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婚約者は9歳のお姫様!?  作者: 白髪銀髪
アースヘルム王国編
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ルーナの不満?

 ルーナのご両親への挨拶が済むと、ルーナの部屋の隣の部屋に通された。アースヘルムに滞在中、使わせてもらえるということだった。


「御用がおありでしたら、何なりとお申し付けください」


 僕を部屋まで案内してくれたメイドのリサさんに、深々と頭を下げられる。リサさんは、まぶしい金髪に大きな緑色の目が魅力的な小柄な女性だった。


「間もなく昼食となりますので、今しばらくお待ちください」


「ありがとうございます、リサさん。それと、一つ確かめておきたいことがあるのですが」


「何なりとお尋ねください。それと、ルグリオ様。どうか私どもには敬語などお使いにならずにお申し付けください」


 彼女たちには彼女たちの譲れないものがあるらしく、真正面から見つめられて頼まれた。僕は彼女に従うことにした。


「わかったよ。それで、確かめたいことというのは、昼食の後のことなのだけれど」


 僕は、ルーナにアースヘルムの案内をしてもらう約束をしていること、その際に、子どもたちとサラさんも同行させてもらいたいということを話した。リサさんは、二つ返事で僕の意見を了承して、提案をまとめてくれた。


「承知いたしました。では、昼食を摂られた後、休憩が済み次第出られるようにこちらで準備を進めてまいります」


「ありがとう」


 リサさんは、深く頭を下げた後、失礼します、と言って部屋から出ていった。



 リサさんが出ていった後、僕は部屋の椅子に腰掛けた。すぐに昼食だということだったので、紅茶は遠慮させてもらった。僕は背もたれにもたれかかると、ふうー、と長く深いため息をついた。


「あー緊張した」


 人前に出ることには慣れているつもりだったけれど、それとは別の緊張感に包まれていた。手のひらにはじんわりと汗をかいていた。婚約者のご両親への挨拶というのは、予想以上に緊張した。ルーナは平気そうに見えていたけれど、やっぱり緊張したのだろうか。

 そんな風に考えていると、扉をノックする音が聞こえた。昼食の準備ができたのだろうかと思い、居住まいを正して、はい、と返事をすると、失礼します、と言ってアルヴァン様とカレン様が入ってこられた。


「お久しぶりですね、ルグリオ様」


 アルヴァン様に、再会の挨拶をされたので、僕も立ち上がり、挨拶を返す。


「はい。お久しぶりです、アルヴァン様、カレン様」


「歓迎は気に入って貰えたかしら。ルーナには、恥ずかしいからやめて、と言われたのだけれど」


 カレン様は整った顎に手を当てて、困ったものだわ、と溜め息をつかれた。


「はい。僕たちのことをあれほど祝福してくださって、とても嬉しく思っております」


 僕がそう言うと、アルヴァン様も表情を崩して、笑顔を見せられた。


「気に入って貰えたようでよかったよ。国民の皆もとても楽しみにしていたからね」


 どうやら、アースヘルムの人たちもお祭り好きのようだった。


「ルーナも内心では喜んでいると思いますよ」


 恥ずかしかったのも本当だとは思うけれど。


「もちろん、わかっているわ」


 家族にはルーナの気持ちは筒抜けらしかった。


「父と母、それに姉からも、皆様によろしくと申し遣っております。特に姉は、先日に引き続き、皆さまにお目にかかれないことを大変に残念がっておりました」


 僕がそう言うと、カレン様は一瞬、目を細めて、くすりと笑われた。


「そんなにかたい言葉を使わなくてもいいのよ。私たちは家族なんだから」


「まあ、いきなりというのも大変だろうから、これから徐々にね」


 きっと姉様ならすぐになじむんだろうなと思った。


「私たちも楽しみにしていたのだけれどね」


「ルーナがそちらの学院に入るときの入学式には出席する予定だから、そこでご挨拶できるといいね」


「はい。姉にもそう伝えておきます」


 それから、昼食の準備が整いました、と呼ばれたので、僕はアルヴァン様、カレン様と一緒に、案内されるままに昼食へ向かった。




 僕たちが昼食の部屋へ案内されると、既にルーナと、ルディック様、アリーシャ様は席に着かれていた。僕たちが席に着くと、丁度いいタイミングで、料理が運ばれてくる。


「それでは、いただくとしよう」


 ルディック様がおっしゃられたので、僕たちは食事を始めた。


「お口に合いますか、ルグリオ様」


 アリーシャ様に尋ねられたので、僕は、大変おいしいですと本心を答えた。

 長距離を移動してきた僕たちに配慮されたのか、食事は軽めだったが、とてもおいしかった。食事の間には、コーストリナでのルーナの様子などを聞かれ、会話もはずみ、僕にとっても楽しい時間となった。 ちなみに、サラさんや子供たちも昼食を摂っているということなのだったので、それとなく、一緒にいない理由を尋ねてみると、サラさんが遠慮したのだそうだった。どうやら、気を使われているらしかった。



 食事が済み、しばらく部屋で休んでいると、ルーナが僕を呼びに来た。


「ルグリオ様。入ってもよろしいですか」


「もちろんだよ」


 僕が返事をすると、ルーナが扉を開けて、失礼します、としずしずと入ってきた。


「ルグリオ様。リサから言伝を頼まれたのですが、準備ができたそうです」


「ありがとう。今行くよ」


 僕は服装を正すと部屋から出た。


「コーストリナではルグリオ様に案内していただきましたから、こちらでは、私が案内したかったのですけれど」


 ルーナは少し残念そうな様子だった。まあ、僕の方が歳は上で、しかも、僕は男だったけれど、コーストリナとは違い、アースヘルムには土地勘のない僕と、まだ10歳になったばかりのルーナだけでは心配だったのだろう。


「それでも、ルーナと一緒に回れることには変わらないよ。案内してくれるんだろう」


 僕はそう言って、ルーナと手を繋いだ。


「はい。お任せください」


 ルーナは眩しい笑顔を見せてくれた。

 僕はルーナに先導されて、サラさんや子供たちがいる部屋も回って、連れ立って馬車の方まで歩いていった。子供たちはお城の見事な部屋に瞳を輝かせていた。サラさんはそんな子供たちの様子に、ハラハラしている様子だったけれど、やっぱり嬉しそうだった。

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