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セレン、ルグリオ vs イエザリア学園 開始

「では、ルールの確認を致します。双方、もしくはどちらかが、これ以上の行動が不可能だと判断した場合、及び降参した場合のみ決着、過剰と判断される攻撃、倫理に反する行動、その他双方の常識の範囲での判断をお願いいたします」


 諦観された様子のロールス先生が、競技場中央で向き合われているセレン様、ルグリオ様と、イエザリア学園の生徒に確認をとられます。

 ルグリオ様とセレン様が当事者だからでしょうか、普段は当然理解済みのこととして特に確認されないようなことまで念押しされます。

 イエザリアの学生は数十名、おそらくは私たちとの再戦に備えてきたのでしょうから、形式までは一緒かどうか分かりませんけれど、とりあえず、対抗戦のときと同じものを想定されてきたのでしょう。

 対するセレン様とルグリオ様ですが、セレン様は、表情からは窺えませんが、とても楽しそうな雰囲気を、ルグリオ様からも、ひしひしとしたやる気が迸っていらっしゃるように感じられました。


「ええ、それで問題ないわ」


「僕も異存はありません」


 さすがに観客席から言葉が聞き取れるはずはありませんけれど、ルグリオ様、セレン様、それにイエザリアの学生も頷かれているようでした。


「私たちに勝ったのなら、そちらの望み通り、うちの子たちと再戦させてあげる。その代わり、私たちが勝ったのなら、今回のことは諦めて受け入れて、ここですっぱりと切り替えなさい」


 さらりと私たちも引き合いに出されてしまいましたけれど、どなたも気になさっている様子はありません。


「セレン様とルグリオ様が戦われるのですって?」


「ソフィー様」


 いつの間にいらっしゃったのか、組合の受付の制服のまま、薄いオレンジの髪をなびかせられたソフィー様が興奮されたご様子で私たちの横へといらっしゃいました。

 先輩方の中には、シエスタ先輩など、ソフィー様をご存知ではない方もいらっしゃいましたが、もちろん知っていらっしゃる方もたくさんおられて、客席側でもさらに歓声が上がりました。


「どうしてこちらへいらしたですか?」


「だって、セレン様とルグリオ様がいらしているのでしょう? 来ないわけにはいかないわ」


 私の、いえ、私たちの青春ですもの、とソフィー様は憧憬の視線を競技場のセレン様とルグリオ様へと向けられました。


「お待たせしましたっす、ソフィー先輩」


 両手に飲み物を持った、いかにも冒険者ですといった格好の女性が、ウェーブのかかったベージュの短髪を揺らしながら、眩しい笑顔でソフィー先輩の反対側の隣へ着席されました。


「あら、別に私は頼んでないのに」


「まあいいじゃないですか、受け取ってくださいよ」


「ありがと、リリー」


 ソフィー先輩より少し背が高いと思われるその女性は、アイネ先輩の前の寮長であらせられる、リリー先輩のようでした。

 おやっという表情をされて、こちらに気付かれたらしいリリー様はソフィー先輩に耳打ちなさっていましたが、残念ながら私たちにもその声は届いていました。


「先輩、そちらにいらっしゃるのはもしかして、ルーナ様じゃないっすか」


「ええそうよ」


 私は立ち上がるとリリー様に向かって頭を下げました。


「お初にお目にかかります、エクストリア学院4年、ルーナ・リヴァーニャです」


 リリー様はにこやかに手を振られました。


「初めましてっす。私は、痛っ、何するんすか、先輩」


 ソフィー先輩に頭をはたかれたリリー様は頬を膨らませて振り返られました。。


「初めての挨拶くらいちゃんとなさい。寮長をやって、冒険者として仲間と一緒に経験を積んで、少しはまともになったと思っていたのだけれど、まだまだのようね」


 ソフィー先輩に笑顔で睨まれて、リリー様は背筋を正されると、右手の指を二本額に当てられ、敬礼のようなポースをとられました。


「こほん、失礼しました。リリー・ウィレネウスです。以後よろしくっす」


「こちらこそよろしくお願いいたします、リリー様」


 最後にウィンクをされ、右手を差し出されたので、私たちも順番に握手をさせていただきました。


「様なんて、むずがゆくなるから、ソフィー先輩と同じように先輩でいいっすよ」


「私の方も敬称など不要です、リリー先輩」


 私たちが順番に挨拶を済ませると、ようやく、というよりも丁度試合も開始されるようです。

 競技場の様子はそのままなので、どちらかと言えば、対抗戦のルールというよりも、個人戦の拡大解釈という形で行われるようです。

 爽やかな秋晴れの空の下、ロールス先生によって高らかに開始が宣言されました。

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