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入学式前日のクラス分けと入学式

 入学式前日、私たちは寮で朝食をいただいた後、トゥルエル様に送り出されました。


「じゃあ、しっかりやるんだよ」


「はい」


 トゥルエル様に続いて、ルグリオ様とセレン様にも抱きしめられてキスとエールを送られました。


「帰りを待っているから」


「心配はしていないわよ」


「行ってまいります」


 私とレシル、カイ、メルはクラス分けの試験を受けるために揃って学院へと向かいました。



 クラス分けというのはそのままの意味で、知識、技能、それから人数によって学年ごとにクラスを分けられることです。入学者全員で同じ教室で授業を受けるのは非効率だという理屈はわかっているつもりです。

 けれど、例えばレシルのような事情がない限り、入学するのは皆10歳、もしくは11歳なので、それほど難しい課題が出されることはありませんでした。

 知識の課題の試験は、どれも易しい計算の問題や、簡単な歴史、魔法に関する現時点での理解度などを試すものだったので、私は余裕をもって終わらせることができました。

 試験が終了してから私はレシルたちに声をかけにいきました。


「普通はこのように、この試験で躓くものなのですよ」


レシルが乾いた笑みと共に顔を向けた先では、カイとメルがぐったりとしていました。特にカイは、ぼんやりと焦点の合っていなさそうな目で天井を見上げていました。

 技能の試験も簡単なもので、示された的を壊すというだけのものでした。

 技能を試すためのものなのだからできることは見てもらった方がいいと思って、魔法を使うと、私の試験監督のリリス様は驚かれていらっしゃいませんでしたけれど、他の試験監督の先生方はなぜか驚かれて目を白黒されていました。

 もう一度、と言われたので驚きはしたのですけれど、同じことを繰り返すと、ざわめきが大きくなりました。

 自分の試験が終わったので、他の入学者の試験を見ていると、皆さん、一種類もしくは二種類ほどの魔法しか使っていらっしゃらなかったので、私は目立ちたがりだと思われたのかもしれないと思って、少し気落ちしました。

 試験が終わるのを待って、レシルやカイ、メルと一緒に寮まで戻ってくると、ルグリオ様とセレン様に出迎えられました。


「どうだった、ルーナ。驚いただろう」


「私たちも驚いたもの」


「はい、皆さん意外と緊張されていたらしくて」


 私が思っていたことを口にすると、そうじゃないんだよと優しく話してくださいまそた。

 ルグリオ様とセレン様の話によると、どうやら普通は学院に入る前にはわずかな、それも自分に合った魔法しか使えないということでした。


「私たちはリリス様や他の先生方に習ったりしていたけれど、普通は学院に来てから初めてならうものなのよね」


「だからルーナは何も気にしなくていいんだよ」


 レシルとメルは、かなり落ち込んでいるらしいカイを慰めていました。



 夕方になると、試験の結果が出たという用件でリリス様が寮の私を訪ねて来られました。

 なぜ私のところへ来られたのでしょうと不思議に思いつつも、私は寮のエントランスホールでリリス様の話を伺いました。


「私が新入生代表ですか」


「はい。毎年、クラス分け試験の成績が最も優れていた生徒にお願いしているのです」


 そこまでおっしゃられると、リリス様はルグリオ様とセレン様を見られました。


「セレン様、ルグリオ様にもそれぞれ、7年前及び6年前の新入生代表を務めていただきました」


それから、新入生代表の原稿を考えてほしいと頼まれました。


「わかりました」


 私は寮のお風呂にセレン様とメルと一緒に入った後、夕食をいただいて、新入生代表の原稿を考えてから明日の入学式に備えて寝ることにしました。

 

 そしていよいよ入学式当日、私が目を覚ますとメルも丁度目を覚ますところでした。


「おはようございます、メル。気持ちのいい朝ですね」


「おはようございます、ルーナ」


 カーテンを開けると、暖かい春の日差しがやんわりと部屋に差し込んできます。

 私たちは、寮を移動する準備をすると、整えた荷物を置いて揃って朝食へと向かいました。今日からは仮ではない学生寮に移るため、この仮の寮ともお別れになります。

 学院へ着くとクラスが張り出されているらしい掲示板の前にまだ朝も早いというのに人だかりができていました。

 これはなかなか見られませんね、と思っていたのですけれど、私とメルが近づくと、なぜか人だかりが左右に割れて道が出来ました。

 不思議には思いましたけれど、好都合であることには違いありません。


「行きましょうか、メル」


「うん、ルーナ」


 私たちが歩くと、周囲のざわめきが大きくなります。

 その、私は呪いを解くときにルグリオ様とお母様に洗脳のようなことをされて可愛いとは言ったのですけれど、それはあの姿だったからで、家族以外にはメルたちクンルン孤児院の関係者としか接してこなかったため、それ以外の方からどう見られているのか気にしたことはありませんでした。

 というよりも、そう思うことにしていました。

 日常的に自分のことを可愛いと思っているなんて、そんなことは出来るはずがありません。ルグリオ様やセレン様、ヴァスティン様、アルメリア様、それにお兄様やお姉様、お父様、お母様は手放しで褒めてくださるのですけれど。

 なので、ここまで大げさなのはきっと、昨日の試験のことが人伝に聞かれたからだろうと思っていました。

 入学式の会場に入ると、既に席に着いていた生徒がこちらを見て、同じような反応をされました。生徒だけではなく、保護者の席、教師の席からも同じような反応があったのですけれど、来賓席の一番前に座られているルグリオ様とセレン様を見て気分が落ち着いたのは、自分の事ながらわかりやすいなと思いました。

 私たちが席に着いてそれほど時間も経たないうちに、レシルとカイが入ってくるのが見えました。

 新入生の席が埋まってからしばらくして、入学式が始まりました。

 進行の先生方の挨拶などもたくさんされていたのですけれど、なぜだかどなたも同じような回りくどい話を長々としているだけに思えました。ここにいる生徒の大半は10歳なのだし、そのような難しい話をされてもわからないのだから、時間の無駄ではないかと思いながら聞いていました。

 もちろん、来賓挨拶のルグリオ様の話しはきちんと聞きました。一番短くまとめられていて、生徒にもわかりやすい内容でした。




「新入生代表、ルーナ・リヴァーニャ」


「はい」


 式も終わりに近づき、私達新入生の唯一の役割ともいえる新入生代表挨拶をするために、私は壇上に上がりました。

 集中力も切れかけているだろう新入生のことも考えて、文章は簡潔にまとめてあります。

 身長が足りず、準備された拡音の魔道具を使うために台を用意されたのが何となく屈辱的でした。私は卒業までにはあと頭一つ、いや二つ分は大きくなろうと誓いました。せめて、セレン様と同じくらいの身長にはなりたいです。

 私が挨拶を終えると拍手が起こりました。

 なんとなく恥ずかしくなったので、急ぎ過ぎているように見えないように急いで席へと戻りました。




  

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