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5年生対抗戦開始

 対抗戦自体はそれぞれの会場で行われるのですけれど、それより前にも各校の代表者が一堂に会する場面があります。


「準備はいいですか、皆さん」


 4つの学校、イエザリア学園、ルーラル魔術学校、サイリア特殊能力研究院、そして私たちが学んでいるエクストリア学院から程よい距離にある講堂へと足を運び、先生方がいらっしゃるまで待機します。

 各校から選抜された20名の選手が緊張した面持ちで静かに一列に並んでいます。

 前回のように諍いが起こるわけではありませんでしたけれど、しかし、それでいながら私たちに視線が集まるのを感じます。

 普段感じられるような視線とは違い、もちろんそれもありましたけれど、好意的、と解釈するにはいささか鋭すぎるものでした。


「準備も何も、ここで頑張る必要があるのは寮長だけでしょう」


 ローマナがまるで視線など意にも介さず、他人事のように伸びをしています。一応、形式的なものとはいえ、くじ引きだけではなく開会式も行われるのですけれど。

 この会場の様子も対抗戦の本戦と同じように各校へと届けられています。それならばこの場所で試合自体も行えば良いのではと思われるかもしれませんが、そういうものなのだと言われれば納得するよりほかにありません。

 

「初めて来たけど、案外広いんだね」


 リアが講堂を見回して声を上げたものですから、反響して、建物内に広がります。

 各校の視線が集まる中、さすがに声を大にして注目されることは避けようとしたシュロスが頭を抱えています。すでに手遅れ、いえ、そもそも注目されないようにすることなど不可能だったのかもしれませんけれど。


「リア、少し声を押さえて」


 ロッテが注意すると、リアが大げさかなとも思える仕草で口を両手で押さえたので、周りからは隠し切れない小さな笑い声が漏れ聞こえてきました。

 私たち、というよりも私自身は注目されていると認識しても気にしたことなどありませんけれど、下級生には少し大変なものかもしれません。もっとも、今回の1年生の代表者はレーシーさんですから、特に気にされることもないとは思いますけれど。


「問題ありませんよ、ルーナ」


 一応、私が確認しようとすると、ハーツィースさんが、周りの視線を気にしていない、それどころかそんなものないかのような超然とした態度で堂々としていらっしゃいました。


「ここにいるのは私たちを捕えようという意思を持つわけではない人間です。私たちが気にすることはありません」


 考えを読んだかのような返答に多少驚きはしましたけれど、特に顔に出すこともなく、カロリアンさんへと声をかけました。


「心配してくださってありがとうございます。けれど、私ならば大丈夫です」


 緊張など微塵も感じさせない、ということもありませんでしたけれど、程よい緊張感に包まれている声でそのようにおっしゃられて、無理をしているようにも感じられませんでしたから、一声かけるだけに留めて、再び列の先頭へと戻りました。


「お待たせいたしました、皆さん」


 しばらくして先生方が入って来られて、挨拶と、試合における諸注意がなされた後、いよいよ開会式の目玉、そのために集まっていると言っても過言ではないでしょう、くじ引きへと移っていきます。

 今回は前回のような野次が飛ぶようなこともなく、スムーズに進んでいきました。


「各校の代表者の方は一名ずつ前へと進み出てください」


 私は後ろを振り返ります。


「それでは行ってきますね」


「頼んだからね」


「別に気にしたりはしないけどね」


 私が一歩進み出ると、講堂内にざわめきが起こり、再び視線が集まるのを感じました。


「オホン」


 リリス先生ではない、他校の先生だとは思いますけれど、男性の教師と思われる方が咳払いを一つされると、辺りが適度に静まり返り、私たち、各校の代表者4名の足音だけが響きます。


「魔法、その他、使用してはいませんよね?」


 殆どの人が気にしないとはいえ、くじの入った箱の中を覗き見るだとか、そういった不正もないとは言い切れません。その程度と思われるかもしれませんけれど、自校で対戦できるというのは、大きなメリットの一つにはなります。もっとも、ここに集まっている選手に聞けば、それがどうしたと答えられることでしょうけれど。


「結構です。では順番にどうぞ」


 私たちの返事を待って、先生に促され、私たちはそれとなく譲り合いながらくじを引きます。

 くじの結果が前方に大きく掲示され、各校からどよめきが起こります。


「この後、昼食を挟んでさっそく第一戦が行われます。怪我や事故に注意してこれまでの成果を存分に発揮してください。ここにいる皆さんは各校の代表者、いわば、その世代の代表でもあります。気負う必要はありませんが、自分たちが代表者なのだという自覚を持って対戦に臨んでください」


 リリス先生がそのようにおっしゃられると、各校の選手からは、示し合わせたのではないかというほどきれいに揃った返事がなされました。

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