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婚約者は9歳のお姫様!?  作者: 白髪銀髪
少女誘拐編
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首謀者は

 ペルジュを退けた僕がルーナを抱きしめている間に、姉様はペルジュに踏みつけられていた女の子たちの介抱をしていた。僕たちも、自分たちの目的を思い出し、顔を赤くして離れた後、介抱に向かった。


「もう大丈夫ですよ」


ルーナと姉様が、女の子達に治癒の魔法を施す。僕も、フェリスさんたちと手分けをして、女の子達をログハウスの中まで運んだ。


「この子たちのことを頼みます」


「お任せください」


 魔法では、治癒は出来ても体力の回復までは出来ないので、治癒の終わった子供たちから順番に休ませてもらっている。幸いなことに、ログハウスの中にはお風呂もあるし、姉様が家出のために持って来ていた食料や衣服もたくさんあったので、衣食住に関する心配は今のところ必要ではなかった。

 僕たちがペルジュの馬車を調べる間、子供たちのことはフェリスさんたちに任せることにした。子供の介抱などに関していえば、僕たちなど足元にも及ばないだろう。だから安心して任せられる。


「やっぱり、家出の準備を進めていたのは正解だったみたいね」


姉様がつぶやいていたが、結果論なのは明らかだったし、完全に偶然なのだけれど、助かっていることは事実だったので何も言わないでおいた。


「……でも、あの男から何も聞かずに殺してしまったのは、失敗だったみたいね」


「……そうみたいだね」


 姉様が真剣な顔でつぶやくので、僕も同意する。

 馬車の中から女の子を救出する際に、コーストリナ王国及び、周辺国における就学前後の年齢層の子供たちのリストが見つかったためだ。

 奴隷商人が独自にこのリストを作成できるとは考えられにくい。奴隷商人という性質上、表立って行動することはしないだろうし、できないはずだ。このリストを手に入れるためには、少なくとも協力者の存在が不可欠。しかし、奴隷商人が定期的に協力してもらうことなどあるのだろうか?

 おそらくは、この依頼に関してのみのことで、協力者の目的は、今、この時期、つまり、来期からの入学者辺りに狙いを定めていると推測できる。とすると、学院の関係者だろうか、それとも、学院関係者を通じて手に入れた者がいるのか。


「いずれにしても、リリス女史に聞いてみる必要がありそうね」


 姉様が、少し気の乗らない感じがする声でつぶやいた。おそらくは。


「それは、もう城に戻るということでいいのかな、姉様」


「……仕方ないでしょうね。私の個人的な事情で他人に迷惑はかけられないもの」


「……僕とルーナなら良いって言っているように聞こえたんだけど」


「いいのよ。家族ですもの。ルグリオもルーナも、私にならいくらでも迷惑をかけていいのよ。いつでも味方ですからね」


 姉様は僕とルーナを抱きしめた。


「これでルーナも学院に通えそうだね」


「はい、ルグリオ様」


 まだ、完全に問題が解決できたわけではないけれど、今回のことで、ルーナが学院に通うまでには間に合いそうだ。僕たちはそう言って、笑い合った。




 後片付けをして、報告のために城へと転移した僕たちが、玉座の前で待っていると、執務中だったらしい父様と母様が、静かに扉を開けて入ってきた。玉座に座ると、母様は僕とルーナと姉様以外の人たちを皆、部屋から出してしまった。


「毎回言っているけれど、書置きくらいは残していきなさい」


「すみません、お母様。次回からは気を付けます」


 勝手に逃げ出すなと言われない辺りが、姉様の普段の行動を物語っている。


「私たちも心配するのですからね。今回はルグリオとルーナちゃんまで巻き込んで」


「申し訳ありません、お母様」


 姉様はまったく悪びれる様子もなく、言ってのける。


「まったく、誰に似たのやら……。とにかく、メモは残していきなさい。もう、それしか言うことはありません」


 どうせ言っても無駄だろう、などとはと口に出したりはしていないけれど、そんな意味合いが含まれているような言葉で母様は、それで終わりとばかりに深く座りなおした。


「……では、報告を聞かせてもらえるかな」


 父様は咳払いを一つしてから、僕たちに報告を促した。



 僕たちの報告を聞き終えると、父様は何事か考えたように、姉様に尋ねられた。


「それで、何か考えがあるのだろう?」


「はい。確証は得られていませんが、大よその見当はついております」


 姉様は一瞬、僕とルーナの方に顔を向けてような気がした。すごいな、姉様は。あれだけの情報で分かるものなのか。


「ならば、任せよう。……どうせ、私がいくら心配だと言っても聞かぬのであろう」


「そうですね」


「……お父さんは心配だよ。可愛い娘のセレンと、息子の可愛い花嫁に危険なことをさせてしまうのは」


 相変わらず、息子のことをないがしろにしている風の父様だった。


「ルグリオだけならば、谷に突き落とす気持ちで任せられるのだが」


 父様は僕の方を見て言った。


「ルグリオ。わかっているな」


 父様の言いたいことはわかっている。


「もちろんです、父様。ルーナと姉様を危険な目には合わせません」


「ならばよし。時間もそれほど残されてはいないぞ」


 ルーナが学院に通うまでは、あとわずかしかない。それまでには必ず、解決してみせる。


「お任せください」


 ルーナの学院生活は必ず保障してみせる。



 僕はルーナと姉様と一緒に部屋に戻って来ていた。


「姉様、見当はついているって言っていたけれど」


 父様には啖呵を切ったけれど、今のところ、僕には見当がつかない。まずは、姉様に確認しなければならない。


「ええ。おそらく、糸を引いていたのはニルヴィアナ姫よ。コーストリナ側の協力者はハウムクーゼン卿といったところかしら」


「ニルヴィアナ姫だって……? 一体なぜ……?」


 僕は驚いて目を見開いた。

 一国の皇女がこのような暴挙に出るのだろうか。僕はルーナと顔を見合わせた。


「僕には心当たりはないけれど」


「私は、一度お顔を拝見しただけなので」


 僕は、ルーナは一度しか顔を見ていない相手のことをよく覚えているな、と感心したが、もちろん一度見ただけの相手のことが分かるはずもなかった。


「それは、あなたが……いえ、言ってもしょうがないわね。とにかく、この件に関してはあなたとルーナがいなくては解決できないわ。すぐに、エストラーゼ帝国へ向けて出発しましょう。念のため、ハウムクーゼン卿に確認をとった後でね」


 姉様がハウムクーゼン卿のところへ向かったので、僕たちも後に付いて行った。

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