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ほろ馬車にて

 リーングラードへの帰り道、馬車の中でフィオナは可愛らしい寝息を立てていた。


 帝都にきてからイスマ暗殺犯捕縛、

 アルルの依頼、


 と立て続けに事件を解決した。そのどちらにも娘は深く関わり、解決に尽力してくれた。


 賢く、正義感に熱い娘にとって、それは苦ではないだろうが、その小さな身体にはさぞ負担であったろう。


 せめてこの馬車の中ではじっくりと眠らせてあげよう。ゆったりとさせてあげよう。

 

 そう思い膝枕をしてやっていたのだが、フィオナは目をつむったまま唇を動かした。


「ねえ、お父さん、コンラッドさんは天国で娘さんと会えたのかな?」


「会えたさ。会えたに決まっている」


「そうか。よかった。天国って本当にあるんだね」


 娘は目をつむったまま幸せそうな笑顔を浮かべた。


「そうだな、天国はあるさ。コンラッドと娘さんはそこでのんびり暮らすんだ」


「そうだね。きっと、雲の上で幸せに暮らすの。雲は綿菓子でできていて、ふわふわで温かくて、居心地がいいんだろうなあ」


「たぶんな。行ったことがないから分からないけどな」


 と、笑う俺。

 娘も釣られて笑うが、ひとしきり笑うと娘は真面目な表情になった。

 娘は目をつむったまま尋ねてくる。


「ねえ、お父さん、ホムンクルスって死んだら天国に行けるのかな?」


「………………」

 

 その質問を聞いた俺は思わず沈黙してしまう。

 娘がホムンクルスであることは話していない。


 いつかときがきたら話そうとは思っていたが、その決断が付かないまま先延ばししていたのだ。


 娘が俺と血が繋がっていないことを察していることに気がついてはいたが、それは言葉にはしなかった。


 それを口にしてしまえば、今までの関係性が変わってしまうと思っていたからだ。

 娘は、先日のコンラッドの娘を演じたときにそのときに気がついたのだろうか。


 あるいはもっと以前、学院でホムンクルスという存在を教科書で学んだときに気がついてしまったのだろうか。


 元々、不思議な身体を持った少女だ。知識を蓄えるたび、経験を積むたび、自分が人と違うことに違和感を覚えるはずだ。


 互いに口にこそしないが、もはやフィオナは自分がホムンクルスであると確信しているだろう。


 ただ、それがどうした、というのだ。


 もはや俺たち父娘の間に血縁関係などという俗な間柄はいらなかったし、娘がなにものであろうと関係ないことであった。


 俺は目をつむった娘をぎゅっと抱きしめた。


 娘は、

「痛いよ、お父さん」

 と批難したが、暴れたり、抵抗したりしなかった。


「…………」


 俺はしばし沈黙すると、この場でもっとも相応しい言葉を口にした。


「ホムンクルスだろうが、千年賢者だろうが、死んだら天国にいけるさ。もしも、神さまが俺たち『親子』を引き離すというのならば、俺は神さまでも倒すよ」



 娘は目を開けると、にこりと笑う。


「さすがはわたしのお父さん。神さまでも倒してくれるんだね」


 その笑顔は世界で一番愛らしく、世界で一番貴重な笑顔だった。



http://14615.mitemin.net/i283403/挿絵(By みてみん)


フィオナ「読者のみなさん、買ってね♪」

これにて第二章は完結です。次回からは三章です。


みなさんのおかげでここまで書き上げることができました。

引き続き応援ください。

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