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婚約者は9歳のお姫様!?  作者: 白髪銀髪
アースヘルム王国編
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コーストリナ帰還

 ラティオンを捕らえた僕たちは、その後は何事もなく一日挟んでからコーストリナへと無事に帰還した。

 城へ帰り着くと、姉様が出迎えてくれた。


「ただ今戻りました、姉様」


「お帰りなさい、ルグリオ、ルーナ」


「ただ今戻りました、セレン様」


 姉様は僕とルーナを順番に抱きしめて頬にキスをされた。僕も、アルヴァン様とカレン様を姉様に紹介して、一通りの挨拶を済ませた。


「僕たちが出かけている間、何もなかったようで安心したよ」


 僕がコーストリナの平穏を喜ぶと姉様は、そうねと言って、でもと続けた。


「あなた達は大変だったみたいね」


 アースヘルムと同様に驚いているサラさんと子供たちを見ながら、姉様に心配そうに尋ねられる。


「詳しい話は父様と母様の前で話すよ」


 僕たちは一緒に玉座の前まで歩いていった。



 玉座に座る父様と母様の前で、前に姉様と僕とルーナ、後ろにサラさんと子供たちが並んで頭を垂れる。


「父様、母様、ルグリオ・レジュールただ今戻りました」


「うむ。よく無事で戻った。話はアルメリアから聞いている」


 父様は僕たちの後ろで平伏するような姿勢をとっているサラさんに話しかける。


「そなたがサラ・ミルランか」


「はい。その通りでございます。ヴァスティン・レジュール様」


 サラさんが名乗った後に促され、子供たちも皆名前を告げる。


「そのように畏まらずとも良い、というのは無理か。では、すぐに報告など済ませてしまおう。ルグリオ」


「承知いたしました」


 僕は委細漏らさずに、コーストリナを出発してからのことを話した。



 僕の報告を黙ったまま聞き終えると、父様は頷き、再びサラさんと子供たちへと視線を向ける。


「サラ・ミルラン。残念ながら、あの地にクンルン孤児院を再び建設することは出来なかった。私の力が及ばず、済まなかった」


「とんでもございません」


 父様の言葉に、こういった場には殆ど出たことがないと思われるサラさんはただ畏まっている。父様はわずかに笑みを浮かべながら先を続ける。


「代わりと言っては失礼かもしれんが、そなたにはこの城の隣にある孤児院で院長をしてもらおう。つい最近、シスターに欠員が出てしまってな」


 欠員も何も、この城の隣に孤児院があるなんて聞いたこともない。僕が母様に報告してから、急に建てられたのだろう。


「そこの孤児院は絶対に潰させたりはしないことは私が保証しよう。その孤児院には、これからも行き場を失ってしまった子供たちが増えるかもしれない。急なことで悪いとは思うが、引き受けては貰えないだろうか」


 このような言い回しを用いることで、サラさんが引き受けやすいようにしているのだろう。


「はい・・・・・・はい。国王陛下、感謝いたします」


「何、欠員を埋めて貰って感謝するのはこちらの方だ」


 それから父様は子供たちに告げる。


「子供たちも10歳以上の者たちは、ミルラン姓としてこの春から学院に通えるように手続きは済ませてある。よく学ぶように」


「ありがとうございます」


 子供たちも揃って感謝の言葉を告げる。父様も子供たちの返事に満足したようで、うむと頷いた。


「さて、堅苦しい話はここまでにしよう。長旅の疲れもあるだろうからな。十分に休みをとるように」


 こうして僕たちはアースヘルムからの報告を終えた。



 ルーナの採寸はドレスのときなどに済ませてあるけれど、子供たちの分は、当然済ませていない。

 玉座の間から退出した子供たちのうち、レシルとカイとメルは制服の採寸のため連れていかれ、サラさんと残りの子供たちは、この城の隣にあるという孤児院へと案内された。


「良いのでしょうか。このような立派な」


 出来立ての孤児院は、真っ白な外壁に黒い屋根と以前の孤児院と似たような色遣いで、以前よりも大分大きくなっていて、孤児院というよりはむしろお屋敷とでも表現した方が良さそうな建物だった。


「もちろんですよ。何も気兼ねすることはありません」


「ですが」


「父様、国王様もおっしゃられていましたが、これから先に増えるだろう同じような境遇の子供たちを受け入れるためでもあります。そのため、少し大きくなっているのでしょう」


 少しではありません、とサラさんの瞳が訴えかけていたようだが、気づかないふりをした。


「旅の疲れもあるでしょう。今日はもうお休みください。食事の準備ができましたら呼びにきますので」


「何から何まで本当にありがとうございます」


 いえ、と僕は頭を振った。


「僕たちも全てを救えるわけではありません。ですが、目の前の困っている人には必ず手を差し伸べます。サラさんも、もし何か感じられているのなら、これからここへ来るだろう子供たちに渡してあげてください」


 僕が立ち去ろうと背を向けると、ものすごい速さで採寸を終わらせたらしいレシルとカイとメルがこちらへ向かってくるのが見えた。



 僕が部屋へと戻ってくると、楽しそうな顔の姉様が待っていた。

 何か企んでいる顔をしている。


「どうしたの、姉様」


 何が待っていようとも、とりあえず聞いてみなければ判断できない。姉様に誘導されているようだけれど、とりあえず尋ねてみた。


「ルーナと子供たちの入学を祝う意味も込めて、今夜、花見をすることにしたわ。すでにお母様の許可もいただいているし」


 姉様は楽しそうな顔で告げて来る。どうやら、僕に拒否権はないらしい。まあ、拒否するつもりもないけれど。


「生憎と月はあまり良くないけれど、舞い散る花と合わさってとても綺麗よ」



 ルーナにもしっかりと伝えておくのよ、と言うだけ言って、姉様はスキップでもしそうな足取りで部屋から出ていってしまった。

 何事か企んでいるのは明らかだったけれど、花見自体は僕も楽しみだった。

 僕はルーナの部屋を訪ねると、姉様から聞いた話をしたりして帰って来てからのひと時を楽しんだ。



 

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