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4年 vsサイリア 4

 レングス様が行動不能に陥られたのを確認してから、私はシャノンさんの下へと戻りました。


「ルーナ先輩」


 私の姿を確認したシャノンさんは安堵のため息を漏らして、満面の笑みを浮かべられました。


「お戻りになったということは、相手選手は倒されたのですね」


「ええ。私の方は問題ありません」


 シエスタ先輩のお姿が見えないので、辺りを見回しましたが、残念ながら発見することは出来ませんでした。


「その、シエスタ先輩は、相手校の、なんとおっしゃっていましたっけ」


「エニール・リフレンス様ですね」


「そうです、そのエニールさんと交戦されながら向こうの方へ」


 そこまで聞いたところで、何かが爆発するような音とともに、激しい水しぶきが上がるような音が聞こえてきました。

 慌ててそちらを振り向くと、白い煙が吹きあがっていて、やがて雨のようにこちらまでぬるくなっている水が降り注いできました。


「大丈夫でしょうか」


「おそらく、あの煙に気付かれた先輩方か、誰かが戻ってきてくださるとは思うのですが・・・・・・」


 さすがにこの状況でシャノンさん一人に任せて私まで様子を見に行くことは出来そうにありません。

 シエスタ先輩の事ですから、心配はいらないと思いたいところですが・・・・・・。




「皆、大丈夫っ」


 しばらく、というほどでもないですけれど、シエスタ先輩を待っていると、一人、こちらの包囲を抜けてこられたサイリアの選手を追って、シンシア先輩が戻られました。


「煙が昇っているのが見えたから、心配で戻ってきたんだけど、ルーナ、シャノン、あなた達は大丈夫そうね」


「はい。ですが、シエスタ先輩は相手の選手と交戦されながら離れて行ってしまわれたみたいで」


 シンシア先輩のお顔に一瞬動揺が走ったのが確認できましたが、シンシア先輩は何事もないように一度深呼吸をされました。


「ま、まあシエスタの事だから、だ、大丈夫だとは思うけれど、あんまり長引く様なら心配ね」


 シンシア先輩は私たちに背を向けて、シャノンさんが示していた、シエスタ先輩が向かったとされる方向を黙って見つめていらっしゃいました。


「シンシア先輩」


「動揺なんてしてないわよ」


 まだ何も話さないうちに、すごい勢いで反応されて、私たちの方が一歩後ずさってしまいました。


「・・・・・・とにかく、今の私たちに出来ることはシエスタを信じてここで待っていることだけよ」


「はい」


 直後、結構な勢いで私の目の前に白い影が迫ってきました。

 咄嗟のことに障壁を張ることは出来たのですけれど、勢いを殺すことまでは出来ず、そのまま私も後方へと吹き飛ばされました。


「痛っ・・・・・・っつ、シエスタ先輩っ」


 地面に尻もちをついてから腕の中確認すると、綺麗なお顔や御髪にところどころ負傷を追われたシエスタ先輩がいらっしゃいました。

 幸い、当たり前ですけれど、息はしているようで、意識もなんとか大丈夫と言えそうな状態ではありました。

 特に制限されてはいないため治癒魔法でシエスタ先輩の負傷を治すと、意識を取り戻されたらしいシエスタ先輩が、綺麗なルビーのような瞳を薄く開かれました。


「気がつかれましたか、シエスタ先輩」


「・・・・・・ルーナ様。申し訳ありません。みっともないところをお見せしてしまい」


「そのようなことはありません。それよりも、一体何が・・・・・・」


 その答えは聞くまでもなく、向こうからやってきました。

 私たちが見つめる視線の先、晴れた煙の奥からは、肩を回して首を鳴らしながらこちらへ向かって進行してくるエニール様の姿が確認できました。


「失礼。ですが、対抗戦とはいえ、手を抜くのは失礼と思い全力で当たらせて貰いました」


 エニール様も所々お召し物が破れていたり、怪我を負われていらっしゃったりと、シエスタ先輩の奮闘の後が見受けられましたが、今だ交戦能力は失っておられない様子です。


「あなたがシエスタを」


「はい。女性相手とはいえ、手を抜くことのできる相手ではなかったので」


 シンシア先輩の視線と、エニール様の視線が交錯します。


「・・・・・・そう。この代償は高くつくわよ」


「それは恐ろしい」


「・・・・・・ルーナ」


「それは容認できません、シンシア先輩」


 何か言いかけたシンシア先輩の言葉を遮ると、私はシエスタ先輩をシャノンさんに預けて、シンシア先輩の横に並び立ちます。

 シンシア先輩の実力を疑っているのではありませんが、お一人で向かわせるわけにはいきません。


「シンシア先輩。どうか、私が校章を守ることにお力を貸していただけますか。シエスタ先輩を倒すほどの相手に、シエスタ先輩がやられてしまって冷静ではない私一人では勝ち目は薄いでしょうから」


「・・・・・・はあ。ダメね、後輩に気を遣わせるなんて。そうね、私、少し熱くなり過ぎていたわ」


「何の事でしょうか。それよりも、ありがとうございます、シンシア先輩。戻ってきてくださって」


「よくできた後輩だこと」


 シンシア先輩は柔らかく微笑まれると、ありがとうと言われて、私の髪を撫でられました。


「じゃあ、いきましょうか、ルーナ」


「はい、シンシア先輩」


 私たちが前を向くと、待っていてくださったらしいエニール様が楽しそうな笑顔を浮かべられました。

 

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