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婚約者は9歳のお姫様!?  作者: 白髪銀髪
少女誘拐編
23/314

セレンの思い~私の弟は伊達じゃないのよ~

申し訳ありませんが、人称がセレンの一人称になっています。

「そう。なら、任せたわよ」


「うん。姉様はルーナのことをよろしく頼むよ」


 その場をルグリオに任せて、私は、何て言ったかな、そうそう、確かペルジュとか言っていた男に背を向ける。


「ルーナ、それにあなた達も下がっていましょう。私たちが邪魔になってはいけないわ」


 手を広げて、皆を押し戻すような格好でルグリオから遠ざかる。小さいころから、しっかりしてはいたけれど、婚約者が、ルーナが来てからはどこか以前よりも成長しているようにみえる。

 漠然と王位を継いでいくのではなく、国民のため、そして何よりもルーナのために、一層頑張っているようだ。可愛い弟の成長は、離れていく寂しさ以上に嬉しさがある。弟離れできていないのは、もしかしたら私の方なのかもしれない。

 私たちが離れたことのある期間は、私が学院に入った年と、ルグリオが学院を卒業する年の2年だけ。もちろん、生まれたのは私の方が1年早いのだから、生まれてから1年は一緒ではなかったのは当たり前、でも、そんなときのことは覚えていないし。

 それ以外ではほとんど、長期では、城から出ない私たちは、いつも一緒にいる。いずれは、私も嫁いでいくのかもしれないし、その時はそれほど遠くはないかもしれない。できれば、結婚なんてせずに、世界を巡っていたいのだけれど、そうも言ってはいられないときがくるだろう。

 もっとも、お父様は説き伏せられるかもしれないけれど、お母様を振り切るのは無理だろう。なんだかんだと言いくるめられ、結婚させられてしまうのだろう。本気で嫌がれば違うのかもしれないけれど、そこまでではない、と思う。だからと言って、お母様に従うつもりもサラサラないのだけれど。結婚相手くらいは私が自由に決めたい、と思ってもいいはず。王族の義務というのなら、ルグリオが立派に果たしてくれるでしょう。

 ルグリオ以上の男子なんてこの世のどこにいるのか分からないけれど。

 そして、今、不安そうに私を見上げるルーナも、可愛い義妹だ。

 まだ10歳、こちらに来た頃はまだ9歳だったというのに、少なくとも表面上は寂しさも見せずに、一生懸命、ルグリオと肩を並べるように、精を出している様子だった。ルグリオを慕っている姿は、見ていて微笑ましいし、二人が幸せになってくれることが私の望みでもある。そのためには、私も労力を惜しまないし、労力とも思っていない。

 ルーナが学院に行くことは、私にも寂しさはあったけれど、ルーナはきっと強く、優しく、そして可憐に成長するだろう。そう思うと胸もいっぱいになって、ルーナの学院生活と成長していくルーナの姿に、私も心を躍らせていた。

 だからこそ、アースヘルムやコーストリナで起こっている事件には強い憤りを感じていたし、収穫祭でつけられた時には、チャンスだとも思った。残念ながら、あの時は事件とは直接関係がなく、主犯を捕まえることは出来なかったけれど、今、こうして目の前にその主犯がいる。子供たちを、私達国民の、さらに言うならヒトの宝を食い物にする男が。

 はっきり言って、こういった人間の考えは理解に苦しむ。

 見たところ、生きていくのに困って、犯罪に手を染めたようではない。そんな人間は、こんなにぶくぶくとはしていない。

 それだけしか、生きていく手段が見つけられないようにも思えない。それなのになぜ、おそらくは自分の欲望、悦楽のためだけに、他人のものを奪っていくのか。倫理、節度、常識などといったものがなく、他人の感情を慮ることもできない。学院では何を習ってきたのだろう。それとも、ボイコットしていたのか。それ以前の問題だとも思うけれど、人として。おそらく、わかり合うことはできないでだろう。そんなつもりもないけれど。

 無論、学院を途中で抜ける人がいないわけではない。わずかではあるけれど、自分のやりたいことを見つけて、学院を抜けて、そのことに向かって邁進している人たちもいる。しかし、この男が学院をやめたのだとして、やりたいことが奴隷商というのでは、あまりに救えない。いや、商売をしているのは、あのセラブレイトとか名乗った男で、この男は何もしていないのかもしれないけれど。

 こういった人間に限って、魔力が強いというのも問題かもしれない。もっと人のため、ひいては世界のために貢献できることがあると思うのだけれど。そんな押し付けは良くないのだろうけれど、力のある者の傲慢と言ってしまえばそれまでだろうし。

 本当は、私がとっちめて、本音を言えばこの世から消してやりたいところだけれど、どうやら、ルグリオの方が私よりももっと怒っていたらしい。自分のお嫁さんのことだものね。

 だから、この場は譲ってあげることにした。だって、お姫様を守るのは王子様の役目だって決まっているもの。お姉ちゃんが出しゃばる場面じゃない。

 だから、私のことを不安そうに見上げるルーナに、私ははっきりと告げるのだ。


「大丈夫よ、ルーナ。ルグリオは、私の弟は、そしてあなたの旦那さんは伊達じゃないのよ」


 私は笑って、ルーナを抱きしめた。

 こんなに小さくて暖かい子供たちを、希望を、奪わせることはできない。それは私が王族でも、そうでなくても、力があっても、なくても同じこと。そして、家族の幸せを願うことは、誰しもに与えられる権利でもある。だからこそ。


「しっかりやりなさい、ルグリオ。あなたの大切な人達のために」


 私の手で良いのなら、いくらでも貸してあげるから。ルーナのぎゅっと握られた手も、きっと私と同じ気持ちだからだろう。そう思うと、やっぱり心が温かくなって、自然と口元が綻んだ。





あれ、これ姉様ヒロインじゃね。と思われる方もいるかもしれません(いないか)。

そんなことはないです。ヒロインはルーナで、セレンは姉様です。

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