役に立たない兵士を、一人選んで 02
幽霊か、それとも呪われた人形か。
そんな不気味な、銀色の少女。
彼女が、この国で最も強い騎士なのか。
そう思いながら彼女の事を見ていると。
目元を覆う前髪の隙間から、赤い眼が覗くのが見えた。
「・・・っ!」
そして気のせいか、彼女の眼はじっと僕の方を見ている。
死人の様にハイライトの消えた赤い眼で、じっと僕の方を見ている。
だが不思議と、その視線に敵意は感じなかった。
「それじゃあ、リンドウちゃん。お仕事お願いするけどー、手加減してね? 殺しちゃダメだからね?」
女王がそう言うと、リンドウはひとつ頷き、その赤い眼を、男性の兵士―――今回、罰を受ける兵士へと向けた。
女王の命令を受けたリンドウが、一歩ずつ男性兵士に近付く。
「・・・クソ。俺が、馬鹿だったって事かよ」
それに対して、男性兵士はーーー。
「こんなクソみたいな国の為に、真面目に兵士なんてやってたなんてなあ・・・!!!」
ボロボロの身体を上げ、そして腕を突き出す。
その手のひらは、虹色の粒子が漏れ出し、発光していた。
彼の腕が向く先は、リンドウへ・・・ではない。
虹色に発光する腕は、女王を向いていた。
「っ・・・!!!」
彼は、女王を魔法で撃ち抜くつもりだ。
使いの者達も、それに気付いた様だが、
既に、虹色の光は彼の腕から離れ、そして。
「な、何・・・?」
虹色に発光する兵士の片腕は、リンドウの腕に握られていた。
男性兵士の腕は、肩から下が消え去っており、そして血が噴き出し始める。
あの一瞬の間に、リンドウが彼の腕をもぎ取ったのだ。
魔法が放たれた様に見えたのは、リンドウが彼の腕を奪った時の残像だった。
「ぐぁぁぁッ・・・!!!?」
男性兵士が、苦痛に声を上げる。
「おやおやおや。おかしいなぁ?
あんたさぁ、今、女王である私に向けて、魔法を撃とうとした様に見えたんだけど・・・気のせいかな」
「ぐっ・・・なんだ、女王様よ。頭だけじゃなくて、目も悪くなったのか?」
男性兵士は痛みを堪えながらも、笑っていた。
その明らかな挑発に、女王の表情から笑顔が消える。
「・・・ねぇ、リンドウちゃん。そいつ殺して」
そして、冷めた声でそう命令を出す。
リンドウは、兵士かもぎ取った腕を数秒程、眺めた後。
その場にしゃがみ、丁寧な仕草で腕を置く。
それは"人から腕をもぎ取った"彼女の残虐さとは、あまりにも不釣り合いで、
違和感しかなくて、寒気を感じる光景であった。
その時。
女王の前に、ヒノが立つ。
「・・・何?」
女王の表情に、苛立ちが見る。
「・・・女王様。彼は、本当に必死に働いていました。どうか、考え直してあげてはくれませんか」
ヒノは、女王の座る椅子の前に膝を付いて、そして頭を下げた。
「彼に、もう一度チャンスを上げてくれませんか」
額が地面に付く程に深く、頭を下げるヒノ。
「・・・はぁ」
それを見て女王は、大きく溜息をついて。
ヒノの後頭部を、足で踏みつけた。
「ぐッ・・・!?」
それも、軽くではない。
ヒノの頭を地面に擦り付ける様に、脚に力を入れている。
「ヒノぉー、どうせ次に言う台詞は、また"私が罰を受けます"でしょ?
それとも、他に誰か選ぶ? 選ぶの? ねぇ?」
「う"ぅ・・・ぐっ・・・」
ヒノは何も言わずに、されるがまま床に顔を擦り付けられていた。
・・・。
「さ、リンドウちゃん。その男を殺して。そしてバラバラにして、全部床に並べるの」
女王にさっきまでの楽しげな雰囲気は無い。
淡々とした冷たい声色である。
・・・。
リンドウが無表情な顔で、男性兵士を視る。
まるで銃口の様な、人間らしさのない無機質な視線が、男性兵士に狙いを定める。
恐らく一瞬でバラバラに解体されて死ぬ。
理不尽に殺されてしまうだろう。
僕は、
「・・・おい」
いい加減、見ていられなくなってしまった。
「やめろ」
そして、仕置き部屋のど真ん中に躍り出る。
「リンドウ、君は―――兵士を殺すなんて命令は、止めろ」




