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バムトケロ諸島 ウリノガラゴ港 1「荷揚げ」(2)


「だからいわんこっちゃない。コオ、気をつけてくれよ」


 歩く巨人に向けて腕を組み忠告するキイの顔が側面の映像板で大写しになったところでコオの我慢も限界を迎えた。


「キイス! どこが最新・最高の人造貝路だよ!? 感度は最低、反応はぐだぐだ、こんなのなら、そこらの貝殻を磨いてはめた方がマシだって!」


 誇張でも何でもなく、コオ以外の御士であれば、この機体を歩かせることすらままならないはずなのだ。けれど、相手はコオの弱みを知り尽くしていた。


「そうは言ってもね、コオ君。いくら戦場の廃品からくみ上げたポンコツとはいえ、君が乗っているのは遺跡級従機。そこらの民生従機とは部品の規格が違うだろ?」


 わかっている。だからこそ、コオもここまで不満を押し殺さなければならなかったわけだ。

 部品の入手利便性を考えれば、圧倒的に民生従機に分がある。程度の良い民生従機を手に入れる機会はいくらでもあった。


 だが、どれだけ欠陥まみれの廃材機であろうと、遺跡級従機のこいつには、民生従機にない強みがある。圧倒的な伝気効率。特に、拳と射出杭への通伝性は、民生従機にまねできないものである。

 単に、荷揚げ屋だけをするなら、民生従機に乗り換えるべきなのだが、コオの中の捨てきれない思いが、この金食い虫のガラクタを手放せない原因となっていた。コオは従機がないと何も出来ない。逆に、従機さえあればそれなりのことはできる。だからこそ、従機に乗っているときに、力不足を感じることだけは避けたかった。過去の苦い記憶が脳裏をよぎる。


「コオ君? 聞いてるか~い? 早く積み荷を降ろそうぜ」

 内向きの思考にとらわれて、手が止まっていた。そのあたりのことを知ってか知らずか、相棒はのんきな声で現実に引き戻してくれた。

「わかったよ、話しは仕事の後だ」

 そう言って軽く息をついでとぎれかけた集中力を取り戻す。とにかく、今は積み荷を降ろそう。


 改めて機体の制御を確認する。荷箱をゆっくりと降ろしていく。下の箱の真上に積み上がったところで機体の把指に脱力の指示を出すが、安堵のため息よりも先に舌打ちが出た。傍目には、きちんと積み上がったようにみえることだろうが、狙いより親指の爪半分ほど右にずれている。右膝の不調を考慮しながら作業したつもりではあったが、修正しきれなかったようだ。


「キイス! やっぱり半指分のズレだ。上架しての修理がいるよ。従渠《ドック》の手配はしといてくれよ」

 拡声器に向ける声には隠しきれない苛立ちが混じった。

 通常機動での動作に半指ほどもズレがあるなら、戦闘機動ではどれだけの歪みになるか。「些事を疎かにするなよ」という懐かしい説教が聞こえた気がした。


「荒れてるねぇコオ、らしくないよ? ちゃっちゃと終わらせなよ。飯にしないかい?」

 張りのある声が機体越しに伝わる。荷揚頭のモウラがからかうように声をかけてきた。


 ガラゴ島随一の、というよりは唯一の貿易港ウリノ・ガラゴの荷揚を束ねる女傑は、筋骨隆々とした荷下ろし屋が集まる中でも際だった上腕の太さを誇っている。だからといって、胸にさらしを巻いただけで、よく日に焼けた褐色の肌を惜しみなく晒すのは若い女性としてどうかと思うのだが。


「わかったよ、モウラ。あと2つ、すぐに終わらせるから」


 病弱の父親に代わってこの港を守るこの女傑は、何かとコオ達に便宜をはかってくれていた。彼女の支援がなければ、そもそもコオがここに根付くことも出来なかったので感謝している。感謝はしているのだが、人使いが荒いのは玉に瑕だ。 


 先ほどから右膝をかばう機動はしていないが、機体の安定に不足はない。どうやら、しばらくごまかしが効くようだ。左右の操縦把を前後に交差させ機体の向きを変えた。コオが望むほどの精度は得られないが、荷下ろし程度の作業なら問題ない。

 コオは拡声器越しにキイスに誘導を頼むと、作業の続きに取りかかった。


  *


 それにしても、とモウラは目の前の異常な光景を見つめていた。

 従機をさして「機械仕掛けの巨人」とはいうものの、一般的な従機には人間のような「頚部」がない。頭は強度を上げるためか、胴体に半ば埋め込まれた形であり、兜を縦におしつぶした鎧武者のようだと表現される。つまり、従機とは控えめにいっても無骨、有り体に言えば不格好なものだ。大きさが生み出す威圧感こそあるものの、挙動もなめらかとは言いがたく、動くたびにやかましい音がする。

 けれど、コオの操る従機は、まるで違う挙動を見せていた。ほとんど上下にも左右にぶれることなく、なめらかな重心移動を行い、足音もすくなく滑るように動いていく。遠目で見たならば、練度の高い完全装備の機甲衛士が歩いているようにすら映るだろう。


 コオは相変わらず機体の不調への不満を漏らし、キイスとやりとりをしていた。これで不具合があるってのなら、彼は一体どれだけの動きを理想としているのだろう。モウラは場末の荷揚げ作業に不似合いなコオの技量についてあらためて疑念を抱いた。

 だが、すぐにその思いを打ち消す。彼らが訳ありなのは初めからわかっていたことだ。

 モウラは人を見る目には自信があるつもりだ。大丈夫、とりあえずは、しっかり働いてもらえるさ。





「従機」機体のイメージについて問い合わせがありました。


伸童舎 ワースブレイド「操兵」の下級機体「従兵器」がイメージの原型です。

ただし、SFであるため、アートディンクのカルネージハートのOKE、を意識しています。

また、ロストテクノロジーを補うため、甲獣の甲羅をみにまとうので、羽のないオーラバトラーのような曲面構成の機体が多くなるでしょう。


と、思っていたら、「鉄血のオルフェンズ」の量産型でイメージぴったりの機体がありました。


作品中で外見や構造は描写する予定ですが、こちらにて情報を提示します。


それぞれのイメージについてリンクを張りたいのですが、著作権規定がわからず、です。申し訳ありませんが、検索していただくことになります。


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