挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
最強賢者の子育て日記 ~うちの娘が世界一かわいい件について~ 作者:羽田遼亮

第三章

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

114/115

互いに背負うもの

 皇女様いわく、馬小屋で開かれた会談は有益なものであった。
 クロエの作るビーフシチューは美食家のヴェロニカを満足させるものだった。

 また娘との会話も彼女の食欲を刺激したらしく、ふたりは楽しげに会話をし、シチューとパンを交互に口に運んでいた。

 娘は尋ねる。

「ヴェロニカさんはノイエ・ミラディン帝国のお姫様なんですよね?」

「いかにも」

 偉そうに答えるヴェロニカ。

「いいなー、わたし、お姫様になってみたかったんです」

「女の子の夢のひとつだな」

「そうですね、女の子の夢ベストスリーは、いつも時代も、お姫様、お嫁さん、お店屋さんですからね」

 と、クロエは追従する。

「まあ、お嫁さんとお店屋さんは父親のがんばり次第でどうにでもなるが、お姫様だけは無理だからな。王様の家に生まれれば放っておいてもなれるのだけど」

 俺がそんな一般論を述べると、ヴェロニカは否定する。

「そんなことはない。あとからお姫様になることもできる」

「どうやってなるんですか?」

 星のように目を輝かせる我が娘。
 年頃の少女だけはあり、お姫様という単語に目がないようだ。

「簡単だ。きみの父上、カイト殿が王になればいい。さすればきみは自動的にお姫様だ」

「なるほど」

 と、得心する娘。
 じいっと俺を見つめてくる。

「お父さん、お父さんは王様になる予定はないの?」

「王様はそう簡単になれないんだよ」

「たしかにそうだね」

 と、無邪気に笑う娘。お姫様になりたい、とは半分冗談なのであろう。

少女ならば誰しもが憧れる夢であるが、大人になっていく過程で皆諦める夢でもある。

 我が娘はこの年にしてかなりのしっかりものであるから、そのような選択肢はとっくの昔に放棄していたのだろう。

 しかし、ヴェロニカという皇女はあっさりとその選択肢を復活させる。

「きみの父上、カイト殿が我が婿になってくれれば、きみもお姫様になれるのだが」

「ほんとですか?」

 再び目を輝かせる娘。

「本当だとも。我は皇女だからな。将来、帝位を継げば義理の娘であるきみは自動的にお姫様になる」

 じい……、
 っと、再び俺を見つめてくる娘。
 フィオナはそれほどまでにお姫様になりたいのであろうか。
 そこまでなりたいのであれば、娘のため、この皇女様を妻とするのも悪くないが。
 そう考えていると、フィオナは耳打ちしてくる。

「お父さん、わたし、お父さんの結婚には反対しないけど、わたしをお姫様にしたいとか不純な理由で大事な奥さんを選ばないでね」

 そう釘を刺してくる。
 どうやらフィオナは俺がヴェロニカに懐柔されないか心配らしい。
 その光景を見てクロエはくすくすと笑う。

「これではどちらが大人か分かりませんね」

「違いない。まあ、忠告通り、女帝の旦那の座に目がくらんで結婚しないようにするよ」

 俺がそう言うとヴェロニカは明らかに表情を暗くし、肩を落とす。
 どうやらまじで俺に惚れているらしい。

「こんな研究馬鹿のどこがいいんですか」

 俺がそう漏らすと、娘がフォローする。
 俺ではなく、ヴェロニカの方を。

「ヴェロニカさん、勘違いしないでくださいね。ヴォロニカさんが駄目とかそういうんじゃなくて、ただ、お父さんがわたしのためにお嫁さんを選ぶのがよくないと思っただけなんです」

 フィオナはあたふたとフォローを入れる。
 お父さんのお嫁さんはわたし!

 と、昔みたいに宣言してくれないのは少し寂しいが、娘が俺を思う気持ちは嬉しい。

 娘は俺が伴侶を選ぶ基準に自分という存在を加味せず、自由にして欲しい、そう言っているだけであった。

 父親としては嬉しい気持ちである。
 ただし、皇女様としては困る展開であった。
 いわく、俺を夫とするため、このような辺境の地まできたのだそうだから。

 皇女はそれでもフィオナを懐柔しようとするが、いったん、その話は横に置く。容易に決着がつく話ではないし、そもそもこの皇女様と出会ってまだ半日も経っていない。

 クロエいわく、「恋に落ちるのに適正時間はない」そうであるが、結婚を決めるのにはそれなりに時間が必要であろう。

 そういった論法で皇女様を説得すると、本題に移ることにした。
 まずはフィオナを見つめる。
 相変わらず可愛らしい。

 聖女のように清らかで、天女のような愛らしさがある。このままずっと鑑賞していたいが、これから皇女と話す内容を娘の耳には入れたくない。

 俺はクロエに軽く目配せし、席を外させる。

 クロエは「あうん」の呼吸でわずかにうなずくと、

「フィオナさま、ヴェロニカ様にお出しするデザートを作る手伝いをしていただけませんか」

 と、フィオナを台所に誘った。

「デザート?」

 可愛く首をかしげる娘。

「はい。ヴェロニカ様は遠路はるばる帝国からいらしたのです。公都の名物デザートを召し上がってもらおうかと」

「名物ってミルフィーユ?」
「そうです。お手伝い願えればさいわいです」

 フィオナがクロエの頼み事を断ることなどない。娘は素直にクロエの後ろについて行く。

 途中、軽く振り返り、あふれんばかりの笑顔で、

「お父さん、それにヴェロニカさん、待っていてくださいね。とても美味しいミルフィーユを焼いてきますから」

 と宣言した。

 その仕草や声にとろけてしまいそうになるが、かろうじて踏みとどまり

「楽しみにしているよ」

 と、娘を送り出す。
 フィオナが居間からいなくなると、ヴェロニカはこう言った。

「可愛らしい娘さんだ」

「それには同意です」

「是非、義理の娘にしたいところだが」

「そのやりとりは済ませたでしょう」

「だな。しかし、諦めたわけではないからな。彼女は、「お嫁さんを決めるときわたしのことなど気にせず決めて」と言ったが、我が駄目だとは言っていない」

「まあ、たしかに。ですが、やはりその話はまた今度。今はもっと重要な話がしたい」

「そのとおり。互いに背負っているものがある」

「ですね。俺は娘というこの星よりも重い命を背負っています」

「我は帝国臣民数千万の命を背負っている」

「背負うにしては重すぎますね。互いに」

「たしかに」

 双方、苦笑を浮かべると、千年賢者と皇女は腹を割って話し合うことにした。

『宝くじが当たったのでレベル1から聖剣を買ってみる』

宝くじで一等を当てた少年が聖剣を買いダンジョンの最深部を目指すお話です。

面白いので是非、こちらもブックマークしてください。今月28日発売予定です

http://ncode.syosetu.com/n2974ef//

↑上記URLをクリックすると小説家になろう版を読むことができます。

a

↑上記画像をクリックすると公式サイトをご覧になれます

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ