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再会

「は……、な、なんでお前が、そ、その名前を……」

  驚きのあまり俺がまともに喋れずにいると、少し離れたところに立っていた教員が俺たちに話しかけてきた。

「あの、何かしら事情があるのはお察ししますがその前に、エスパーダの説明をしてもよろしいでしょうか?」

  それを聞いたリンがすかさず返事をした。

「はい、すみません。よろしくお願いします」

  まだ完全に動揺から立ち直っていない俺はなんとか頷く。気のせいかリンが先程までより大人びている感じがした。しかし、それはほんとに気のせいなのか確信が持てないうちに教員は話を始めた。

「ではお二人共エスパーダを出して魔石を指先で軽く叩いて見てください」

  この頃には完全に動揺から立ち直った俺はすぐにデュプリケートを出すために刃纏を使いあの剣をイメージする。

  すると右手の刃纏の靄が伸び徐々に剣の形を作っていった。形が完全にあの剣と同じものになるとそこに剣が現れた。なぜか今までよりも力が上がっているような気がした。

  それをあまり気に止めることなく柄頭に嵌められている魔石をコツンと叩く。すると魔石の上に半透明で長方形の形をした物が出てきた。

  隣を確認するとリンが驚いて少し仰け反っていた。しかしリンが見ている方向にはリンのエスパーダである刀しか見えなかった。どうやら持ち主以外には見えないらしい。

「それはエスパーダの能力、一般的には加護とも言う物を確認することができるベンターナと言います。能力には三種類かありそれぞれ別れて表示されているはずです。」

  確認してみると確かに三つに分けられていた。一つ目は固有、二つ目は常時発動型、三つ目は限定発動型となっていた。

「名前の横や能力名の横の数字はなんですか?」

  質問したのはリンだった。

「その前に能力の種類からご説明します。まず固有型の欄にあるのは名前の通りそのエスパーダが固有で持っている能力です。次に常時発動型は刃纏を使っていない状態でも無意識に発動されている能力です。最後に限定発動型は使う時が限られている能力です。簡単に説明すると回避や攻撃の時だけにしか使えないなど制限のついた能力です。」

  その説明に俺とリンがこくこく頷いて理解しているのをしっかり確認してから教員は話を続けた。

「さっきリンさんがお聞きになったエスパーダの名前や能力名の横にある数字は熟練度です。これは魔物を倒したりその能力を使用すると増化し強化されます。名前の横にある数字が増加するとエスパーダの切れ味や強度などが上がります。能力の数字が増加するとその能力の性能が上昇します。例を上げると索敵が上がると索敵範囲が拡がったり精度が上がったりします。」

  説明を聞き終えてから今更ながらベンターナに記されている能力とその熟練度を確認してみる。


 デュプリケート 熟練度一

 ・固有型

  『生成』 熟練度二

  『中、遠距離攻撃起動予測』 熟練度一

 ・常時発動型

  『索敵』 熟練度一

  『暗視』 熟練度一

 ・限定発動型

  『身体能力強化』 熟練度一

  『緊急回避』 熟練度一


 となっていた。

 ·····いやおかしいだろ。なんでデュプリケートと固有型の生成の熟練度が二になっている?魔物を倒した覚えもなければこの能力を使った覚えもない。

  「あの、魔物も倒していないし使った訳でもないのにエスパーダと固有型の能力の熟練度が二になっているのですがどうしてですか?」

「あぁ、エスパーダの熟練度が上がっているのはよくあることですよ。選定の時に夢の中で使いませんでしたか?能力の方は珍しいですがこちらも夢の中で無意識に使っていたんだと思いますよ。」

  夢の中で使ったのまで反映されるのか。じゃあ生成はやっぱりあの剣を大量に作って飛ばしてたやつなのか。だとしたらもう一つの固有型の能力は·····。少し試して見るか。

「ここで能力試しに使ってみてもいいですか?」

  教員は少し驚きながらも頷いたのでベンターナを魔石をもう一度軽く叩いて消して夢の中で使った時のようにイメージして剣を一本だけ生成する。

  すると俺の横にデュプリケートと同じ形状の剣が現れてた。それを近くにあった鎧に狙いを定める。

  剣先が鎧に向くと同時に剣先から赤く細い線が伸び目標の鎧の中心に伸びて行った。周りの反応を確認すると赤い線よりも生成された剣に驚いているように見える。やはり俺だけに見えているらしい。これが固有型二つ目の能力の起動予測のはずだ。多分、生成の補助的な能力なのだろう。

  威力を確かめるために生成した剣を撃って見たくなったが鎧を壊してしまう可能性があるためやめることにした。

「ありがとうございます。だいたい分かりました。」

「そうですか。説明は以上です。あとは入学に必要な書類を記入して頂ければ帰ってもらって構いません。では着いてきてください。」

  そう言うと教員は直ぐに歩きだした。

  直ぐに終わると思っていた書類の記入は予想以上に多く、宿に帰るころには夕方になっていた。


  帰り道も宿についても俺もリンもしばらく無言だった。理由は俺が目覚めた時に言ったリンの一言のせいだ。リンが何も言わないので俺からは聞づらい。

「さっきも聞いたけどあなたは柊悠くんでしょ」

  十分くらいしてからようやくリンが口を開いた。俺も二回目だったのであまり驚かずに返答することができた。

「うん。二つ前の世界ではその名前だったな。なんでお前がそれを知ってるんだ?」

「当たってた。やっぱり分からないか。私も半信半疑だったしなー。私の前の世界にいた時の名前は一ノ瀬凜。選定の時に神様にブロックされてた記憶をエスパーダが戻してくれたんだ」

  その名前を聞いて唖然とした。

「いや、ちょっと待て、時間の流れが同じなら俺が転生した時点でまだ三十代のはずだ。」

「死ぬのが早すぎるってこと?それはユウが言えないでしょ。」

  リンは笑いながら言った。その後証明するためか俺たちしか知らないことをどんどん言い始める。本当に一ノ瀬凛らしい。

 一ノ瀬凛との関係を簡単に説明すると元の世界で幼なじみで三日間だけ恋人だった。三日で終わった理由は俺が死んだからだ。今まで少し似ているとは思っていたがまさか同一人物だったとは思わなかったな。

 あの神は一体何を考えているんだ。と考えているとリンがいきなり頬をすこし赤らめながらなにか言おうとしていた。

「·····あ、あのユウくん、あのね…えっと、私たちここでも·····」

  それをリンが最後まで言う事が出来なかった。なぜなら、途中で鳩に似ているが倍くらいの大きさの鳥がは窓から侵入してきたからだ。

「うわっ!なんだこいつ」

  俺が慌てて追い払おうとするとリンが慌てて止める。

「あ、待って!それお父さんの伝書鳩だよ!」

  それ鳩なのかよ!とつっこむ前に別のことに意識がいった。無性に嫌な予感がする。

「村長からわざわざ?どこにいるかもはっきり分からない俺たちに?もしかして村になんかあったのか?」

  まだ中を見ていないリンが知るはずもない事を思わず聞きいてしまった。リンは近くに止まった鳩の足に括り付けられている手紙を取り内容を確認する。すると、さっきは何故かすこし赤かった顔が今度はどんどん青ざめる。

「お、おい。何が書かれてたんだよ?」

  恐る恐る尋ねるとリンは何も言わずに手紙を俺の方によこした。手紙を確認すると驚きのあまり間違えていないか何度も文を読み返す。手紙には短くこう書かれていた。


『村が魔物に囲まれている。今は壁がギリギリ耐えている。急いで騎士に応援を要請してくれ。お前たちは王都に待機しろ。』


「リン!急いで荷物をまとめてろ。俺は学院に手紙を渡してくる。村長の印鑑が押されてるから直ぐに受領されるだろう。俺が戻ったら村に向かうぞ」

  リンはまだ青ざめていたが何度も頷き荷造りを始めた。それを横目で確認しながら刃纏を使い窓から飛び出し向かいの建物の屋根に乗り、そのまま屋根伝いに学院に向かった。

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