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エスパーダ1

「ねぇまだ王都につかないの?」

「村を出てから五日目だからそろそろ着くはずだよ」

  俺とリンは森の中を刃纏を使って高速で走っていた。場所は村から千キロ近く離れた場所だ。

  十五歳になった俺とリンは王都で刃纏が使える人達が使うための武器(エスパーダと言うらしい)を貰いに行くのと、騎士学院の入学手続きを済ませるため、王都に向かい五日前から刃纏の続く限り走っている。

  本来は馬車を使うのだが迂回したりするため十日以上かかると言われ、それなら走った方が速いと思い現在こうなっている。実際崖などは迂回せずに飛び越えているのでかなりの時間短縮になっているはずだ。

  多分今日か明日には王都に着くだろうと思って木を避けながら走っていると突然そこそこ大きな道に飛び出した。王都に続く道だろう。その道は左右に別れていた。

  都合よく看板などあるはずもなく、どちらに行くか話し合っていると突然俺達が出てきた反対側の茂みから盗賊らしき人間が十人程出てきた。

「死にたくなけりゃ持ち物全部置いていき·····」

  その盗賊の言葉が最後まで続くことはなかった。念の為に持ってきていた木剣で一人を除き俺とリンが一瞬で気絶させたからだ。

「ひっ····!·、命だけは助けてくれ、もうやらねーから!」

 残った一人が悲鳴を上げながら命乞いをしてくる。

 別に倒れた奴らは気絶してるだけなんだけどな·····。

「王都に行くにはどっちに行けばいい?」

  少し威圧的に殺気を込めて尋ねる。

「み、右だ!右に行けば王都に入れる。教えただろ!見逃してくれ」

  盗賊は俺たちから見て左側を指さしながら言った。

「嘘はついてなさそうだな。リン、行くぞ」

 盗賊を放置して俺が歩き出すとリンが慌ててついて来た。

「あの盗賊はほったらかしでいいの?」

「ああ、問題ないよ。あの人数を連れれ行くのは手間だし、王都まで連れて行っても金は貰えそうに無いからな。それに今回ので世程の馬鹿じゃない限り懲りるだろ。なによりもう逃げてる」

 リンがふり返ると盗賊の姿は倒れた者も含めていなくなっていた。

 どうやら森にまだ数人隠れていたようだ。その盗賊が倒された盗賊を連れて逃げたのだろう。それにしてもなんて逃げ足の速さだ。もうどこにいるのかすらわからない。

「しまった。どれくらいで着くか聞いてなかった。これじゃどれくらいの距離かわからないな。リン、今日中に王都に入りたいから走るぞ。早くベッドで眠りたい」

「そうだね、私も早くちゃんとしたお風呂に入りたい。」

  それに頷いて俺たちは再び刃纒を使い勢い良く走りはじめた。


 王都は意外と盗賊と会った場所からかなり近かった。走りはじめて一時間もしないうちに城壁が見えたときには残りの刃纒もお互い底を突きかけていて普通に歩いていたのに、それを忘れて走ったぐらい嬉しかった。幸いこれで刃纒が尽き倒れる事はなかった。

 門番は俺たちが猛スピードできたのを見ていたので、それで事情を察してくれて説明する事もなく短い手続で王都に入る事ができた。

 宿屋も用意されておりかなり高級な所で王都の中心に近い所にあり風呂なども一部屋に一つあり食事もついていた。そしてなんと宿泊代が無料だった。これには俺もリンも大喜びだった。

 そして肝心のエスパーダはいつでも学院に行けば与えられるとの事だった。今すぐにでも行きたかったが、到着が夕方だったため今日は休んで明日行くことになった。


 翌日朝食を食べたあと直ぐに学院に向かうと既に連絡が行っていたのか教員らしき厳しそうな女性が門の前で立っていた。

「ようこそ、リン・ノービアさんとユウさんですね?」

「はい、エスパーダを頂きに来ました。今日はよろしくお願いします」

 頭を下げると教員の方も軽く頭を下げた。

「これからエスパーダを保管している武器庫に向かいます。ついてきてください。」

  そう言って歩き始めた。ついて行くと学院はかなり広く、建物もかなり大きかった。周りを見ながら歩いていると直ぐに武器庫に到着した。

「ご存知かと思いますがエスパーダには意思があり、あなた方を自ら扱うに足る存在か見極めようとします。その際命を落とす事もありますがそれでもこの武具庫に入りますか?」

  そう言えばそんなことを神が言っていたな。命の危険があるとは言ってなかったけど。その事が少し頭にきたが気にしないことにした。

「はい、入られせてください。」

  内心で他に選択肢も無いのでと付け加える。実際入らないとどうしようも無いし、多分法律的に刃纏を使うものが学院に入学しなければならず、そのためにはエスパーダが必要なのだ。

  俺が答えるとリンも隣で頷いた。

「お二人とも覚悟が出来ていて良かったです。逃げようとすれば力ずくで武器庫に入れなければならなかったので。では、どうぞお入りください」

  俺たちの意思を確認すると職員がおもむろにそう言いながら扉を開いた。

  中に入ると大きさは体育館くらいの大きさだったが、俺は中に入ると思わず感嘆の声を漏らしてしまった。その理由は壁や天井に所狭しと剣や槍、斧、短剣、弓、珍しいものではメイスや大鎌など様々な武器が掛けられていたからだ。そして床には血の跡や傷が無数にあったからだ。

  教員に促されて念の為警戒しながら中央付近まで行くと当然嫌な予感がし、後ろを振り向くと謎の物体が猛烈な速度で俺の方に向かって来ていた。同時にリンにも同じように別の物体が向かっていた。

  このままでは間に合わないので慌てて刃纏を使い全力で後ろにステップで回避する。一瞬遅れて俺たちの立っていた所に謎の物体が床に突き刺さった。それは二本の剣だった。俺のいた所に刺さったのは黒っぽいレイピア程ではないが細身の長剣だった。そしてリンのいた所に刺さったのは日本刀だった。剣は後ろから飛んできたが教員が投げたわけではないらしい。角度が完全に天井に近い位置からだった。

  床の血の跡と傷の原因の理由よりも日本刀がこの世界にあったことに俺はかなり驚いた。教員は俺たちが後ろから飛んできた剣と刀を避けたのに少し驚いた顔をしていたが直ぐに次の指示を出した。

「その剣があなた方を選んだエスパーダです。床から抜いてください。選定はここからが本番です。まぁ今まで死角から飛んできたエスパーダを避けられたなら恐らく大丈夫でしょう」

  俺とリンは頷きあって恐る恐る剣に近くと、剣は刃纏を使った時に現れる靄に似た様なものを全体から放っていた。

  そして刃纏を収め床から引き抜こうとすると、まるで床に縫い付けられたかのように全く動かなかった。リンの方の刀も深く刺さっているわけではないのに全く動く気配がない。

  どうしようもないので再び刃纏を使うと今度はあっさり引き抜くことが出来た。まるで重さがなかったのだ。さっきまでの重さはなんだったのかと思いながら剣を持ち上げようとした瞬間、剣の靄のようなものと、俺の刃纏の靄が混ざると同時に俺は意識を失った。

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