帰宅
戻りながら村の中を確認すると、何棟かは崩れたり燃えたりしていた。広場まで戻ると住民のほとんどが広場で来た時と同じように固まっていた。それを見てリンが呼びかける。
「みんなー!魔物は全部倒したよー!」
その声を聞いてみんなが一斉にこっちを向いた。
「やっぱり最初に送られてきてたのはお前たちだったか。どうして戻ってきた?」
その中にいた村長がなんとも言えない微妙な表情で問いただしてきた。待機するように命じていたのだから当然だろう。
リンが一瞬ムッとして何かいおうとしたがそれを制して俺が返事をする。
「王都にいた中で俺たちが直ぐに向かう事ができたからです。それに助けられたかもしれないのに助ける事が出来なければ一生後悔すると思ったのでここに来ました。」
「そうか。確かにお前たちが直ぐに来てくれたおかげで被害も最小限に抑える事ができたのも事実だ。……分かった。命令を無視した事は不問とする。それと助かった。ありがとう」
そう言って村長は頭を下げた。それに続いて近くにいた村人達も頭を下げる。
「いや、一番強い魔物を倒して俺たちを助けてくれたのは騎士だから。お礼はあの人に言ってください。」
俺が少し照れくさくて言うと村長は笑顔でそうかといった。
「お前たちはボロボロだから一旦家に帰って着替えて来なさい。ユウ、君の両親は家に居るよ。怪我はしてないはずだ」
確かに俺もリンもボロボロだった。リンは何回かデュラハンの攻撃を受けているので俺以上に汚れ、服も所々が敗れていた。
「明日は建物の修理とかやるから九時くらいにここに集合しよう。」
俺は早く帰り両親の無事を確認したかったので明日の予定を手短に伝える。
「分かった。私達がいる間にできるだけ進めよう!」
そう約束して俺たちは互いの家の方に急いで向かった。
*
リンと別れすぐに家に戻ると幸い家は崩れておらず安心しながら家に入ると両親が玄関の前で立っていた。
「おかえり!怪我はしてないか?よく頑張ったな。自慢の息子だよ」
俺を見るなにすぐに抱きついてきて一気にそう捲し立てた。俺は驚いて一瞬何も言う事ができず固まってしまい、それを見て両親が首を傾げる。
「·····た、ただいま!俺は大丈夫だよ。怪我してもすぐ治るし。それよりそっちこそ怪我してない?家に居るってことは逃げ遅れたんじゃないの?」
俺が心配そうにそう尋ねると二人は首を振った。
「逃げ遅れてないよ。村の魔物をユウが全部倒した後に戻ってきたんだよ。ユウが帰ってきた時きっとお腹を空かせてるだろうと思ってね」
どうやら逃げ遅れたわけではないらしい。それに無事に帰れる保証が無いのに俺が帰ってくると信じてご飯を作りここで待っていてくれていたのだ。
俺は安心すると同時にここまで信用してくれている事をとてもありがたく思った。
「さ、体を拭いて着替えてきなさい。ご飯を食べながら王都の話しとか色々聞かせてちょうだい」
それに頷いてから俺は自分の部屋に向かった。
*
ご飯を食べ終わった後も王都に向かうまでの旅の話や王都、学院でのエスパーダ選定の話は続いた。
「じゃああの時空から降ってきた沢山の剣がユウが貰ったエスパーダなの?」
「あれはエスパーダの能力で作り出した物だよ。本物はこれ」
否定しながらデュプリケートを出してテーブルの上に置く。それを見て二人とも驚きながらマジマジとテーブルの上の剣を見る。
「なんも無いところから出てきた!すごいな」
「それに艶があってとても綺麗だしよく切れそうね。やっぱり支給される包丁や衛士さんが持ってる剣とは全然違うわね」
この国では包丁などの日用品で職人が作る物は高価なため何年かに一度国から支給されるのだ。もちろん支給される物は一人前の職人が作った物ではなく職人の弟子などのまだ半人前の人が作ったあまり出来の良くない物だ。それを村人は大切に使い次に支給される時まで使い続けている。
「そういえばユウ達はいつまで村に入れるんだ?また王都に戻らないといけないだろ?」
「うん、三日後にはまた村を出る予定だよ。それまでは村の復興を手伝うよ。重いものとかも楽に運べるしね」
「そうか。じゃあ明日から大忙しになるな。今日はもう寝なさい」
俺はそれに頷いて自分の部屋に戻った。ベッドに座りもう一度デュプリケートを出して熟練度と能力を確認するために魔石をたたく。
デュプリケート 熟練度七
・固有型
『生成』 熟練度五
『中、遠距離攻撃起動予測』 熟練度三
・常時発動型
『索敵』 熟練度五
『暗視』 熟練度一
・限定発動型
『身体能力強化』 熟練度五
『緊急回避』 熟練度三
『放電』 熟練度二
『縮地』 熟練度一
『空歩』 熟練度一
と戦闘で使った能力は全て熟練度が増えていた。さらに能力も少し増えている。村で倒した魔物が持っていたんだろう。結構使えそうだった。
試してみたい気持ちもあったが、かなり疲れていたためデュプリケートを消してそのままベッドに仰向けに倒れ込み気絶するように眠った。
その翌日からの三日間は、俺とリンがほぼ休みなく重労働をこなして村を出る前に防壁の修理を終わらせる事ができた。