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休日の過ごし方

 運動科目が、一日の授業が終了するとすぐにHRがあるため、シャワーを浴びて汗を流している時間などはありません。そのため、私たちは浄化の魔法で身体を清めると手早く制服に着替えます。これに手間取ると、HRの時間が遅れ、結果的にますますシャワーを浴びる時間、もしくは夕食をいただく時間の遅れを引き起こします。


「ようやく明日は休日か」


「ああ、ようやくだ」


「課題がなければ最高なんだけどな」


「それを言うなよ……」


 リリス先生を待っている間、教室では男子生徒も、私達女子生徒も、学院生活最初の休日の話題で持ちきりでした。聞こえてきた話では、学院の探索をされるとか、クラブの見学へ行かれるという方が多いようです。

 クラブには、例えば山岳部といって、その名の通り休日を利用したトレッキングに行かれている方たちもいらっしゃいます。足腰を鍛えられたリ、体力がついたりと所属されている部員のほとんどは男子生徒なのですが、女子生徒もいないわけではないらしいです。

 例えば、料理研究会と呼ばれる集まりがあります。お祭りのとき、例えば対抗戦のときなどにも自作のお菓子や昼食の提供などをされていて、売り上げも良いらしく、毎度、非常に優秀な成績を収められているとのことです。

 例えば、超常現象研究同好会と呼ばれる会に参加されている方たちもいらっしゃいます。

 他にも、魔法を合わせた武術を扱われていらっしゃる方たちや、魔法を使わないという活動をされている方々もいらっしゃいます。

 運動部も、そうではない部もそれは沢山のクラブ、組織があります。


「ルーナはどうするつもりなの?」


 隣に座っているアーシャに声をかけられます。


「そうですね。とりあえずは課題を終わらせるつもりです」


 そうは言ってみたもの、それほど難しかったり、大変だったりする課題は出されていないため、遅くとも明日のお昼ごろまでには十分に終了していることでしょう。


「それが済んだら運動でしょうか」


 普段の私であるならば、図書館へ行って学術書や図鑑を読むなどと答えるだろうところで、運動という言葉が出てきたのは、先程の運動科目の影響が残っていると言われても仕方がありませんし、事実その通りです。


「運動って何するつもりなの、ルーナ?」


 咄嗟に言葉を返すことができませんでした。そういえば、運動とは一体何をどうすればいいのでしょう。運動をするといっても漠然としすぎていて、肝心の内容に関しては具体的なことを何も考えていませんでした。


「寮に戻ったらトゥルエル様にお聞きしてみます」


 リリス様がいらっしゃったので、私たちは一端話を打ち切り席へと着きました。




 



「それなら、寮に飾る花でも採ってきてくれるかい?」


 寮に帰ってトゥルエル様に、休日の過ごし方と、何か運動になりそうなことをお聞きしたところ、そのような回答をいただきました。


「寮に飾る花ですか?」


「そう。たまに、寮にももう少し華やかさがあると良いと思うことがあってね。食堂やホールに飾る花やなんかを採りに行ったりしているのさ」


「それなら、ルーナがいるじゃないですか」


 休日の話をしたところ、私と一緒に話を聞きに来ていたメルがさも当然のような口調で告げます。アーシャも、うんうんと頷いています。


「あんたたち、真面目に聞く気はあるのかい?」


「失礼しました。先を続けてください」


 私は二人の代わりに謝ると、先を話してくださるようにお願いしました。


「この学園の敷地も広いからね。中には机に飾るような綺麗な花を咲かせる植物の生息地もあるんだよ」


「その場所はどこでしょうか?」


「ちょっと待ってな」


 私が質問すると、トゥルエル様は管理人室に入って行かれて、しばらくすると数枚の紙をお持ちになって出てこられました。


「これがそこまでの地図さ。一枚だけだと、なくしてしまって帰って来れなくなるかもしれないからね」


 過去にそのような事態が起こったことがあるかのような口ぶりです。

 しかし、私はそのことについては深く突っ込まずに、頂いた地図をよく眺めます。部屋に戻ったらノートに写しをとろうと決めて、顔を上げてトゥルエル様の顔をみます。


「まあ、それなりにいい運動にもなるし、景色もいい。明日が晴れなら行ってみるのも面白いかもしれないよ。私はあくまで選択肢の一つを提示しただけだから」


 夕食の支度があるからこれで、とトゥルエル様は厨房へと向かわれたので、私たちもお風呂へ向かいました。



 夕食のクリームシチューをいただきながら、アーシャやメルと相談します。


「私は行ってもいいと思っていますけど、皆さんはどうでしょうか?」


「そうね。他の人には他の人でやりたいこともあるだろうし、無理に誘うのもね」


「私は面白そうだと思うし、行ってみたいな」


 メルは大分乗り気でした。


「では、夕食を食べ終えたら、明日のお弁当を作っていただけるかトゥルエル様にお聞きしましょう」


「シズクはどうする?」


 メルが隣に座って夕食をいただいている、ふわふわの淡い金髪の女の子に声をかけています。シズクと呼ばれた彼女は、メルと同じクラスで同室の女の子です。


「起きられたら、私も一緒に行く」


 今も眠そうに目を擦りながら、千切ったパンを口に運んでいます。


「大丈夫、明日の朝も私が起こしてあげる」


「ありがと、メル」


 どうやら、メルに起こされているのはいつもの事らしいです。表情の変化もわかりにくいのですが、今は微笑んでいるようでした。


「それじゃあ、明日朝食を食べたら出かけましょう」


「おー」


「そのためには、今日中に課題を終わらせないといけませんね」


 今度は返事がありません。


「大丈夫です。これから一緒に済ませましょう。一緒にやればきっとはかどりますよ。脱線は私が阻止しますから」


「よろしくお願いします」


 3人ともに頭を下げられました。

 私たちは出かけることを決めると、食べ終わって食器を片づけるついでに、トゥルエル様に明日のお弁当をお頼みするのでした。

 それから部屋で宿題を済ませると、夜も大分遅くなっていましたので、明日に備えて眠ることにしました。

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