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シロと呼ばれた白い子犬 ~拾われた新しい命、その後の物語~  作者: 立花ユウキ
第2章 シロは……『シアワセ』になれるのだろうか?
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第10話 白い犬と、そして皮肉な新しい出逢い……

 ―それから半年後


「よしっと! 今日はウチで初めての患者さん(・・・・・・・・)だからな! シロ、オマエもしっかり頼むからな!」

「(コクコク)」


 獣医の山中さんはあれからおじいさんの遺言どおりに遺産を相続し、保健所を辞めて兼ねてからの夢であった『1つでも多くの命を救う』を胸に懐き、このNPO団体『siro家』を設立したのです。名前の由来はシロとおじいさんの名前から取ったものでした。


 NPOとは言ってもその活動のほとんどがボランティアが中心で、運営資金はおじいさんの遺産とわずかばかりの寄付のみで賄わなければなりませんでした。

 

 保健所で処分されてしまう犬や猫などのペットの里親を見つけるのが主な業務でしたが、このたび新しい試みを実験することになったのです。

 その試みとは……犬や猫達と触れ合うアニマルセラピーを目的とした『カフェ』でした。


 『アニマルセラピー』とは、何かしらの理由で心に傷を負った人を犬や猫達と触れ合うことで、心の傷を癒すことが目的です。患者さんは犬や猫と遊んだり、触れたりすることで『命の温かさ』に触れ、心を癒す。そして『本来の心(・・・・)を取り戻してもらう』のが狙いの治療法です。


 もちろんここにいる犬や猫達は、本来なら保健所で処分されてしまうペット達です。その子達を引き取ることで、1つでも多くの命が救え、そして人間の心を癒すことができる。


 またその場所は昔児童擁護施設だったおじいさんの家だったので、固定資産などの税金のみで家賃もかかりません。それに保健所から引き取る際には費用がほぼかからないので、まさにすべてが上手くいくっと言った事柄だったのです。


 獣医の山中さんは自分の夢へと奔走し、色々な手続きやペット達の受け入れ態勢、近隣の病院との提携、ボランティアで活動してくれる人達を集め、おじいさんが亡くなってから半年かけてようやく今日に至ったのです。


 初めはまだペットを飼ったことがない人に対し、ペットを飼う苦労を知ってもらうために貸し出す『ペットのレンタル店』を考えていましたが、貸し出したペットに負担がかかるなど色々と問題があるとの考えに至り、気軽に立ち寄れるようなカフェスタイルにしたのでした。


 そして、その最初の患者さんの相手をするのが『シロ』だったのです。

 シロは性格も大人しく、いつも元気に遊びまわり、また人間の言葉を理解するように利口だから選ばれました。


「こんにちわ~。今日はよろしくお願いしますね~」


 ついに初めての患者さんが来たようです。看護師さんに連れられて、車イスに乗って来たようです。


「(えっ? こ、この子は……)」


 シロはその患者さんの姿を見た瞬間、言葉を失ったように固まってしまいました。見るとその患者さんは手や足だけでなく、右目を隠すように包帯を巻いていたのです。

 そしてその患者さんには……利き腕である右腕がありませんでした。


「こちらこそ、アニマルセラピーをするのは今日が初めてなんで、よろしくお願いしますね!」


 獣医の山中さんは少し緊張しているのか、いつもとは違い堅苦しい挨拶をしていました。


「この子が……そうなんですね」

「ええ。実はこの子……先月交通事故に遭ってしまって両親を亡くしたばかりなんですよ。それで少しでも気を紛らわせるために連れて来たんです。だからよろしくね、おチビちゃん」


 看護師さんは、シロの頭を撫で優しそうに微笑んでいました。ですが……シロはその患者さんから目を離せませんでした。



 何故なら、その事故に遭ったという患者さんは…………シロの最初の飼い主だったあの男の子だった(・・・・・・・・)のです。

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