表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/314

学院生の関心

 私たち1年生だけではなくおそらくすべての学生に衝撃を与え、興味関心の的、話題の中心になっていた対抗戦が終わると、その興奮も冷めやらぬ中ですぐに収穫祭がやってきます。

 つい先日までは対抗戦の話題で盛り上がっていたエクストリア学院でも、コーストリナ全体が収穫祭に向けて盛り上がっていくのに合わせて、対抗戦での気持ちの盛り上がりを持ち続けたまま、生徒の関心も移り、やる気も上がってきています。

 対抗戦では見ているだけだった、特に先輩方の中には自分たちでお店を出そうと計画されている方もいらっしゃるようで、寮の食堂やホールには朝の登校前から夕食の後夜中近くまで大勢の学院生が、ああでもないこうでもないと楽しそうに議論を交わしていらっしゃいます。


「夏季休暇のころから準備を進めてこられた先輩もいらっしゃるみたい」


「学院での普段の生活、対抗戦の準備なんかとも並行して収穫祭の準備までされているなんて」


 私たち1年生はそこまで手を回すことができないでいるのか、もしくは見て回って楽しもうと考えているのか、特に集まって何かをしようという雰囲気には今のところなってはいません。学院に入ってからは初めてのことなので、とりあえずは様子見と思っている方が多いのでしょう。それでも、興味自体は物凄く惹かれているようで、教室でも、寮でも時間があれば収穫祭の話で盛り上がっています。

 私も例にもれず、アーシャやメル、他の寮生やクラスメイトの方々とも一緒になって収穫祭の展望を語り合っています。




「もしかして、ルーナは何かやってみたいことでもあった」


 夕食の後、ホールがとっても混雑していてとても勉強できる雰囲気ではなかったので、資料だけ部屋に持ち込んで勉強していると、同じく部屋で私の正面に座ってノートや書物を広げているアーシャに雑談交じりにそんなことを尋ねられました。


「いえ。クラスメイトや他の寮生の方が何かされるようで頼まれるのであれば、お手伝いさせていただくのもやぶさかではありませんが、コーストリナの収穫祭自体には前回も参加させていただいたのですが、学院に入学してからは初めての収穫祭なので今回は見て回ろうと思っています」


「もしかして、ルグリオ様と約束でもされているの」


「明確に約束しているということはありませんが、収穫祭自体には参加されるはずなので、もしかしたら会うことができるかもしれません」


 前回も国王様、ヴァスティン様が開始の宣言をされる場にはいらっしゃいましたし、その後には一緒にお祭りも見て回りました。


「ってことは学院にもいらっしゃるかもしれないということ」


アーシャの声にも期待が込められています。


「確証はないのではっきりとしたことは言えませんが。でも、いらっしゃられたら嬉しいとは思います」


ルグリオ様もお忙しいので、学院まで足を伸ばしてくださるかどうかはわかりませんが。


「ルグリオ様、ルーナのことを想っていらっしゃるから学院にも姿を見せられると思うけどな」


「そうでしょうか」


それでも会えたら嬉しいです。


「楽しみだね」


「そうですね」


後は前回のときのような事件が起きないことを祈るだけです。






 遅くなりすぎると成長にもよくありませんし、健康にも良くないと聞いているので、勉強を適当なところで切り上げると、片付けてベッドに入って明かりを消します。


「ねえ、ルーナ」


「なんですか」


布団をかぶったところでアーシャに声をかけられたので、身体を転がしてアーシャの方へ向けます。


「この前みたいにルーナが色んな衣装を着て接客すれば、かなりお客さんが入ると思うんだけど」


かなりの願望、もしかしたら欲望かもしないものが込められた視線を向けられます。私の邪推かもしれませんが、声もどことなく甘く聞こえます。


「そんな目で見てもやらないものはやりませんよ」


「私たちも一緒に着るからさあ」


「そういう問題ではありません。大体、衣装は全てセレン様が持っていかれたのではなかったのですか」


「まだまだたくさんあるんだよ。あれからも何故か増えてるし」


「あまり聞きたくない情報でした」


「ふふふっ。でも、せっかくのお祭りなんだからさ、ルーナも考えておいてよ」


「ええ、わかりました」




 この時は考えるだけですからと私は気楽に構えていました。つまり、クラスメイトの情熱をまったく測れてはいなかったのです。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ