましな日常を頂けていたはずだ。

当然、王国はそれに対しても対策を施しており、分解または調査が入るのを拒む術式を付けている。さらにその強固な守りを破った瞬間、内部術式が崩壊すると共に道具そのものを融解させてしまうのだ。


まさに苦労している帝国からしてみれば、卑劣な所業と言わずにいられないかもしれないが、そのようなこともあり、帝国は王国に度々、攻めてくるのだ。


そして、攻めては休んでを繰り返しては会談を設ける節を申し込んでくるのだ。本当に帝国怖いです。そして、それを拒否する部下も怖いです。



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