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選抜戦の代表者たち

 選抜戦の人選に関しては、もちろん、生徒が勝手にという言い方はおかしなことですけれど、寮ごとに分れて行っているこの形式での代表者の選出に先生方が関与されることはほとんどありません。審判を買って出てくださる程度です。

 先生方の意向としては、当然勝利を目指して欲しいのでしょうから、もちろん、私たちの誰もがそれを目指しているのですけれど、やはり、男子寮、女子寮が一つの代表としてまとまって出るというのが勝算が高くなるというのは正論ではあるのでしょう。


「でもそれじゃつまらないものね」


「ええ。勝ち取ってこそ意味があるのだもの」


 皆すっかり毒されていて、セレン様のご意向に沿うという側面もあるのでしょうけれど、今も寮に残っている人で集まってあれやこれやと楽しく雑談をかわしているところです。



 話を戻して女子寮の人選の話ですけれど、在校生は特に事情がない限り成績順に、新入生においては入学式の前日に行われたクラス分けの試験の結果から選ぶのが通例のようでした。

 その方が皆の士気も上がるから、と言われ、お花摘みに伴う戦闘の報告も考慮しつつ、その時々で、寮にいる5年生で意見を出し合って決定します。


「普通なら、入試、クラス分けの試験の成績で選んで構わないのよね?」


 5年生での代表に決まっているロマーナが、濃い紫の髪の毛を耳にかけながら鞄を開きます。


「一応、先生に渡された……貸していただいた成績の順位だけの表は持っているけれど」


 通常、長期休暇前等に行われる試験の結果は貼りだされ、闘争心を煽る効果もありますけれど、誰もが閲覧、もしくは知ることが出来ます。

 しかし、入試の結果はなぜか公開されるようなことはなく、個々人にそれぞれ通達されます。

 不思議ではありますけれど、そういうものであればそういうものだと納得するよりほかありません。


「本当なら、実技試験の様子も見たかったところよね」


 同じく代表のロッテが残念そうにため息を漏らします。それにあわせて、くすんだ赤髪が揺れ、肩が下がります。


「普通は私たち、一般生徒には公開されないですものね」


 残念そうな口ぶりでありながらも、優雅に紅茶を口に運んでいるのはシュロス。ヴァーミスト伯爵家のご令嬢で、成績は前回までのアーシャ、シェリルと本当に僅差で敗れはしていましたけれど、いつも自信に満ちた顔をしていて、それに見合うだけの実力があります。


「ルーナは何か聞いてるかしら?」


 そして、少なくとも学院にいる間は、伯爵家の人間であろうとも、それを鼻にかけたりはしない、私にも普通に接してくれる、さっぱりした性格の持ち主です。


「いえ。メルがメアリスに、妹のような子なのですけれど、聞いていたようではありましたけれど、どうやら、一番にはなれなかったようで」


 それでもメアリスが1組だったことを、メルは自分の事のように嬉しそうに話していました。きっと、特訓の成果なのでしょう。


「それは残念だったね……。あっ、でも、ルーナの知り合いがいるのなら、その子に聞けば、誰が一番印象に残ってたのか聞き出せるんじゃないの?」


 ぱちんと指を鳴らして、リアが立ち上がります。明るく長い茶髪がはねたかと思うと、椅子を引く音がして、立ち上がって、今にも出ていきそうです。


「ちょっと待ちなさい、リア」


 シュロスの制止を聞かずにすぐに離れて行ってしまったリアを、シュロスが後ろから追いかけていきます。


「あの二人、外見の情報も持たずにどうやって探すつもりかしら?」


「聞いて回るんじゃないの?」


 サンティアナとラヴィーニャがやれやれというように肩をすくめています。


「決まってないのは1年生だけだし、別にいいか」


 シュロスも切り替えられたようで、戻ってきて再び腰を降ろします。


「今は森の方へ、今日はお城だったかもしれませんけれど、向かわれているハーツィースさんはきっと引き受けてくださるでしょうし、今出ているアーシャとシェリルが無事に戻って来られれば、5年生は大丈夫そうですね」


 私がそう言うと、そうね、と同意の声が上がります。日程はご存知でしょうし、おそらく大丈夫でしょう。


「そう言えば、ユニコーンの子が入学してくるって聞いてたけど?」


「そう言えばそうでしたね」


 子、と言っても本当はハーツィースさんと同じように、私たちよりもずっと年上でいらっしゃるのかもしれませんけれど。


「おーい」


 そんな話をしていると、リアが手を振りながら帰ってきました。


「この子だったみたいだよ」


 予想通り、というわけでもありませんけれど、連れてこられたのはレーシーさんで、ほんの少し、私たちを警戒している様子でした。ハーツィースさんがいてくださればよかったのですけれど、いない方を頼っていても仕方ありません。


「ご存知とは思いますけれど。ルーナ・リヴァーニャです」


「その節はどうも。ユニコーンのレーシーです」


 警戒を解いてもらうために、私たちは順に自己紹介をして、それから、対抗戦の事をお話ししました。


「そういう訳で、引き受けてはいただけないでしょうか?」


「それは、ハーツィース様もお出になるのですよね?」


 少し考え込むような素振りを見せられた後、わかりましたと承諾してくださいました。


「人間の文化を学ぶという名目で来ている以上、そのような催しには参加した方が良いとの結論に達しました」


「ありがとうございます。ではよろしくお願いいたしますね」


 そのようにして、思いのほか順調に人選を終えることが出来ました。

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