残念会
すみません。PCの調子が悪いのでこんな時間で短めになってしまいます。
その日の夕食は豪華でした。食堂だけでなく寮全体がパーティーでも開かれているかのように飾り付けられていて、机にはたくさんの色とりどりの料理が並べられていて、緩やかな音楽が温かい空間を作り出しています。
「残念会だからね。来年への活力をつけるためと、落ち込んだまま試験に臨んで、成績まで沈み込まないようにするためにね」
私たちが食堂に入ると、両手いっぱいの料理を運ばれていたトゥルエル様に声をかけられました。
上級生や同級生もほとんど全員が参加されていて、どなたにもあまり落ち込まれているような雰囲気は感じられません。
「よお。遅かったじゃないか」
飲み物を片手にご友人と語り合われていたアイネ寮長も、目に見えて落ち込まれているご様子ではありません。
アイネ寮長はご友人に一言二言告げられて席を外されると、私たちのところまで来られました。
「アイネ先輩。この度は選手に選んでいただいたのにも関わらず、お役に立てず申し訳ありませんでした」
「役に立たないなんてことは全然なかったよ」
アイネ先輩は屈まれて、私とアーシャの肩を抱き寄せられると、頭の後ろで囁かれました。
「アーシャは出場していなかったけど、ルーナは出場していたな。私は攻撃に男子寮の方へ行っていたから直接見てやることはできなかったけど、実際に参加してみてどうだった」
私は先ほどの戦いを思い出します。私は任されていた自陣の防衛も、攻めて来る男子生徒の迎撃も、もちろん最善は尽くしたつもりではありますが、上手に出来たと胸を張って言い切ることは出来ません。魔法にしても、体力にしてもたくさんの課題が残りました。それでも。
「私は参加できて楽しかったです。倒れるまで立っていたのも初めての経験でしたし、他人を攻撃するというのにはなれませんでしたけれど、良い経験になりました」
「私はルーナや先輩方が戦われているのを見ているだけでしたけれど、それを見て格好いいと思っていました。私はまだまだ魔法も上手く使えませんし、体力だってありません。ですが、今度とはいかないでしょうけれど、きっと私も、そういう風になりたい、と思われるような先輩になりたいです。気が早いかもしれないですけど」
私たちは思いのたけをぶつけました。アイネ先輩は私たちのことを正面から目を細めて見つめられました。
「そうか。だったらこれからも学院で、学外で、先生から、先輩から、同級生から、色んなところでいろんな人からたくさんのものを吸収して自分の力にしていきな。そしてそれを他の人にも伝えていくんだ。例えば来年入ってくる後輩とかにな。伝えられるってことは自分の力になっているってことさ。そうして繋がっていくんだ」
「はい」
私たちの返事を聞くと、よし、と笑われました。
「それじゃ、とりあえず今日のところはこの残念会を楽しみな。来年の祝勝会に向けてな」
「ありがとうございました」
アイネ先輩が去られた後を、私とアーシャは頭を下げて見送りました。
「行きましょうか、アーシャ」
「そうだね、ルーナ」
私たちは一緒に皆の中に混ざっていきました。