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婚約者は9歳のお姫様!?  作者: 白髪銀髪
出会い~お披露目編
9/314

準備

「パーティーですか?」


「うん。父様や母様にも相談したのだけれどね。この間のハウムクーゼン卿や、ニルヴィアナ姫のこととも関係があるのだけれど、まだ、僕とルーナが婚約者だということを知らない人は国内外を問わず、大勢いる。もちろん、僕はルーナから目を離したりはしないつもりだし、出かけるときには護衛の人や、陰から見張っている人もいる。だけど、やっぱり、ルーナの存在をしっかり国民にも知っておいてもらいたいんだ」


 それに、ルーナはまだ9歳で学院にも通っていない。

 僕や姉様は10歳から15歳くらいまでの間に、学院へ通っていた時期もあったため、友人と言える人たちも少なからずいる。

 ルーナにもきっと友人ができるだろうけれど、学校に入る前から同い年くらいの友人と呼べる子たちもいた方がいい。そういう意味でも、いい出会いの場になるかもしれない。

 それはもちろん、ルーナに限った話でもない。

 それに、僕が自分の素敵な婚約者を自慢したいというのもある。


「どうかな、ルーナ。もちろん、ルーナが嫌と言うならやめるけれど。正直に答えて欲しいな」


「いえ、私は嫌ではありません」


「ありがとう、ルーナ」


 さて、これから忙しくなりそうだ。




「そういうわけで、パーティーを開くことにしたから、皆も協力をお願いするよ」


 まずは、城で働いている人たちにパーティーを開く旨を伝える。

 料理人も、庭師も、メイドさんたちも皆、張り切ってくれるようだった。

 僕が伝え終わると、皆、やる気に満ちた声を返してくれた。そのため、今城はかなりの熱気にあふれている。

 もちろん、国民全員が城壁内に収まるはずがないので、全員に知らしめるとなると、場内のパーティーだけでは場所も、規模も、期間も、全然足りない。そのため、パーティーの開催に合わせて、国でも催事を催すことにした。収穫祭にはまだ大分はやいけれど、納涼祭ならば丁度いいかもしれない。納涼祭開催のお知らせを出したことで、街にも活気があふれている。

 僕も公務がどっと増え、ルーナと一緒にいられる時間が少なくなってきている。ルーナはルーナで、母様や姉様に捕まって、色々とドレスの試着をさせられたりして大変そうにしているらしい。

 そんな風にして時間は飛ぶように過ぎていったのだけれど、一つ懸念があった。




「ルーナ。ルグリオだけど、今大丈夫かな?」


 昼間は忙しくて周りに人が大勢いるため、とても二人きりで内緒話なんてする暇はない。ルーナも疲れているだろうけれど、本当に忙しいのだ。そのため、一日の仕事が終わった夜に、僕はルーナの部屋を訪れた。


「はい、ルグリオ様。大丈夫です」


「失礼するよ」


 ルーナはネグリジェ姿で髪を梳かしていた。月の光を浴びて煌く銀糸が、ルーナの小さな手から零れている。


「邪魔してしまってすまなかったね」


「いえ、そのようなことはありません」


 ルーナは櫛を置いて、僕と向き合ってくれた。


「どうかなさいましたか?」


「うん。話したいことはたくさんあるけど、一つだけ。人前ではできない話だからね」


 ルーナは察したようだったけれど、黙って聞いてくれた。


「パーティーと祭りの日のことだけれど、その日は大丈夫そうなのかな?」


「……わかりません。おそらく、日中のパーティーの間は大丈夫だと思われるのですが、夜中まで続くお祭りの方は、正直、その時になってみなければ何とも言えません」


 納涼祭というだけあって、開催される時間は夜になる。しかも、おそらく、満月に近い日になるはずだ。せっかくのお祭りだし、主役といっても差し支えないのだから、ルーナと一緒に色々回ってみたいけれど、いつどこで呪いにより変化してしまうともしれないルーナを、夜に部屋の外に連れ出したくはなかった。

 もちろん、国民がそれでどうこう陰口を叩くことを心配しているわけではない。ただ僕の独占欲のためだ。

 ルーナも自分の姿を晒すことには抵抗があるようだけれど、僕の想いの方がずっと大きいだろうと確信している。男とはそういう生き物なのだ。


「そうだよね。ごめん。僕の方でどうにか方法がないか探してみるよ」


 何かこう、僕とルーナだけで場所から場所へと転移できるような、そんな魔法があればいいのだけれど。そんな便利な魔法があったら、知られていないわけはないし、うまく使えば有用だけど、悪用の方が簡単に思いつく。まあ、あるはずもないけれど。





「転移する魔法? そんなのあるに決まっているじゃない。そういう便利さを人が追及しなかったとでも思っているのかしら?」


 翌朝、母様に聞いてみた。そうだよね。あるはずがないよね。そんな便利な魔法なんて。


「って、あるのですか?」


「ええ、あるわよ」


 母様は美しい笑顔で微笑んでいた。


「それは、一般的に流通しているものでしょうか?」


「うーん、どうでしょうね。コーストリナ王国では先代様も、先先代様もお使いになられたようだけれど、一般的かどうかはわからないわ。あの人が王位を継ぐときに引き継がれる書物にそういうことが記されたものがあったけれど……」


「母様もご存じなのですか?」


「ええ」


 そう言ったかと思うと、母様は急に僕の後ろに現れた。


「もちろん、自分の知っている場所であれば、特に制限なく移動できるはずよ」


 再び母様の姿が消え、今度は部屋の扉を開けて外から入ってきた。


「それから、わかっているとは思うけれど、便利なだけではなく悪用も簡単にできるわ。だから、これを無暗に使用することはできないのよ」


 でも、と母様は続けた。


「あなたもお嫁さんを迎えるわけだし、大切な人を守るためには必要かもしれないわね」


 決して悪用してはいけませんよ、と念を押され、早朝にもかかわらず、その書物の保管場所に案内してくれた。




「この本棚の本には魔法が掛けられているみたいで、どうやら私達王家の人間にしか読めないみたいなの。嫁いできた私が読めるというのも不思議な話だけれどね」


 母様は僕を先導して書庫の中を歩いていく。

 壁まで辿り着くと、手をかざした。

 すると、壁が動いてさらに本棚が出現し、母様はその中の1冊を取り出すと、僕に渡してくれた。


「ここの本棚には、先代までの方々が必要だと思われたことを記された書物が並んでいるわ。あなたも暇を作って、一度は目を通しておきなさい」


「はい」


 僕は、必ず全部読んでおこうと心に決め、とりあえずは渡された書物を読むべく部屋へと戻った。



 朝食をとると、すぐに部屋へ戻って本を読み始める。

 たしかに、今は忙しくてこんなことをしている場合ではないと言われるかもしれない。けれど、僕にとっては重要な義務であり、権利だ。婚約者を守るというのは。


「なるほど。これが母様が使われていた転移の魔法だな」


 まずは近場からと思って、机からベッドまで移動する。……成功。


「……たしかにこれは便利だ。しかし、こんなに便利な魔法があると人をダメにするな」


 もちろん、個人の能力に左右はされるだろうけれど、僕たちの家族は皆問題はないだろう。もちろん、ルーナも。

 他にも色々、便利な魔法が記述されていた。

 例えば、収納の魔法。別の空間にものをしまっておけるというあまりにも便利過ぎる魔法だ。

 例えば、分身を作る魔法。時間は短いけれど、これも便利な魔法だ。


「隠す理由もわかろうというものだな」


 ルーナとも一緒に読もうと思って、さっそく収納の魔法を使うと、本を隠してルーナの元へ向かった。


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