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婚約者は9歳のお姫様!?  作者: 白髪銀髪
アースヘルム王国編
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アースヘルム到着とご両親へ初挨拶

 夜中まで孤児院に残っていると、もしかしたら厄介ごとに巻き込まれるかもしれないと思い、夕暮れも過ぎ、あたりが暗くなってから出発したため、夕食を軽く済ませると子どもたちは眠ってしまった。子供たちを起こさないようにゆっくりと進んでいたのだが、それもしばらく進むと停車した。


「ルグリオ様。本日はここまでとしたいのですが、いかがでしょうか?」


 前の馬車に乗っている騎士の人が、僕たちの馬車まで報告に来る。僕が頷くと、騎士の人たちは眠っている子供たちを起こさないようにゆっくりと馬車を止めた。


「それでは、本日の行程はここまでとさせていただきます。明日には、アースヘルム王国へと到着できる見込みでございます」


「ご苦労様。僕たちももう休むことにするから、皆ももう休んでくれて構わないよ」


「承知いたしました。では、見張りのものを残し、他のものは皆休ませます」


 騎士の人たちが伝達に行くのを見送った後、僕はルーナの方を向いた。


「ルーナも、もうお休み。ずっと、馬車に揺られていて、疲れもあるだろう。体調は大丈夫かな」


「ありがとうございます。では、お言葉に甘えさせていただきます」


 そう言うと、ルーナはすぐに目を閉じて横になった。馬車は移動用だけあって、さすがに中も広く、ルーナくらいの少女ならば、楽々横になるだけのスペースがある。


「おやすみ、ルーナ」


 僕は、ルーナの顔にかかっている前髪をそっと払うと、向かい側で目を瞑った。



 翌朝、目が覚めると、外から朝食を作るいい匂いが漂ってきた。僕が、まだ寝ているルーナを起こさないように馬車から降りて、おはよう、と声をかけると、皆に、おはようございます、と声をかけられた。


「サラさんも朝食を作っているんですか?」


 朝食の準備をしている騎士の中に、一人女性が混じっていた。


「はい。私も、せめてこのくらいはお手伝いをしようと思いまして」


 自前なのか、白いエプロンまでつけている。


「手際が良く、我々も助かっています」


「味も抜群です」


 どうやら、少しではなく、大分手伝っているようだった。そして、騎士の人たちの胃袋もしっかりと掴んだらしい。


「では、皆を起こしてきますね」


 僕は、ルーナと子供たちが、まだ眠っていると思われる馬車の方へと戻っていった。




 

 僕たちがアースヘルム王国へ辿り着くと、盛大なファンファーレと共に迎えられた。音楽が鳴り響き、紙吹雪が舞い、そこら中から歓声が聞こえる。馬車の中にまで、周囲の熱気が伝わってくる。どうやら、僕たちの到着をどうしてか知っていたらしい。おそらくは、母様の仕業だろうか。僕が馬車から顔をのぞかせると、一際大きな歓声が上がった。


「ちょっと挨拶に来ただけなのに、すごい盛り上がりようだね」


 そう言えば、誘拐事件の知らせを持って来てくれた時に、ルーナのお兄様、アルヴァン様が何かおっしゃっていたっけ。


「騒々しくなってしまって申し訳ありません、ルグリオ様」


 ルーナは赤くなって、照れているのか、恥ずかしがっているのか、そんな表情を浮かべた。どうやら、この騒ぎの原因が、自分の兄と姉だろうと見当をつけているのだろう。


「申し訳ないことなんて何もないよ、ルーナ。むしろ、アースヘルムでも僕たちのことをこんなにも祝福してくれているなんて嬉しいことじゃないか」


 僕はルーナに微笑みかけた。


「ルーナのご家族へのご挨拶が済んだら、アースヘルムを案内してくれるかな」


 ルーナの生まれ故郷のことを、僕も知っておきたかった。


「アースヘルムは、今、この調子ですし、私もお城から出たことはほとんどなかったので、ご満足いただけるかどうかわかりませんが、精一杯、務めさせていただきますね」


 ルーナは楽しそうに笑ってみせてくれた。



 ルーナに案内されるアースヘルムの観光も楽しみではあったけれど、まず最初は城に向かった。それが今回の旅の目的だったし、ルーナも久しぶりにご家族に会いたいだろうと思ったからだ。

 城に着くと、門番の兵士たちは、一斉に礼の姿勢をとった。


「お待ちしておりました。ようこそお出で下さいました、コーストリナ王国王子、ルグリオ・レジュール様」


 それからゆっくりと門が開かれ、僕たちを乗せた馬車は城門を通過した。中では、城の入り口まで庭師と思われる人たちや、メイドの人たちまで、城の人たちがずらりと並んでいた。

 道の左右に並んでいる、彼らの真ん中を、馬車に揺られてゆっくりと進む。入り口の前まで着くと、馬車は揺れを感じさせずに、ピタリと止まった。

 僕は馬車の扉が開かれるのを待って、ルーナに手を差し出した。


「お手をどうぞおとりください」


「はい」


 ルーナの小さく柔らかい手が、僕の手に乗せられる。僕はルーナの手を取って、馬車から降り立った。


「ようこそお出で下さいました。ルグリオ・レジュール様。ルーナ・リヴァーニャ様。そして従者の皆様」


僕たちの前に跪いているのはフェリスさんだった。


「歓迎ありがとうございます。それで、突然で申し訳ないのですが、ルディック様とアリーシャ様にご挨拶にうかがう前に、一つ頼みたいことがあるのですが」


「はっ。何なりとお申し付けください」


 突然の申し出にも関わらず、眉一つ動かさずに頷いてくれる。僕は感謝を述べ、道中の出来事をかいつまんで説明した。

 僕が話し終えると、フェリスさんは変わらぬ態度で頷いてくれた。


「なるほど、承知いたしました。それでは、ルグリオ様とルーナ様が国王様、王妃様にお会いになられている間、そちらの子供たちは私共が責任を持ってお預かりいたします」


「感謝いたします」


 そのまま、僕たちはルーナのご両親の前まで通された。




 白亜の大理石でできた床を、ルーナを横に伴って、ゆっくりと歩く。アースヘルム国王、ルディック・リヴァーニャ様の鋭い眼光が僕の方を睨んでいるような気がしたが、それには怯まずに、堂々と御前まで辿り着くと、膝をついて、正面からルーナのご両親を見据えた。


「ご挨拶に上がるのが大変遅くなりましたことをお詫びいたします。コーストリナ王国第一王子、ルグリオ・レジュールでございます。本日は婚約のご報告に参りました」


 しばし沈黙が流れる。ピリピリとした空気を感じる。ルーナのご両親が僕のことを吟味しているように感じられた。しばし、時が流れた後、ルディック様が口を開いた。


「そなたが、ルグリオ・レジュールか」


「左様でございます」


「そうか」


 ルディック様がゆらりと立ち上がる。金色に煌く髪をなびかせて、カッと眼を見開かれた。


「いくら、ヴァスティンとアルメリアの息子であろうとも、私のルーナを攫うのならば、私を倒」


 そこまでおっしゃられたところで、ルディック様はいつの間にやら立ち上がっていたアリーシャ様に、後頭部をはたかれた。


「何をする、アリーシャ。私は」


「あなたは椅子に座っていてくださいますか?」


「……はい」


 力なく頷かれたルディック様は、すごすごと椅子に戻っていゆかれた。アースヘルムでも母親の方が強いらしかった。


「よく来てくれたわね、ルグリオさん」


 アリーシャ様は、僕を見られて、それからルーナに視線を移さrて、また僕の顔を見られた。


「あなた達の様子をみていれば、大よそのことはわかるわ。ルーナは大分楽しそうね。そろそろルーナも学院に通うのだろうし、しばらく離れ離れになってしまうのだから、ここへ滞在中は、二人で楽しんでね」


「ありがとうございます、アリーシャ様」


 この人のことは気にしなくていいからね、とアリーシャ様は付け加えられた。この場では、アルヴァン様も、カレン様も、何もおっしゃられなかったので、僕はルーナを連れて玉座の前を失礼させてもらった。


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