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婚約者は9歳のお姫様!?  作者: 白髪銀髪
アースヘルム王国編
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旅立ち

孤児院編は今回で一区切りです。

次回こそは、ちゃんとアースヘルム王国編に入れるはずです。

 クンルン孤児院の立地的には、正確にはコーストリナの領地というわけではない。この辺りの土地は、森林地帯や、湖などが多くあるために、明確な国境を定めることが困難だからだ。別荘などを建てる分には、つまり、はっきりとどちらの領土であると言わない分には特に問題ないのだが、明確に我が国の領土であると言い張ることは出来なくなっている。隣国と話を着けられれば良いのだが、そのためには今回は時間が足りない。こちらが話し合っている隙に、子どもたちは僕たちの手の届かない、どこか遠くへ連れていかれてしまうだろう。


「すみません。もう少し時間があれば、この孤児院を残すこともできたのでしょうが、力及ばず」


 僕にもっと力があれば、ここをコーストリナの領土だと言い張って、後から解決することもできただろう。僕はサラさんに頭を下げた。子供たちは、今、この部屋にはおらず、おそらく隣の部屋で遊んでいることだろう。ルーナも一緒に。


「い、いえ、そんな。頭をお上げください。何も謝罪されるようなことはありません。むしろ、私たちは感謝しています」


 僕が頭を上げて顔を見ると、サラさんは続けて話してくれた。


「この孤児院を私一人で経営していくことは困難でした。確かに、寄付金もあり、子どもたち皆も成長してくれているので、孤児院の生計くらいならば、どうにかできたかもしれません。私個人は、ここで子供たちの成長をみられることを最高の喜びだと思っています。ですが、子どもたちはどうでしょうか? この孤児院だけで生活し、外の世界を知らずに生きていくことが、本当に幸せなのでしょうか? 私自身、あまり、外の世界のことはよくわかりません。きっと、憧れだけではない、数々の困難があることでしょう。ですが、それでも、私はここの皆に孤児院の中だけではない、広い世界を知って貰いたかったと思っていました。いえ、今でも思っています」


 サラさんは、そこで一旦言葉を切ると、扉の方を見向いて、眩しいものを見るように目を細めた。


「私は、子どもではいられませんでしたから、あの子達のような心はもうなくしてしまったようですけど、あの子達にはまだ、沢山の可能性があると思うのです。この孤児院にいるだけでは開かない、たくさんの可能性が。だから、もしかすると、今回のことも、あの子達を成長させるための、神様からの試練、いえ、贈り物なのかもしれません」


 何か吹っ切れたような表情でそう話してくれた。


「ですから、そのためのきっかけになってくださったルグリオ様には、とても感謝しております。たしかに、この孤児院にはたくさんの思い出があり、私自身、ここで育てていただいたので、全く思い入れがないわけではありません。私を育ててくださったサリア様には、いつまでも頭が上がらないでしょう。やむなく、ここを出ていかれてしまったシスターの方々にも、言葉では表しきれない感謝を抱いております。私は、彼女たちの想いを守るためにもここの孤児院に固執しすぎていたのかもしれません。ですが、彼女たちの想いは孤児院だけではなく、私の、そして子供たちの中に、きっと受け継がれています。この想いがある限り、たとえこの孤児院がなくなり、場所を移ろうとも、子どもたちへ伝えて行けることは沢山あります」


 サラさんは、僕の方に視線を戻し、思いのたけを話してくれた。それから、深々と頭を下げられた。


「ですから、ルグリオ様。本当にありがとうございました」


「僕たちがここへ来たのは偶然ですよ」


 あそこでカイとメルに出会わなければ、きっとここへは来ていない。とはいえ、仮定の話をするのは意味がないので、そんなことは言わなかった。


「それでも、私は人の縁を信じています。これまでも、この先も。人と人とのつながりによって、この世界は成り立っているのですから」


 それが良いものばかりとは限らないけれど。確かに、その通りだ。

 僕たちはどこまでいっても、人との繋がりを否定することはできない。誰もが誰かに支えられ、そして誰かを支えながら生きている。

 父様や母様、それに僕たちだって、国民の税や他国との取引、その他色々なものによって生活の元をつくっていて、それによって国民の生活をより良いものに変えていこうと努力している。


「その通りですね」


 それは、父様や母様だって先代から受け継いできたもので、いずれは僕や姉様、そしてルーナに受け継がれていくものだ。それはおそらく、僕たちの子供の世代にも受け継がれていくだろう。姉様が自国に留まっているかはわからないけれど、いや、おそらく、留まってはいないけれど、姉様だって想いは変わらないはずだ。だから、僕はそう答えた。


「では、その縁に僕たちがお節介することも許してください。それは、子どもたちにとってもさらなる縁に繋がるはずですから」


「はい。ありがとうございます」


 僕たちはどちらからともなく、笑い合った。




 話し終えると僕たちは協力して荷物をまとめる作業に入った。まとめると言っても、それほどたくさんのものがあるわけではない。荷物は全て馬車に積み込むことができた。とはいえ、すべて終えるころには、もう夕暮れに近くなっていて、辺りは大分暗くなっていた。


「これで全てですか?」


「はい。元々、それほどたくさん物資があるわけではありませんから」


 サラさんにそう言われたので、僕はルーナたちを呼びに行くことにした。


「私も付いて行きます」


 僕が孤児院の中に向かって歩き出すと、サラさんも付いてきた。


「お疲れでしょうから、休んでいてくださって構いませんよ」


 サラさんは首を振った。


「いえ。やはり、子どもたちには私から説明した方がいいでしょうから」


 僕たちは二人で、皆の元へと向かった。



 どうやら、暗くなってきていたため、外で遊んでいる子はいないようだった。サラさんは全員の無事を確認して、安堵のため息をついていた。僕が部屋に入ると、やっぱりルーナが最初に僕に気がついて、パタパタと走り寄ってきた。


「ルグリオ様」


「ルーナ。随分待たせてしまったね」


 僕は、夕日に照らされて輝く、ルーナの柔らかい銀髪を優しく撫でた。


「いえ。そのようなことはありません」


 ルーナは気持ちよさそうに目を閉じていた。


「皆、今からここを出発しますからね」


 サラさんが子供たちに説明していた。


「えー。なんでだよ。やっぱりお金がないからなのか」


 一番最初に反応したのは、やはり、カイだった。


「そうじゃないのよ。ううん、それもあるけれど、もっと素敵なところに行くの」


 サラさんは子供たちをとても優しげな瞳で見つめて、カイの頭を撫でながらもっと優しい声で話している。


「別に、この孤児院が嫌いになったとか、そんなことは全然ないのよ。でも、もっと広いところに皆を連れて行ってあげたいの。そして、色んなことをみんなに見てほしい。それが私の嬉しいことなの」


「別のところに行くことがサラの嬉しいことなの」


 メルも不思議そうに尋ねている。


「そうね。でも、あなた達ももっと楽しいと思うはずよ」


「でも、みんなバラバラになっちゃうんでしょう」


 ニコルが泣きそうな顔で訴える。


「お別れになっちゃうの」


「バラバラなの」


 メアリスやルノも寂しそうだ。


「皆、まだサラの話しは終わってないよ。最後までちゃんときかなきゃ。ね」


 レシルがニコルとメアリスとルノの肩に手を回して、皆を励ましている。


「うん」


 子どもたちは頷いて、サラさんの方を見る。


「ありがとう、レシル。それでね、ここはなくなっちゃうんだけど、皆一緒にアースヘルムっていうところまでいった後に、コーストリナってところまで行くのよ。場所は変わっちゃうけど、皆で一緒にいられるのは変わらないわ。それに、時期が来れば他のお友達もできるのよ」


 それから、サラさんが外の世界を楽しそうに語って、子どもたちは目をキラキラさせて、サラさんの話を聞いていた。

 話が終わったくらいのタイミングで、僕は皆に話しかける。


「それじゃあ、出発しようか」


「はい」


 僕たちは馬車に乗り込むと、希望と期待を胸に乗せて、思い出の残るこの地を去って、新しい地へ向かうのだった。




???「孤児院編がやられてしまったようだな」

✖✖✖「ククク、だが奴は我ら話を長引かせ隊の中でも最弱」

※※※「脇道の面汚しよ・・・」



そんなことにはならないです。


ルーナの出番も増えるといいな。

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