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婚約者は9歳のお姫様!?  作者: 白髪銀髪
アースヘルム王国編
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夜まで待って

 僕とルーナ、それにアリーシャ様は、僕が持って帰らせていただいた書物を隈なく、それは懸命に読んだのだけれど、未だに呪いを解く方法を発見することは出来ずにいた。


 まず、量が多い。当然と言えば当然なのだけれど、ミカエラさんのところから預かってきた書物には全て『生物』もしくは『変身』、『呪い』という言葉が記述されているはずだ。そのため、持って帰らせていただいた書物を端から探していかなくてはならない。もちろん食事などの時間もあるため、三人で手分けをしているとはいっても時間が掛かる。

 さらに、中には大層古い書物も混じっていて、書かれている文字を読み解くだけでも時間が掛かるものがある。放置されるように山積みされていただけのことはあって、ページがくっついていて開けない、虫に食われたように穴が開いている、インクが滲んでいる、そもそも白紙である等の問題が所々に発生している。

 通常、こういった書物には保存や保護をする魔法が掛けられていて、時間が経過しようとも質が劣化しないようになっている。しかし、そのような書物は人に読ませる目的で書かれているものがほとんどだ。僕が借りてきた本は、元々、ミカエラさんのご先祖の方が書かれたもので、他人に読ませることを想定していないメモ書きのようなものだったらしい。書き殴られたような読みにくい文字や、どこの物とも知れない文字もあり、解読はかなり困難だった。ミカエラさんからはそのような雰囲気は感じられなかったけれど、あのような人里離れたところに棲んでいることからも、魔女の秘密主義を窺わせる。

 結局、その日は呪いを解く方法を見つけることはできなかった。


 翌日も僕たちは朝から書物を広げる。広げると言っても、昨日広げた書物はそのままだったため、途中から読み始めるだけなのだけれど。

 僕は一人で考え過ぎるのも良くないと思って、ルーナやアリーシャ様の意見も聞くために、考えていたことを口にする。


「これらの書物は元々、ミカエラさんのご先祖様が記されたものだということでした。そもそも、書物という形になっているからには、誰かが記したものなのですけれど。それにも関わらず、所々に白紙が混じっているというのはどういうことなのでしょうか」


 アリーシャ様も同じことを考えておられたようで、同様の疑問を口にされた。


「そうなのよね。自分で作っているのだから、間違えてということもないでしょうし。あぶり出しも試してはみたのだけれど、効果はなかったのよね」


 さっぱりだわ、と首を振られる。


「しかし、中間地点で急にその部分だけ記述が抜けているというのも気になります」


「あ、あの」


 僕たちが、再び思考の渦に捕らわれそうになったところで、そこまで黙って書物を読みながら僕たちの話を聞いていたルーナに声をかけられた。


「どうかしたの、ルーナ」


 もしかして見つけたのだろうかと思ったけれど、ルーナの話しは違うものだった。


「もしかしたら、夜にならなければ読めないようになっているのかもしれません。夜中で、それも満月に近いほど、私に出る呪いの影響も強く、頻度も上がるようですから」


 なるほど。ルーナの言うことにも一考の余地はありそうだ。確かに、昨日も戻ってきたのは朝になってからだし、夜には読んでいない。考えられる可能性は全て試してみなければ。


 僕たちは、夜になるのを待つことにした。



 夜にまた読み直そうということに決まったので、僕は夜に備えて眠ることにした。

 部屋に戻ると、浄化の魔法でとりあえず身を清める。それから寝具に着替えて、ベッドへと倒れ込んだ。もちろん、借りている部屋だったため、乱暴に倒れ込んだわけではないけれど。



 僕が起きたのは、夕食の準備が整いました、とリサさんに呼びに来られてからだった。


「ルグリオ様。夕食の準備が整いましたが、どうされますでしょうか」


 声をかけられて目が覚めた僕は、ベッドから降りると、おはようと挨拶をした。すでに夕日も沈んでいたのだけれど、朝も昼も顔を合わせていないので、それが適当だと思った。朝も顔を合わせていないのは、僕たちが朝食も忘れて読書に没頭していたせいなので、朝にも僕の部屋へと来られていたら悪いことをしたなと思った。


 思い出したら、お腹が空いてきた。


「ありがとう。準備が出来たら、すぐに向かうよ」


 なので、僕はすぐにそう答えた。


「承知いたしました。それではお手伝いさせてください」


 自分でできます、と言おうと思ったけれど、リサさんがとても手伝いをしたいような顔をされていたので、お願いします、と頼んだ。


「はい」


 態度には出していなかったけれど、リサさんはとても嬉しそうな雰囲気をしていた。



 

 夕食の席に着くと、ルディック様に心配された。


「ルグリオ殿、アリーシャに突き合わせてしまっているようで申し訳ない」


 とんでもないです、と僕は首を振った。


「むしろ、私はアリーシャ様とルーナを突き合わせてしまった方ですので」


「いえ、私が付き合ってもらったのよ」


 僕がルディック様に言葉を返すと、アリーシャ様に即座に否定された。このまま繰り返していてもしょうがないので、僕はそれ以上何も言わないことにした。言うまでもなく、水掛け論など不毛だからだ。

 ルディック様はアリーシャ様に説得されたらしく、それ以上は何も追及されなかった。





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