表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/18

襲撃2

  すぐにリンのところに到着すると凛は刀を振り抜いた状態で呆然としていた。

「どうした?」

  横に並んで尋ねながら魔物の方を確認するとその光景に俺の方も呆然としてしまった。

  魔物が居たと思われるところは地面が大きく横長にえぐれていた。間違いなくリンの固有型の能力を使った攻撃だったのだろう。その証拠に取り巻きの魔物は跡形もなく消滅している。

  ……いったいどんな能力なんだよ。

  しかしボスと思われる大盾に大剣を持ち、黒いフルプレートアーマーを着た首なしの騎士デュラハンの立っているところは何事も無かったかのような状態を保っている。

「……ユウくん、私可能な限りの刃纏を使ったの。なのにあのデュラハン」

  リンは顔を青ざめさせながら言ったが最後まで聞くことができなかった。

  デュラハンが二十メートル近くあったはずの距離を一瞬の瞬きの間に詰め俺に大剣を振り下ろそうとしていたからだ。

 ガードはもう間に合わない。弾き返したり軌道を逸らすのも間に合わないだろう。リンは立ち直れてないせいかまだ気づいていないから援護はない。ギリギリ致命傷を避けられる回避しかない。

 一気に加速された感覚の中で一瞬でそこまでの思考を巡らせ覚悟を決めて回避行動を取ろうとする。

 その瞬間、自動的にというより多分デュプリケートが一つの能力を発動させた。

 瞬間、俺の体が残像が残るほどのスピードで後方にスライドした。俺がデュラハンの間合いの外まで下がった瞬間、大剣が大きさからは想像できない剣速で振り下ろされた。

 その時になってようやくリンはデュラハンが接近していることに気がつき慌てて距離をとった。俺もさらに距離を取るためにさらに後ろに下がる。

 デュラハンの大剣は地面に深く突き刺ささった。反撃するべきか悩んでいると、デュラハンが剣を引き抜くのに手間取っている。

 直ぐに反撃に出るため一気に距離を詰めデュラハンの地面に刺さった剣を踏み台にし軽く飛び上がりながら剣を上段に構え一気に振り下ろす。

 ガァァン!

  しかしデュラハンは慌てる様子もなく冷静に左手の大盾を剣の軌道に割り込ませて危なげなく防ぐ。

  打ち込んだ剣は大きく後ろに跳ね返され、その影響で俺も空中で仰け反り体勢を崩す。着地を失敗し反撃を受けると覚悟したが俺が後ろに下がるまで反撃は来なかった。

  立ち直ったリンが俺が打ち込んだ直後にデュラハンの背後から反撃してくれたからだ。リンは俺が反撃するために動き出すなとほぼ同時に刀を鞘に収めながらデュラハンの背後に回り込み、俺が弾き返された時にはデュラハンを間合いに入れ刀身が見えない程の速さで居合切りを横一線にはなった。

  しかし、これも鎧に弾かれる。リンは顔を顰めながらも急いで距離を取ってデュラハンの間合いから離れる。

  距離があるので定かではないが鎧には傷一つ着いていなかった。盾には傷が無数に入っていたが俺の剣によってできた物はなかった。

  いくらなんでもおかしいと思ったがすぐにその理由がわかった。エスパーダ自体の熟練度が低すぎるのだ。エスパーダ自体の熟練度は切れ味や強度に繋がると言っていたが、恐らく今の熟練度だと普通の剣とほとんど切れ味は変わらないのだろう。

  できれば倒すつもりだったがこれでは倒しようが無いので方針を変更する。それをリンに伝えるために大声を出す。

「リン、こいつは俺たちじゃ倒せない!騎士が来るまで時間を稼ぐぞ。」

  それを聞いてリンが深く頷いた。

  その時ようやく大剣を引き抜いたデュラハンが再び動きだした。今度はこちらに見向きもせずリンの方に向かっていく。俺の能力を警戒したのだろう。

  リンは攻撃の瞬間に避けるつもりのようで刀をまっすぐ構えデュラハンを睨んでいる。俺は攻撃のタイミングをずらして避けやすくなるように援護するため十本ほど剣を生成する。

  デュラハンが俺の時と同じように剣を上段から振り下ろそうとしたタイミングで生成した剣を飛ばす。

  剣はデュラハンの剣の横に全て命中しほんの少しだけ軌道をずらすことに成功し、リンは余裕をもって回避に成功した。

  リンは回避に余裕が出来たことでデュラハンの鎧と鎧の間を狙い刀を振ったが、デュラハンは冷静に少しだけ動き鎧で防いだ。

  さらにデュラハンが左手に持った大盾をリンにかなりのスピードで突き出した。完全な不意打ちでリンは為す術なく突き飛ばされ、受け身も取れずに村の防壁に激突した。

「リン、大丈夫か?」

  慌てて大声で声をかけるが返事が帰ってこない。刃纏を使ってるのであれぐらいでは死ぬことはないはずだ。打ちどころが悪くて気を失ったのだろうかとデュラハンを警戒しながら心配していると頭の中に声が響いた。

「だ、大丈夫。けど骨が結構折れたからしばらく動けない」

  大丈夫じゃないな。

  声の主はリンだった。デュラハンの取り巻きを倒した時に思念伝達のような能力を獲得したのだろう。

  リンが飛ばされる前から再び剣を生成していたので試しに数本をデュラハンに飛ばしてみるが、デュラハンは回避や防御などを全くせずに鎧だけで全て跳ね返し、接近してきた。

  デュラハンの速度にも目が慣れてきたので、どうしたものかと考えを巡らせながらデュラハンの攻撃を回避し再び距離を取っていると今度はデュプリケートの声が頭に響いた。

「いい能力が手に入ったよ。能力名は『放電』って言うんだけど使いやすいように少しいじってものに電気を付与できるようにしたんだ。」

  ここまで聞いてデュプリケートがやろうとしている事が分かった。

  しかしデュラハンの追撃を振り切る事ができない。自分まで巻き添えで少しダメージを受ける可能性があるが仕方ないので実行に移そうと少しだけでも離れようと全力で後ろに跳んでデュラハンと少し距離が空いた瞬間、全く予想していなかった事が起こった。

  俺とデュラハンの間に突如横から青白い光が横切ったのだ。俺を追おうとしたデュラハンはその光に足を止めた。俺はその隙にできる限り距離を開ける。光が通った地面は俺がここに来た時に見たのと同じように地面が抉れていた。

  光が来た方向を見るとまだ回復しきっていないはずのリンが刀を上段から振り下ろした体勢で立っていた。

  今の光は刃纏に斬撃を乗せて飛ばしたものだったのだろう。刃纏の量によってはどこまでも威力が増していくような能力なのかもしれない。

  リンの能力の解析をすぐにやめる。リンが稼いだ時間で全ての準備を整えなければならない。やること自体は一つだが最初からできるとは限らない。

  デュラハンと十分に距離を離せたのを確認して放電の能力を使ってみる。すると俺の周りに稲妻が走った。

  今度はこれを生成した剣でイメージする。すると俺の近くにあった一本の剣にさっきの俺と同じように稲妻が走っている。

「あとは僕がやるよ。」

  そう言って残りの作業をデュプリケートが引き継ぎ剣先をデュラハンに向け、今までのように生成した剣を飛ばした。これまでと違っていたのはそのスピードだった。全く視認することができなかったのだ。

 デュラハンは俺が生成した剣先を向けたのを見て反撃せずに動きを止めた。今までの攻撃と違うと悟ったのか、デュラハンは盾を構え防御の体制をとったが、判断が遅かった。その頃には剣はデュラハンの胸の中心に命中していた。

  剣は鎧に当たった途端粉々に砕け散ったが、その衝撃でデュラハンは二メートルほど吹き飛び仰向けに倒れた。

  しかし直ぐに起き上がり盾を構える。ダメージは中までほとんど届かなかったようだが、盾を構える時に一瞬見えた鎧の剣が当たった所には大きな傷が入っていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ