くじ引きの結果
申し訳ないのですが、色々と事情があり、短いものとなっています。
「ルーナ。最初に言った通り、僕は手を抜かないからね」
「もちろんです、ルグリオ様」
不正はありませんでした。
いえ、セレン様が用意されたくじを引くだけなので、不正も何もありえないのですけれど。
くじ引きの結果、組み合わせは、セレン様、ルグリオ様、リリー先輩、キャシー先輩、キサさん、カロリアンさんのチームと、ソフィー先輩、アイネ先輩、イングリッド先輩、シエスタ先輩、エリィさん、そして私という具合になりました。
結局、カロリアンさんも混ざっていますけれど、特に問題はないようでした。
「さて、それじゃあ私たち……は帰るけれど、あなた達はどうするのかしら?」
セレン様が取り出された紙を拡大され、そこに大きく組み分け結果を表示させられ、競技場入り口付近に飾られました。
「こんなものかしらね」
夜の間中、もっと言えば明日の対戦の間中もずっと飾っておくには心もとないと思ったのですけれど、その辺りに抜かりはなく、セレン様が保存、保護の魔法をかけられると、対戦の組み分けが書かれた紙は、風にすら靡かずに、板にでも張られたように掲げられたまま固定されたようでした。
「セレン様とルグリオ様はお帰りになられるのですか? ……大丈夫なのでしょうか?」
ソフィー先輩からあげられた心配する声も当然のことだと言えるでしょう。
日はすっかり落ちて、多少の残光はあれど、とても馬車が進めるような暗さではなく、たとえ進めたとしても到着がいつになるのかはわからないでしょう。暗闇ゆえの危険も考えられます。
私はルグリオ様とセレン様が転移の魔法で行き来されていらっしゃると知ってはいますけれど、さすがにセレン様もそのようなことまでは話したりはされていらっしゃらないでしょう。むしろ、突然現れたり、消えたりされて、驚かれるのを楽しんでいらっしゃることでしょうとも思えます。
「私たちは先輩のところ、組合に泊まる予定っす……ですけど、セレン様とルグリオ様もいかがっす、ですか」
伺ったところによると、今晩、先輩方は、お宅には戻られずに、組合で合宿なるものをなさるそうです。
日を跨いで実習に行くときと同じようなことでしょうか。
「いやいや、ルーナ。まあ、似たようなもんなんだけど、もっと楽しい、あれやこれやがあるのさ。夜中過ぎまで皆でわいわいするのは、それはそれは楽しいことなのさ」
私が疑問に思っていると、アイネ先輩が教えてくださいました。
たしかに、実習に行くとき、特に討伐の場合には、いつでも対応できるように、常に周りを警戒していますから、そういったものがない分だけ、楽なのかもしれません。
「私たちのことなら心配いらないわ。まあ、私は残ってもいいけれど……」
セレン様がちらりとルグリオ様を見られ、皆様の視線がルグリオ様へと向けられます。
「いや、僕は遠慮させてもらうよ。ルーナ以外の女性のところへルーナの許可なく泊まるわけにはいかないからね」
今度は私へと視線が集まるのを感じました。
「……私の許可など必要ございません。外泊でも何でも、お好きになさってください」
そう答えると、笑顔で答えたのにも関わらず、なぜだか苦笑じみた雰囲気が広がりました。ここで横を向くと、さらに何か言われてしまいそうだっため、顔はルグリオ様から逸らしたりはしませんでしたけれど。
「そういうわけだから、僕はこれで失礼するよ。それじゃあ、また明日。おやすみ、ルーナ」
最後に私の頬に軽くキスされると、ルグリオ様は道の向こうへと歩いて行かれました。
「では、セレン様はどうなさいますか?」
ルグリオ様が先に行かれたのはセレン様は残ると思われての事だったのでしょうけれど。セレン様はしばし考え込むような素振りを見せられた後、首を横へ振られました。
「私も戻るわ。その方が色々と楽そうだし」
「そうですか。では、また明日、ルグリオ様のことも共々、お待ちしておりますね」
頭を下げられたソフィー様に続いて、皆様、同じように礼をとられたので、私もセレン様へと頭を下げました。
「それじゃあ、皆、お休み」
ルグリオ様の後を追われるように、セレン様も競技場の外へと向かわれました。もちろん、去り際には私の、ルグリオ様がなさったのとは逆の頬に、キスを落としてくださいました。
「……いいなあ」
ぽつりとどなたかが呟かれ、私が振り向くと、皆様、一様に頷かれていらっしゃいました。いえ、シエスタ先輩は違いましたけれど。
「あんまり遅くなってトゥルエル様にご迷惑をかける訳にも参りませんから、私もこれで失礼させていただきます」
私は何か言われる前に素早く挨拶を済ませると、くるりと反転して、後ろから伸ばされた手はさらりとかわし、同じようにその場を後にされたシエスタ先輩やキサさん、エリィさん、カロリアンさんと一緒に寮へと戻りました。
くじの結果は乱数アプリで作りましたので、不正はありません。