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5年生学内選抜戦 2

 開始の合図とともに、皆が女子寮の陣地を飛び出して行ってしまったので、後方、校章の前には、私とロッテ、それに4年生のアクセリナさんが残りました。

 アクセリナさんは、左右に二つ結んだ長い薄青の髪を揺らして私たちの方へ振り返ると、勝気な赤黒い瞳で校章を不敵に見つめています。


「アクセリナさんも敵陣の方へ攻めに行かれたかったですか?」


 活発な印象を受けるアクセリナさんは、自身に話しかけられているのだと理解されると、とんでもないですと笑顔を浮かべられました。


「私は3年生の時に向こうへ行ったので、今回は交代しようってシャノン達とは話していたんです」


 4年生の代表者は、3年生のときと変わらず、シャノンさん、キサさん、アクセリナさん、それから今はおそらく中間地点ほどで防衛線の一員を担っているレヴィさんです。

 

「先輩方もいらっしゃいますし、レヴィもいることですからしばらくは安心できるでしょうか」


 運動能力に秀でて、機動力を生かした策敵を買って出てくださったレヴィさんと、リアが飛び回ってくれているはずなので、まだ接触はないようで音も聞こえて来ておらず、光も見えませんけれど、しばらくはここも無事でしょう。

 そう思っていた直後、やはり中間地点ほどの距離から衝突音が聞こえてきました。

 衝撃に驚いたらしい鳥たちが慌てたように飛び去って行くような音が聞こえました。


「接触したみたいね」


 ロッテが目を細め、顔つきを少し険しくしたので、私も結界及び障壁の認識を強めます。

 

「ロッテ先輩、私たち、ここにいる意味ってあるんでしょうか?」


 話しかけられたロッテは、当たり前じゃない、と指を立てて、小さい子供に言い聞かせるように話し始めました。


「いい、アクセリナ。ここには何があるのか分かってるかしら」


「何って、校章ですよね?」


 間髪入れずにアクセリナさんが答えます。


「でも、その校章を守られているのはルーナ寮長ですよ。私たちも索敵に出た方が良いんじゃないですか?」


 私のことを信頼してくださるのはとても嬉しいことなのですけれど、流石に一人では不測の事態に対応が遅れることもあるでしょうから危険ではないでしょうか。

 ここで戦闘が始まれば気付いた皆がすぐに戻ってきてくれるだろうとは思っていますけれど、万が一ということもありますし。

 もちろん、私としても簡単に突破されるつもりはありませんし、皆が戻ってきてくれるまでは耐えきるつもりですけれど。

 しかし、首を横に振ったロッテの意見は少し違うようでした。


「ルーナが守っている校章に触れられる人なんてそんなにいるはずないじゃない。そんなの心配しても無意味よ」


「ロッテ、それにもしかして他の皆もでしょうか。私のことを過信しているのではないでしょうか」


 私だって、いつでも、何にでも対処できる訳ではないのですよ。

 そんな私の言葉を無視してロッテは続けます。


「いい、私たちの役目は、校章を守るルーナを守ることよ」


 いきなりそんなことを聞かされても、アクセリナさんも驚くだけだと思うのですけれど。前回まではそんなこと言われてもいなかったのでしょうし。


「そうですね……。言われてみれば確かに。分かりました」


 やっぱりそんなこと言われても困りますよね。


「あれ、もしかして今、分かりましたとおっしゃいましたか?」


 私の聞き間違いでしょうか?


「賊が狙うのはお城の宝だけじゃなくて、美しいお姫様も、と相場が決まっていますものね」


 もしかして、賊というのは男子寮生のことでしょうか。確かに、物語を読んでいてもお姫様というのは攫われるのが役目なのではと思わされるところもありますけれど。


「少なくともうちの学院の男子は割と紳士が多いみたいだけど……中には例外もいるからね。あなたも気をつけなさい」


 気をつけます、とアクセリナさんが返事をしたところで、地面が大きく揺れました。どうやら、上から落ちてこられた方の衝撃のようです。


「囚われの、姫を迎えに俺参上!」


 大きな声で挨拶されて、腕を右へと突き出されたその方は、今は敵同士であるはずの私たちを目の前にして随分とその姿勢を維持されました。


「もう少し静かに来なさいよね、うちの後輩が怖がっているじゃない」


 大柄な男性と、その派手な登場に、アクセリナさんは少し引き気味で、庇うようにロッテが前に一歩進み出ます。


「お疲れ様です、モノークさん」


 同じ組の茶髪の男子生徒、モノーク・ヘンリーさんに、私はとりあえず頭を下げます。


「こちらへはお一人で来られたのですか」


「いや、もうすぐ、もう一人は来るはずだけど……」


 そうおっしゃられた直後に、私たちの前から風が押し寄せてきたようで、地面の小石や葉っぱが飛ばされます。


「お待たせしました」


「遅いぞ、シキ」


 私たちに頭を下げられたシキさんに、モノークさんが声をかけられます。


「寮長が自らお出でですか」


 本来ならば、私がお相手を務たほうが良いのではないかと思うのですけれど。


「二人とも、ここまで来てもらって残念だけど、うちのルーナとやりたければ私たちを倒してからにしなさい」


 ロッテと、お二人の後方から挟み込むようにリアが姿を現します。


「お姫様は簡単には獲れはしないのよ」


 私とアクセリナさんは、二人に任せて校章の守りを固めました。

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