襲撃3
「レールガンみたいなもんか?よく思いついたな」
デュラハンはこちらを警戒して盾を構えたまま動かないのでデュプリケートに話しかける。
「でしょ!暇つぶしに君の記憶見返してたら少しだけ出て来たんだよ。同じとまでは行かなくても近いものにはなったと思うよ」
俺が会話をしているせいで動かないのを見てデュラハンが動こうとしたが、俺が動くより先にデュプリケートが電気を纏った剣を大盾の上部を狙い撃ち込んだ。
剣は狙い通りに大盾に当たり大きく弾き上げた。大盾が持ち上がって見えたデュラハンの胴体にさらにもう一本撃ち込んみさらに後ろに吹き飛ばす。
それを二回ほど繰り返したところで完全に回復したリンが俺の方に走ってきた。
「すごい·····。あんなに強い敵を圧倒してる」
リンにはそう見えたのだろう。多分リン以外の人が見ても同じようなことを思うはずだ。だが、そんなことは決してなかった。
「今はな。あいつだんだん衝撃を受け流せるようになってる。それに俺の刃纏があまりな多くない。このままだと騎士が来るまで持つか分からない」
「え·····そんな」
リンの顔が青ざめた。それもそうだろう。刃纏が切れればただの人間だ。一瞬で殺されるだろう。そして今まで二人がかりでなんとか相手していた敵を一人で対処しきれるはずもない。
「デュラハンを倒せるかもしれない作戦を考えた。成功するかはお前次第だ。上手く行けばあいつを倒せるはずだ。まず姿を消すとか隠す能力持ってるか?」
提案するとリンは直ぐに頷いた。
「よし。まず俺があいつの周囲に半球状に剣を生成してレールガンにして全部撃ち込む。もちろん刃纏はギリギリ残るようにしてな。それであいつの盾と鎧は破壊できるはずだ。」
「うん。私はこれで倒せると思うけど」
その言葉を直ぐに否定する。
「多分無理だろうな。もう少し刃纏があれば行けたかもしれないけど。続けるぞ。リンは俺が生成した剣を撃ち込んだタイミングで姿を消してギリギリまであいつに接近して全部打ち終わった後にさっき使った能力であいつを切る。お前がさっき使った奴って斬撃を強化して刃纏に乗せて飛ばしてるだろ?それを全部斬撃の強化に回すんだ」
「うん。ユウが言ったとおりだよ、わかった。やってみる!」
その答えを聞くと同時に生成していた剣を三本だけ残し他は刃纏にもどす。
途端、デュラハンが一気に接近しようとしたがデュプリケートが残していた剣を撃ち込み、動き出そうとした瞬間に攻撃を受けたデュラハンは上手く防ぎにれずに再び吹き飛ばされ地面に倒れた。
作戦通りに倒れたデュラハンの周りに半球状に剣を再び百本以上生成して囲む。その時に少し想定外の事が起こった。刃纏の消費が普通にやった時より多かったのだ。もう十分も戦えないだろう。
「生成は使用者から距離が遠ければ遠いほど刃纏を多く消費するんだよ。」
どうしてと内心で考えているとデュプリケートがその疑問を解消してくれた。それに感謝しながらデュラハンの様子を確認する。
デュラハンは出られないと思ったのか囲いから出ようとせずに大盾を構えている。もしかすると撃った後にできる隙間から突破しようと考えているのかもと考えたが、全て同時に撃てば問題無いはずだ。
隣にいるリンに頷きかけ撃つことを伝える。リンも頷き体を前傾にして走り出す体勢に入る。
「よし、やれ!」
声に出してデュプリケートに指示を出すと全ての生成した剣がほぼ同時に動きデュラハンに襲いかかり、土煙で直ぐに見えなくなった。
隣を確認するとリンは既に姿を消していた。索敵の能力を使っても位置は知ることはできなかった。
土煙が晴れるとやはり後ろを向いたデュラハンは倒れてはいなかった。しかし盾は左腕ごと無くなり、鎧も所々が無くなり、残っているところも少しの衝撃で壊れてしまいそうだった。
リンはいつ追撃するのかとハラハラしながら見ていると完全に土煙が完全に晴れる前ににデュラハンの背後に姿を現し居合切りをした。
しかしデュラハンはまるでリンが出てくる場所が事前に分かっていたかのように振り向き、大剣を振り上げてリンの居合切りを弾いた。
さらにそのまま左からの水平切りを放ちリンを殺そうとした。それをリンは間一髪の所で刀を引き戻して柄で何とか防いだ。
それでもデュラハンの一撃は凄まじく踏ん張り切れなかったリンはそのまま吹き飛ばされた。その吹き飛ばされた方向は俺のいるところだった。恐らくデュラハンは防がれた時を考えわざとやったのだろう。
受け止めなければリンはまたこの戦いから離脱することになり、俺は一人でさらに残り少ない刃纏でデュラハンを相手しなければならないだろう。
だが受け止めても一瞬動けなくなった隙に距離を詰められ二人まとめて殺される可能性が高いだろう。
難しい選択だったが俺はほとんど迷わずにリンを受け止めていた。衝撃で上体が後ろに傾き倒れそうになるが、何とか踏みとどまる。
剣を構え直そうとした時にはデュラハンが目の前に立ち水平切りで、俺の首を落とそうとしていた。それを再び緊急回避の能力を使い回避し、リンを抱えたまま後ろに下がった。
それと入れ替わるような形で一人の人間がデュラハンの前に立ち剣を振るった。デュラハンはそれを防いだが後ろに押し返された。
その人間は銀色の鎧を全身に纏い、金色の両手剣を持った金髪の青年だった。紛れもなく派遣された騎士だった。
俺はリンが吹き飛ばされた辺りからこの騎士の存在を索敵の能力で気づいていた。そのおかげでリンを受け止める決断を直ぐに決めることができたのだ。心強い存在に思わず安堵のため息が漏れた。
「ふう·····俺は騎士学院所属のユウといいます。助かりました。あと、村を救いに来て下さりありがとうございます。」
「同じく騎士学院所属のリン・ノービアといいます。助けていただきありがとうございます」
リンは一瞬呆然としていたが、俺から慌てて降りて感謝を伝えた。
騎士は振り向かず、デュラハンを見つめたまま名乗り質問をした。
「それが私達の役目だ。私はノベーラ王国騎士団序列一位、ルス・アルタだ。他の魔物はどうした?」
「デュラハン以外の魔物は俺とリンで全て倒したと思います」
後ろ姿なので見えづらかったがそれを聞いて頷いたように見えた。そしてルスはデュラハンの方へと凄まじい速度で走っていった。
ルスは走りながら剣を地面と平行に構え腕を引き剣先をデュラハンに向けた。同時に剣が物凄い光を放った。そしてデュラハンを間合いに入れると同時に突きを放った。
剣はデュラハンに届かなかったが剣先から巨大なビームを放ちデュラハンを一瞬で包み込みさらにその奥にある森にまで伸びた。
ビームが収縮するとデュラハンは跡形もなく消えていた。それだけでなくビームが通った場所は地面が焦げその距離は一キロメートル近く伸びていた。
「魔物はこれですべて片付いたな。転移は片道だけのようだから私は村には戻らずそのまま王都に向かう。二人はゆっくり休んでから戻ってくるといい。君たちの功績は私から学院などに伝えておくよ」
騎士は振り返りこちらに歩いてきながらそう言った。俺たちはそれを聞いて慌てて立ち上がり敬礼をする。
「「ありがとうございます!」」
騎士はそれを聞いて微笑みながら頷くと王都の方へ、デュラハンに向かって行った時よりも速い速度で走って行った。
「学院が始まるまでもう少しあるし短くても三日は村にいよう」
「うん!」
俺が提案するとリンは直ぐに頷いた。