表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約者は9歳のお姫様!?  作者: 白髪銀髪
アースヘルム王国編
33/314

ルーナにも友達ができるといいなと思っていたんだ

 夜も更けてきていて、メルも既に眠ってしまっていたということもあり、結局、今夜はそのままということになった。子供たちも、メルに会いたい気持ちと同じくらい眠たかったようで、僕が孤児院まで戻ってきたときには、メアリスとルノ、それにニコルはもう寝てしまっていた。


「君たちだけでもメルの顔を見ておくかい?」


 僕は、まだ起きていたレシルとカイに声を掛ける。メルが眠ってしまっていることを告げると、レシルは、遠慮しておきますと首を振った。


「寝ているメルを起こしてしまうといけませんから」


 そう言うとレシルは頭を下げ、カイを連れていった。


「せっかく起きていてくださったのに申し訳ありません」


 僕はサラさんに頭を下げる。彼女も、メルに、それにルーナと会うのを心待ちにしていてくれたことだろう。


「いえ、お気になさらないでください。こんなに夜も遅いのですから当然です」


 サラさんは慌てた様子でフォローしてくれる。


「このような遅くまで女性を突き合わせてしまい、申し訳ありませんでした。これ以上はまた明日に致しましょう」


「はい。おやすみなさいませ、ルグリオ様」


 別れの挨拶を済ませて、背を向けると、あの、ルグリオ様、と呼び止められたので、その場で振り向く。


「ご厚意、心より感謝しております」


 深々と頭を下げられた。


「お気になさらないでください。私が好きでやっていることですから」


 そう言うと、僕は馬車へと向かった。僕が馬車に入るまで、サラさんは頭を下げているようだった。




 翌朝、僕が目を覚ますと、ルーナはまだ眠っていた。あどけない寝顔に頬を緩ませた後、気を引き締めなおして、馬車の外へ出た。すでに、御者や騎士の人たちは夜衛の人との交代を済ませているようで、朝食を作っている香ばしい匂いが、当たりの空気に交じっていた。


「おはようございます。ルグリオ様」


 僕に気付いて、皆、挨拶をしてくれる。


「おはよう。昨夜は何も問題はなかったかな」


 僕も挨拶を返して、昨夜の様子を尋ねる。


「はっ。昨夜は特筆すべきことは何も起こっておりません」


「ありがとう」


 僕が、朝食を作ってくれている人たちと話をしていると、馬車の中から、目が覚めたらしいルーナが降りてきて、伸びをした。サラサラの銀髪が朝日に照らされて眩くキラキラと輝いている。


「おはよう、ルーナ。今朝も一段と綺麗だね」


 そう言って、おはようのキスをする。ルーナはちょっぴり顔を赤らめた後、微笑んで挨拶をしてくれた。


「おはようございます、ルグリオ様」


「昨夜はあれからよく眠れたかな」


 馬車での移動に日数をかけることは、初めてではないはずだけれど、念のために聞いてみる。


「はい。ぐっすりと眠れました」


「睡眠時間が足りていないんじゃないのかい。大丈夫かな」


「ご心配頂きありがとうございます。ですが、私は大丈夫です」


 ルーナの宝石のように綺麗な目の下にも隈などはできていない。本当に眠れはしたようだった。

 馬車での移動の途中ではあるけれど、浄化の魔法があるため、身体は清潔に保つことができる。とはいえ、やはり、お風呂の方が気持ちは良いのだけれど。浄化の魔法は旅人や商人、冒険者などの間でも重宝されている便利な魔法だ。

 準備が終わるころになると、メルも起きてきたので、僕たちは揃って朝食を食べた。




 僕たちが朝食を済ませると、丁度、孤児院の中からサラさんが出てきてくれた。昨日と同じような修道服に身を包んでいる。


「サラ」


 サラさんの姿を確認すると、メルは走っていってサラさんに抱き着いた。


「もう。メル、あんまり心配させないでね」


「ごめんなさい」


「いいのよ。あなたが無事で本当に良かった」


 サラさんはメルのことを強く抱きしめた。


「ありがとうございます。ルグリオ様」


「いえ。感謝されることではありません」


 僕はサラさんが顔を上げるのを待ってから先を続けた。


「出てきてくださらなくても、こちらから向かうつもりでしたが」


 結局孤児院に入るのだから、余計な手間はかけさせたくないと思っていたのだけれど。そう思って声を掛けたのだけれど、しかしサラさんはそうは思わなかったようだ。


「とんでもありません。私の方から、お迎えにあがるのは当然です」


 僕はサラさんに、ルーナのことを紹介した。


「こちらが、ルーナ・リヴァーニャ姫。僕のお嫁さんです」


「ルーナ・リヴァーニャです」


 ルーナは丁寧な所作でお辞儀をした。サラさんは、ルーナの美貌に言葉を失っていたようだったが、すぐに、我に返ると、慌てた様子で頭を下げた。


「こ、これは丁寧にありがとうございます。お初にお目にかかります、サラ・ミルランと申します」


 立ち話もなんですからと提案すると、孤児院の中に案内された。僕は馬車の中ででも、と続けるつもりだったのだが、遠慮されてしまった。僕は、馬車の護衛を騎士の人たちに任せて、サラさんと、手を引かれたメルに先導されて、ルーナと一緒に孤児院の中へと入っていった。



 子供たちは今朝食をとっているそうで、昨日と同じ部屋に通されたのだけれど、他の子供たちはおらず、僕たち4人だけだった。


「ルーナ、どうかしたの?」


 ルーナが、じっとサラさんを見つめているような気がしたので、声を掛けた。


「いえ。何でもありません」


 そう言うと、ルーナは僕の服の袖をぎゅっと摘んできた。僕はサラさんは顔を見合わせると、ルーナのサラサラの銀髪を優しく撫でた。


「心配しなくても大丈夫だよ」


「わ、私は何も申しておりません」


 ルーナはびくっとしたようだったが、慌てて手を放してしまった。僕としてはずっと握っていてくれても構わなかったのだけれど。メルは何か気づいた様子で、じっと僕たちを見つめていた。



 僕たちが話をしていると、扉が開かれて、子供たちが入ってきた。


「サラ。こんなところにいたのか」


 カイが一番最初に僕たちの元まで辿り着き、サラさんに話しかける。


「カイ。サラは今大事な話をしているんだから邪魔をしてはいけないよ。メル、大丈夫だったかい?」


 レシルがやんわりとカイを窘め、メルに声を掛ける。


「うっ。ご、ごめんなさい」


「私は大丈夫」


 サラさんはカイの頭をなでながら、大丈夫よ、と言った。


「今はちょっと相手をしてあげられないから、皆と遊んでいてね。レシル、頼んでいいかしら」


「任せて」


 そう言って、レシルは皆を引っ張っていく。


「ほら。邪魔にならないように向こうで遊んでいよう。今日は何して遊びたいかな」


「缶蹴り」「……ご本を読んで」「そんなのつまらないわよ。せっかくこの前魔法のことが書いてある本を貸してもらったのに」「メアリスは昨日も同じこと言ってたよ」「じゃあねーえっとねー」


 子供たちは姦しく、部屋の外へ出ていった。


「すみません。ルグリオ様」


「気になさらないでください。ルーナ」


 ルーナは、声を掛けられて、びっくりした様子だったが、不安げな表情で僕を見上げる。


「ルーナも皆と遊んできていいんだよ。前にも言ったことがあったかもしれないけど……いや、口には出していなかったか。僕は前から、ルーナには同年代くらいの友達ができるといいな、と思っていたんだ。学校に行く前にも、あの子達と仲良くなっておけるんじゃないかな」


 僕は、ルーナの顔を正面から見つめた。


「大丈夫。ルーナが心配しているようなことは起こらないよ。僕はいつでも、ルーナのことが一番大好きだからね」


 僕はルーナのおでこにキスをした。


「……はい。では、行ってまいります」


 ルーナは頬を染めて、ゆっくりと部屋から出ていった。

 大丈夫、きっとルーナなら皆と仲良くなれる。

 僕はそう確信して一人頷くと、サラさんと話し始めた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ