女王様、お願いがあります 01
「莉灰さん・・・? なんで、ここに来てしまったのですか・・・」
女王に踏まれているヒノが、僕の姿を見て呟いた。
部屋にいる全員が、部屋の真ん中に躍り出た僕へと注目する。
「リンドウ、君はそこから動くな」
僕がそう言うと、銀髪の少女・リンドウはその場に立ち止まり、そして驚いた表情で僕を視た。
遠くから見ると幽霊の様に不気味な少女に見えたが。
こうして近くで見ると、肌は白く綺麗で、
その赤い眼は、思ったよりもずっと優しげな眼をしていた。
「・・・君は、兵士を殺すなんて命令は止めて、そこで座って、じっとしてて」
するとリンドウは命令通り、静かにその場に座り込んだ。
エルカが「リンドウはこの国で最強の騎士だ」と言っていたので、彼女に僕の魔法が効くのか不安だったが・・・。
どうやら効果はあるらしい。
「な、何なの、あの子・・・いきなり出てきて」
女王は、困惑した表情を浮かべている。
「おい、ヒノさんから足を離せ」
「えっ? わ、分かった・・・」
ヒノの頭から、足を離す女王。
周りにいる使いの者達も、突然現れて女王に命令する僕の存在を警戒し、
困惑して顔を見合わせている。
だが、すぐに身柄を捕えに来ないのは、恐らく魅了の魔法のせいだろう。
本当なら、彼らにとって僕は、女王に近付く怪しい侵入者であるはずなのだから。
「突然出てきて私の邪魔するなんて、失礼な子・・・けど」
すると女王は椅子から立ち上がり、僕に近付いてきた。
「私にレズの趣味は無いんだけど、貴女は、かなり好みかもしれないなぁ・・・」
そして値踏みするように、僕の全身を舐め回す様に観察し始める。
女王相手にも、僕の魅了の魔法は効果抜群らしい。
「うーん、見れば見るほど可愛い子ね。是非、ペットにして傍に置いときたいなぁ」
・・・好きな相手を飼いたいのか。
魔法の効果はある様だが、その反応はやはり女王らしい。
「ねぇ、私あの子が欲しい。捕まえてくれる?」
そして、女王は使いの者にそう指示を出した。
流石に女王の指示となれば聞かない訳にはいかないだろう。
使いの者達が、電流の纏う杖を片手に近付いてくる。
そしてその内の一人が、僕の手を掴んだ。
「・・・触らないでよ」
「っ・・・!」
だが僕がそう言うと、使いの男は困惑しながら、その手を離した。
「僕に近付かないで」
更に、他の者達が近付いてきたので、真っ直ぐ目を見て、そう命令する。
「召使さん達はあっちの壁まで下がって。そこでじっとして、動かないで」
すると使いの者達は、簡単に僕の言う事を聞き入れて、離れていく。
これで邪魔者はいなくなった。
「ち、ちょっと・・・!? 何してるのよ、なんで私の言う事を無視して・・・!?」
その様子を見て、女王は混乱している様子である。
「ねぇ、女王様?」
「っ・・・!」
僕がそう呼びかけながら近付くと、女王は一度ごくりと唾を飲む様子が伺えた。
この女王の様な性癖の相手に、僕の魅了はどう働くのか気になったけれど・・・。
この反応なら、問題なさそうだ。
「女王様は、僕の事が欲しいんだって?」
「・・・そうだけど? 貴女みたいな可愛い子は、私の傍にいるべきよ。
女王の傍に居れるのよ? こんな光栄な事、無いと思うけれど?」
良くわからない理屈だった。
「んー。それじゃあ、女王様のお傍にいても良いけどー」
女王の横に顔を寄せる。
女王の口調は強気だったが、僕が近付くと身体が強張っている事が見て取れた。
「ただし。今から僕が言う事を、聞いてくれたらね」
そして女王の耳元で、そう囁く。
「っ・・・! な、何よ。言ってみなさいよ」
「うーん、まずはー。
その場で土下座して?
ちゃんと床に頭付いてね」
「・・・え?」
女王は一度、驚いた顔で僕を見た。
だが、僕が笑顔で見つめ返すと、よそよそしく床に膝を付き、
そして、頭を深く下げ、床に頭を付いた。
「こ・・・これでいい?」
キラキラとした高貴な衣装に身を包んだ女王が、地に膝を付いて、更に頭まで付いて、土下座している。
その光景に、なんとも言えない違和感を感じた。
けど、まだ終わりではない。
腕をもがれた兵士の方を見る。
彼はこちらの様子を見ながら、他の兵士達に傷の止血をしてもらっていた。
ヒノの方を見る。
女王に踏まれたせいか、鼻や顔からは血が流れていた。
ミナトの方を見る。
電気の痺れは大分良くなったのだろうか、身体を起こして、驚いた顔でこちらを見ていた。
皆の事を見ると、女王の偉そうで嗜虐的な表情を思い出して、なんだかまた腹が立ってきた。
「それじゃあ、女王様?
僕が良いと言うまで、顔は上げないでね。
その態勢から、動いたらダメだからね?」
「えっ、あ、あの。何をするの・・・ッ!?」
そして僕は―――。
女王の頭を、脚で踏みつけた。




