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セレン様も結婚されてもおかしくない年齢でいらっしゃいますよね

「それじゃあルーナそれにメル、また休暇明けにね」


「ええ、また」


「じゃあね」


 夏らしく空からは太陽光が降り注ぎ、地面からの反射熱、生徒の混雑による熱気も相まって待つのが大変な気候の中で、学院の門の前でアーシャやクラスメイトたちと別れた私とメルは、男子寮から出てきたレシル、カイと無事合流できました。無事というのは比喩ではなく、迎えに来てくださったルグリオ様とセレン様が乗られている馬車が、予想通り学院生に囲まれていて大変だったからです。


「皆、学院はどうだった?」


 私は女子寮でメルとはよく顔を合わせてはいたのですが、レシルとカイのことはたまにメルの口からクラスでの様子を聞くくらいしかなかったため、男子寮の方の話しなども聞くことが出来ました。

 レシルもカイも、レシルは同学年と比べて年齢が上なのですが、そんなことは気にせず友達や上級生とも楽しく過ごせているようでした。

 




「セレン様、何かおありになったのですか?」


 お城へと向かう馬車に揺られながら私たちは他愛のないおしゃべりに花を咲かせていたのですが、日をまたぎ、お城に近付くにつれてなんとなくセレン様のお顔が曇ってきているように感じられました。


「何もないわよ」


そう言われたセレン様の表情もどことなく優れないものでした。


「どうせ分かってしまうことだし、話しておいた方が衝撃も少ないと思うけど」


 しばらく沈黙が続き、とうとうルグリオ様が口を開かれました。


「この前、姉様がお城から抜け出したときのことなのだけれどね、その抜け出した先から姉様に求婚している方がお城までいらしてしまっているんだ」






「ええええええええええええええええっ」


「セレン様、ご結婚なさるんですか」


「お相手は、お相手はどこのどなたなのですか」


 私たちの受けた衝撃はそれは大きいもので、特にメルはとても興味がある様子でした。私はあまりの衝撃に言葉を失ってしまっていましたが。

 ですが、考えてみればセレン様ももう18歳になられているはずなので、ご結婚されてもおかしくはない年齢です。もっとも、今のご様子からはあまり乗り気ではないようですけれど。


「マーレス殿下とは違って、ハルミューレ様は誠実そうな方で母様とも気が合われるみたいだし、僕も話すのだけれど、実際に話してみた感じでは誠実で優しそうな方なのだけれどね」


 なんでも、ハルミューレ様はセレン様が城から抜け出した先から追いかけて来られた、輝くような眩しい赤っぽい金髪が特徴の方なのだそうです。


「父様が反対しているからまだ城の中に入れて貰えていないはずだけれど」


「セレン様はどう思っていらっしゃるのですか」


 馬車の外を眺めていらっしゃるセレン様は何か考え込まれているようで話しかけることも躊躇われたのですが、ルグリオ様が話題に出されたのは私からも聞いて欲しいということなのかと思い、本当はとても気になっているのですけれど、努めて平静な口調を装って尋ねました。


「どうもこうもないわ。向こうが勝手に言っているだけなのにお母様もお父様も騒ぎ過ぎなのよ」


 セレン様はどうでもよさそうな口調で、勘弁してもらいたいわとつぶやかれました。


「でも、セレン様を想ってお城までいらっしゃるなんて素敵な方ですね」


「ただストーカー気質なだけではないかしら」


 メルの想像をセレン様はあられもないおっしゃり方で粉砕されましたが、メルの耳には届いていないようでした。



「そろそろいいかしらね」


 学院から大分離れ、人目もなくなってきたころを見計らわれて私たちは馬車ごとコーストリナのお城へ転移しました。

 城壁の中に転移した為、そのハルミューレ様とはお顔を合わせることができませんでした。



「セレン、よく無事で戻った」


 帰省の報告のために玉座の間へと向かうと、うろうろと落ち着かないご様子のヴァスティン様がアルメリア様の制止を振り切られて駆け寄っていらっしゃいました。


「今度は何事もなかったようだな」


「あなたは少し落ち着きなさい。皆が帰ってきたのですよ」


 アルメリア様はヴァスティン様を引きずられて椅子に座らせると、いいですねと言い聞かせていらっしゃいました。




「ルーナ。ハルミューレ様に会いに行ってみるかい」


 お城に着いてから1日過ぎて旅の疲れも、といっても転移したので、実際にはそれほど疲れてはいなかったのですけれど、十分に回復したころに、ルグリオ様に尋ねられました。


「私がお会いしても大丈夫なのでしょうか?」


「うん。話したときにルーナのことも今度紹介すると伝えていたからね」


「わかりました」


 私は部屋着から着替えると、ルグリオ様と一緒にハルミューレ様がいらっしゃるという城壁、門の外へと向かいました。




「これはルグリオ殿、お忙しいところいらしていただいて」


「いえ、そんなことはないです、ハルミューレ様」


 おっしゃられていた通り、ハルミューレ様は眩しく流れる赤っぽい金髪で、ルグリオ様よりも少し高めの背丈とがっしりとした体格をお持ちの好青年風の方でした。


「こちらの方は?」


 ハルミューレ様が私に気付かれたようで、ルグリオ様が紹介してくださるのに合わせて、私もしっかりとお辞儀をしました。


「こちらはルーナ・リヴァーニャ姫。アースヘルムからいらした僕のお嫁さんになる大切な人です」


「初めまして、ハルミューレ様。ルーナ・リヴァーニャと申します」


 ハルミューレ様は、私が10歳だというのはお聞きになられていたご様子でしたが、それでも一瞬目を見張られ、それでもしっかりと名乗っていただけました。


「これはご丁寧に。私はハルミューレ・セラグレイスと申します」


 私たちが挨拶を済ませると、ルグリオ様とハルミューレ様はその場で話し始められました。

 私は戻っていてもいいよと言われたのですけれど、その場にとどまりました。


「申し訳ありません、姉様は変わらない調子で」


「お気になさらないでください。最初に会ったときからほとんど相手にされていませんから」


 長期戦の構えです、とハルミューレ様は笑っていらっしゃいました。







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