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二人? のエイフィス

 本当は、失礼かもしれませんが、やはり心配する気持ちもあったので、私もいつでも助けに行けるようにと構えていたのですけれど、シャノンさんが交戦に入られたすぐ後に、ルーラル魔術学校の他の選手も、数人ではありましたが、こちらまで辿り着かれて、私もそちらへと注意を裂かなくてはならなくなりました。


「他人の心配の前に自分の役割をこなさなくてはなりませんね」


 とはいえ、相手の選手も少ないですし、それほど危機を迎えたというほどでもありません。振動も遮るように結界を構築しているため、時折シャノンさんの様子は目視で確認してはいますが、外の声も音も聞こえず、相手の試行錯誤も、私と、それからシエスタ先輩の脅威には今のところなっていません。


「シエスタ先輩。そこまでしていただかなくとも、今の状況であれば私だけでも大丈夫そうではありますけれど」


 シエスタ先輩の体調に気を遣ったわけではなく、想像以上の事態が起こることを憂慮して、シエスタ先輩にはいつでも事態に対応して交渉を守っていただけるように手すきでいていただきたかったのですけれど。


「いえ。もちろん、ルーナ様の実力を疑うなどということはありえませんが、試合の感覚に慣れておいた方が、明日の、或いはこの戦いの間にでも、今後の展開によっては良いと思いまして。それとも余計な真似でしたでしょうか」


 遠慮がちに、上目遣いでおっしゃられたシエスタ先輩に、大丈夫ですと言い切ることは出来ず、私はただ感謝だけを告げました。先輩の狙い通りならば、まんまと乗せられた形にはなりますが、一緒になって防衛することも、先輩は楽しそうにしていらっしゃいましたし、相手の選手の方には失礼ですけれど、私も楽しかったです。


「きゃあっ」


 シャノンさんが、結界もあえなく、悲鳴と共に吹き飛ばされてきて、私は衝撃を吸収するための障壁を咄嗟に構築して彼女を優しく受け止めました。


「ルーナ先輩・・・・・・」


「大丈夫ですか、私のことが見えているということは大丈夫そうですね」


「・・・・・・はい」


 すぐに立ち上がり、向かって行こうとするシャノンさんに外傷はほとんど見られませんでしたが、私は彼女の腕を掴んで引き留めました。


「ルーナ先輩」


「シャノンさん。次は私に任せていただけませんか。ずっと待っているだけというのも暇なので」


「・・・・・・すみません」


「謝られるようなことは何もありませんよ。それよりも、校章をお願いしますね」


 私は、丁度戻ってきてくれたアーシャにシャノンさんのことを預けました。


「ルーナ、私が」


「大丈夫です、アーシャ。それに、口約束ではありましたけれど、私がお相手すると約束もしましたから」


「無理はしないでね」


 アーシャにエールを送られて、私は、楽しみだというように笑みを漏らされていらっしゃるエイフィスさんの前へと進み出ました。


「ようやく戦えるな」


「消耗も少なくなさそうですが、大丈夫ですか」


 皮肉のつもりはなかったのですが、エイフィスさんは少しむっとされたようでした。


「ふーっ、ああ、いや、すまない。こちらの心配なら不要だ。いつも万全の状態で戦うことが出来るわけじゃないからな」


 そうおっしゃられて構えをとられたエイフィスさんに、私も真剣に向き合います。


「そうですか。では、本当は告げる必要もないのですが、いつでもどうぞ」


 告げた直後、私の顔へめがけて水流が放たれました。もちろん、私は自分を守るための防壁を消すことはないので、牽制程度の魔法では障壁を突破することはかなわず、鼻先で弾けて消えました。

 しかし、その隙に姿を視界から消すことは可能だったようで、気がついたときには右側面の障壁に魔法が跳ね返されるのを感じました。残念ながら、どのような魔法だったのか確認することは出来ませんでしたけれど。


「お見事、と言っておけばいいのかな」


 口笛と共に、また真正面にいるエイフィスさんの前に魔法陣が展開されていました。 


「でも、まだまだこれからだぜ」


 大きな音を立てて地面が力強く踏み抜かれたかと思うと、直後、私の下の地面が持ち上がり、土や草と一緒に空中へと放り出されました。


「なるほど。正面のものは囮ですか」


「そういうことさ」


 地面ごと持ち上げられては障壁はあまり意味を成しません。


「まだまだぁ」


 空中で、おそらくは固めた空気を足場にして方向転換されたエイフィスさんは、空気の弾をこちらへ向けて飛ばすとともに私に迫ってきました。

 私も正面に空気塊を作り出し、それを足場に後ろへ飛び下がると、着地するころには少し間を空けることが出来ました。

 

「いやはや、ここまでやっても一撃も掠らせることも出来ないとはね」


「いえ、掠っていましたよ。運動着越しに肩のあたりに衝撃を感じました」


「どうやら、いや、やはりか、魔法では分が悪いらしい」


 そうおっしゃられたエイフィスさんは、地面に手を当てると、再び地面が持ち上げられるかとも思いましたが、そうはならず、どうやら土くれが人形のような、ゴーレムに似たようなものを形づくりました。

 その人形は、エイフィスさんが構えられると、同じように私に向かって構えを取りました。


「まさか傀儡術式を使ったところで卑怯とは言わないよな」


「もちろんです」


 私は二人のエイフィスさんに視線を向けると、小さく息を吐き出しました。

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