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婚約者は9歳のお姫様!?  作者: 白髪銀髪
アースヘルム王国編
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アースヘルム王国からの帰路

 月がもう一巡するころには、ルーナは学院の生徒になって寮に入っているはずなので、残念ながら僕たちにルーナの呪いが本当に解けたのかどうか確認する手段はない。ルーナからの報告を聞くことができるのは、学院が夏季休暇に入ってからだ。

 翌朝、朝食の準備が整いましたとリサさんが呼びに来るまで、僕はぐっすりと眠っていた。


 ルーナと連れ立って向かった朝食の席に着くと、ルディック様に心配された。


「どうしたんだ、アリーシャ。それに、ルーナもルグリオ殿も」


「どうもしていませんよ。何か気になることでもございましたか」


「いや、何がどうというわけではないのだが、三人とも今朝はどこか、うむ、何と言ったらよいものか、どことなく気分が良さそうに見えたのでな」


 アリーシャ様は平然と対応されていたけれど、僕は内心で舌を巻いていた。

 ルディック様はルーナが呪いにかかっていたことをご存知ないはずなのに、雰囲気だけで何かを感じ取ってしまわれていた。顔を回すと、アルヴァン様とカレン様も、何もおっしゃられてはいなかったけれどルディック様と同じように、僕たちのことを注視しているようだった。家族というのはどこも素晴らしいものだな、と僕は思った。


「ならばよろしいのではないですか。気になさることは何もありませんよ」


「そうか。何もないならばよいのだが」


 アリーシャ様の微笑みに封殺されて、それ以上は何も追及されなかった。



 

 朝食が済むと、僕たちはコーストリナへと帰る準備をした。準備といっても、僕たち自身には特にすることはなく、僕たちが乗ってきた馬車の他にもう一台馬車が準備されていて、そこにたくさんの品を土産物として積み込まれただけだった。

 ルディック様は、何とか引き留めようと顔を出されてはルーナに頼み込むようにしていたけれど、その度にアリーシャ様に引っ張られてどこかへ連れていかれていた。

 僕も荷物の積み込みを手伝おうとしたのだけれど、騎士の人たちに止められてしまったので、積み込みが終わるのをルーナたちと一緒に待っていた。


「ルグリオ様。荷物の積み込みが終了致しました」


「後は乗り込んでいただければ、すぐにでも出発させられます」


「ご苦労様」


 騎士の人たちの報告を受けて、僕は既に乗り込んでいるサラさんに確認をとる。


「サラさん。子供たちは全員乗り込みましたか」


「はい。ルグリオ様」


 サラさんは見送りに出てきてくださったルディック様とアリーシャ様に深々と頭を下げた。


「陛下。王妃様。何から何まで本当にお世話になりました。感謝の言葉もございません」


「民のために動くのが王族たる私たちの使命だ。そのように畏まられることはない」


 ルディック様は優し気にサラさんに声をかけられると、僕とルーナへと顔を向けられた。


「道中気を付けて帰るのだぞ。そなたももう私たちの息子も同然なのだから」


「はい。ありがとうございます」


「子供たちのこともしっかりと連れ帰って、是非良い知らせを聞かせてくれ」


「はい。もちろんです」


 ルーナのことは当然のことなので何も言われなかった。


「ルーナも春からは学院生ね。しっかり楽しみなさい」


「はい、お母様」


 アリーシャ様はルーナを抱きしめると頬にキスをした。


「では父上、母上、行ってまいります」


「帰ってから式の様子などはご報告いたしますね」


 アルヴァン様とカレン様はルーナの入学式に家族として出席される予定なので、僕たちと一緒にコーストリナへ向かわれる。


「なあ、アリーシャ。やっぱり私も」


「それでは皆さん。いってらっしゃい」


 ルディック様が何事かおっしゃられていたけれど、アリーシャ様に笑顔で見送られ、来るときよりも賑やかになった馬車は、僕らを乗せて帰路へと着くのだった。




 穏やかな春の陽気に揺られながら、僕たちを乗せた馬車はコーストリナへと進む。

 

「アルヴァン様とカレン様はこの前いらっしゃられたより以前にもコーストリナへいらっしゃったことがおありなんですか」


「いや、あったのかもしれないけれど覚えていないなあ」


 アルヴァン様は宙を見つめて思い出そうとされていた。


「それは多分観光じゃなかったからよ。今回はルーナの入学式に出席するという名目だけれど、ちゃんと観光もしたいし。それに、セレン様にもご挨拶したいしね」


「ルーナの入学式までは時間があまりないのですが、終わったら、僕たちがご案内いたしますよ」


「そのときはよろしくお願いするわね」


 それから、僕たちはコーストリナのことなどを話しながらしばらくは何事もなく進んでいた。僕はクンルン孤児院の跡地を見ているので、既に取り壊されていることは知っていた。そのため、サラさんや子供たちは何か思うところがあるかもしれないな、と思っていた程度だった。


「ルグリオ様。前方で何やら道が塞がれております」


 だから、まさかこんなことになるとは思ってもいなかった。



 馬車が停止したので、僕たちは外から聞こえる会話に耳を澄ます。


「この検問はなんだ。このような話は聞いていないぞ」


 馬車の外から騎士の人たちの声が聞こえる。僕はアルヴァン様とカレン様と顔を見合わせると、ルーナと一緒に、子供たちが乗っている馬車へと転移した。


「ルグリオ様。いつからそこにいらしたのですか」


 急に現れた僕とルーナに目を白黒させているサラさんと子供たちに、静かにと合図を送る。


「私はアースヘルム王国第一王子アルヴァン・リヴァーニャ。この検問の理由をお聞かせ願いたい」


「殿下におかれましては」


「そのようなことは聞いていない。私は理由を尋ねているのだ」


「これは大変失礼いたしました。実は先日までこの先の建物に私共が面倒を見ていた子供たちがいたのですが、何者かに連れ去られてしまったようでして」


「ほう。それで」


 事情を知っているとは思ってもいないだろう、外の何者かはペラペラと話を続ける。


「では、その責任者を呼んできていただこうか」


「承知いたしました。では、しばしお待ちください」


 走り去っていく音が聞こえる。僕たちは息を吐き出した。



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